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逮捕された後の流れについて元検事の弁護士がわかりやすく解説

 

1 逮捕後の流れを知っておく重要性

逮捕は突然やってきます

犯罪の現場で現行犯逮捕されたり、過去に犯した犯罪についてある日警察官が自宅にやってきて逮捕されたりします。

警察官が事前に「明日逮捕します」 などと予告してくることはありません

逮捕された方の家族は、 逮捕される時に一緒にいたり、 事後的に警察官や弁護士から連絡が来たりして逮捕の事実を知ります。

このように逮捕は突然やってくるので、基本的には逮捕された場合に備えて準備しておくということはできません。

ご家族が逮捕されたことを知った方は、突然のことに驚くとともにこれからどうすれば良いのかわからず悩みます。

ご家族が逮捕された時には良い弁護士に頼むことが必要ですが、 それだけでなく、ご家族も適切な対応を取るために、ご家族自身が逮捕後の流れを知っておくことも必要です

この記事では、逮捕されてから起訴不起訴の決定がなされるまでの流れを説明します


2では流れの概要を説明し、3以下でそれぞれの詳細を説明します。

逮捕された方やご家族がどうすれば良いのかについてはこちらの記事をご覧ください。

刑事事件の 全体像についてはこちらの記事をご覧ください 。

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2 逮捕後の流れの概要

刑事事件で逮捕されたら、警察官による取調べを受けた後、逮捕から48時間以内に検察庁に連れて行かれます。これを検察官送致といいます。

検察官送致されると、検察官から取調べを受けます。

検察官は、取調べを踏まえて身柄拘束が必要であると判断すれば、検察官送致から24時間以内に裁判所に勾留を請求します。

検察官が勾留を請求するまでに示談ができていたりすれば、検察官は、勾留を請求せずに釈放することもあります。

逮捕から勾留請求までの詳細はこちら

勾留請求されると、検察官送致された日のうちもしくは翌日に裁判所に連れて行かれます。

裁判所に連れていかれるのが検察官送致された日なのか翌日なのかは、地域や事案により変わります。

裁判所では、裁判官から話を聞かれます。
これを勾留質問といい、裁判官が勾留するかを判断します。

裁判官は、身柄拘束する必要があると考えれば、勾留を決定します。
示談ができていたり身元引受人を用意できていれば、勾留されないこともあります。

勾留や勾留延長に対しては、準抗告という異議申し立てをすることができます。
弁護士による異議申し立てが認められれば(準抗告認容、といいます)、身柄が釈放されたり勾留延長期間が短くなったります。

勾留請求から準抗告までの詳細はこちら

勾留されると、勾留請求の日から10日間身柄が拘束されます
また、最大で10日間勾留が延長されます。

勾留している間、検察官が捜査をし、事件を起訴するのかどうかを決めます。

公判請求する場合は、裁判が行われることになります。この場合、保釈という手続で釈放されるまで、身柄拘束が続きます

公判請求しない場合、身柄は釈放されます。

起訴はするけれども公判請求ではなく略式手続(罰金を求める手続。詳しくは5で記載します。)にする場合にも、身柄が釈放されます。

勾留から起訴不起訴の決定までの詳細はこちら

このように、検察官による勾留請求や裁判官による勾留決定がなされなければ身柄を釈放してもらうことができます。

そのために、 弁護士は検察官や裁判官に対して面会を求め、勾留する必要がないという意見を伝えます。

ただ「勾留しないでほしい」とお願いするのでは不十分で、 検察官や裁判官が勾留する必要がないと判断してもらえるような証拠収集や行動をしておくことが大切です(詳しくは3以下で記載します。)。

 

参考 面会(接見)について
ご家族が逮捕された場合、ご本人に会って状況を聞きたいと思います。
逮捕・勾留されている人と面会することを接見といいます。
接見は、テレビドラマなどで表現されているように、 穴のあいた透明な板越しに話をします。

一般の方による接見には制限があります
一般の方の接見は平日日中に限り、20分などの時間制限があります。 また、一般の方の接見においては警察官が立ち会います
事案によっては裁判官が接見禁止という決定をすることがあり、この場合、一般の方は接見することができません。

接見禁止決定は、接見によって口裏合わせをするなどして証拠隠滅する恐れがある、といった場合になされます
ご家族が事件に無関係の場合には、接見禁止決定がなされていても、弁護士が接見禁止一部解除の申し立てをすることで、ご家族が接見できるようになることがあります。
また、平日の日中であっても、ご本人が留置所にいなければ接見することはできません
警察が接見の予約をして確実に接見できるようにするということはしてくれませんが、面会に行く時に事前に警察署に連絡を入れておくと、 事実上の予約を取ってくれることがあります。

接見は接見室ですることができます。
ですが、警察署によっては接見室がひとつしかないということがあります。
接見室が埋まっている場合には、空くのを待っていなければいけません。

警察署には多数の人が留置されていることがあり、面会を希望する人が多数いて、何人もの順番を待たなくてはいけないこともありますので、接見に行く時は時間に余裕を持って行くことをお勧めします。 

なお、刑事弁護を担当している弁護人であれば、接見時間に制限はなく、 警察官の立会いもありませんので、事件について包み隠さずに話をすることができます。
弁護人は、 接見禁止決定がなされていても必ず接見することができます

 

※差し入れについて
ご家族が逮捕された方は、服などを差し入れたいと考えると思います。
逮捕・ 勾留されている方に対しては、本や服などを差し入れることができます。
また、お金も差し入れることができ、お金があれば留置所の中で買い物することができます。

ただ、本や服などは全てのものを差し入れられるわけではありません。
本は書き込み等のない新品のものであることが求められますし、 服などについては紐がついていないものであるなど、留置施設管理上の細かい規定があります。
規定に合致していないものはせっかく持って行っても差し入れることができません。
警察署によっても取り扱いが違うので、差し入れをする前に警察署に連絡して確認することをお勧めします

3 逮捕から勾留請求まで(詳細)

警察官は、逮捕後、48時間以内に検察官送致します
検察官は、 検察官送致された被疑者と会い、 事件に関する言い分を聞きます。
この言い分を聞く手続を弁解録取手続と言います。
事案によりますが、弁解録取手続は、長いと数時間に及びます。

警察官は、身柄拘束する必要があると考えたために逮捕しています。
特に、逮捕状を取得して行う通常逮捕については、逮捕状を取得するという手続を行ってまで逮捕しているので、 警察官は身柄拘束の必要性があると考えてると言います。
そのため、警察官としては、検察官に勾留を請求してもらいたいと考えながら検察官送致をします(※)。

これに対し、検察官は、必ずしも警察官の意見に拘束されず、勾留の要否を考え、必要に応じて裁判所に勾留を請求します。

ここにいう勾留の必要性とは、主に証拠隠滅のおそれ逃亡のおそれです。

証拠隠滅については、物的証拠人的証拠の2つに分けて考えることはできます。

物的証拠というのは、証拠となる物のことです。
被害者を騙すのに使ってメッセージを送った携帯電話、被害者を殴るのに使ったバットなどをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。

物的証拠の隠滅は、物を捨てたり隠したりする、という形で行われます。

これに対して、 人的証拠というのは、事件に関する情報を知っている人の話のことです。
証人として裁判所で証言することで証拠とすることもありますし、警察官や検察官に対して話をしてその内容を調書にまとめてもらうという形で証拠にすることもあります。

人的証拠の隠滅は、事件に関する情報を知っている人の話を歪めるという方法で行われます。
事件に関する情報を知っている人の代表例は、被害者、目撃者、共犯者です。
また、事件に関する情報を知らない人に嘘の話をさせて事実を歪めるということもあります。

被疑者にとって味方の人に対しては口裏合わせをすることで話を歪めることがあります。
頼んだだけでは口裏合わせに協力してくれない人に対しては、買収したり脅したりするということもあり得ます。

人的証拠は人の記憶に基づく証拠で、そもそも正確性が問題になりやすかったり、記憶が薄れてしまう危険性が高い、という特徴があります。
これに加えて被疑者の働きかけで人の話を歪められてしまうと、事案の真相を把握することが難しくなります。
そのため、特に人的証拠について証拠隠滅の恐れがあると、勾留の必要があるという判断がなされやすいです。

逃亡のおそれについては、重い犯罪であるために実刑の可能性があるときや、被疑者に家族や仕事がなくて逃亡を妨げる環境があまりない時に、特に考慮されます。
また、逮捕される前に実際に隠れたり逃走したりしていたという事情があると、逃亡のおそれがあるため勾留の必要があるという判断がなされやすくなります。

勾留請求されずに釈放される具体例

検察官がこのような理由で勾留を請求するのですから、勾留請求を避けたいと考えたら、このような検察官の心配を取り除くことが有益です。

例えば、満員電車内で見知らぬ他人の体を触ったといういわゆる痴漢事件においては、 実際に痴漢をしていても、逮捕直後の被疑者がとっさに「私は痴漢をしていません」と自分をかばう嘘を言ってしまい、 検察官送致に至るということはよくあります。
検察官の視点からすると、「このままでは被疑者が被害者に接触して脅して証拠隠滅を図る可能性がある、なので、勾留を請求した方がいい」と考える可能性があります。

このような場合、早い段階で弁護人が動き出せていれば、勾留請求を防げる可能性が高まります
実際に痴漢をしたのであれば、痴漢をしたことを認めて事実を詳細に書いた上申書を弁護士と一緒に作成し、 勾留請求前に検察官に提出します。
こうすることにより、すでに事実を認めるに至ったのだからわざわざ被害者に接触して事実を歪めたりしないだろう、と検察官に考えてもらえれば、勾留請求を避けられる可能性があります。 

また、 勾留請求までに示談の申し入れをしたり実際に示談が成立していたりすることも有益です
示談というのは被害者に許してもらうことを目的とするものです。
検察官に「このような示談を申し入れているということは、被害者に許してもらいたいのだから、被害者の感情を逆なでるようなことはしないだろう」と考えてもらうことができれば、勾留請求を避けられる可能性があります。 

送致前釈放について
稀に、警察官において身柄拘束の必要性がないと判断して検察官送致前に釈放されることがあります。

4 勾留請求から準抗告まで(詳細)

勾留請求されて裁判所に連れて行かれると、裁判官から事件についての質問を受けます
これを勾留質問と言います。
勾留質問では、氏名生年月日等の人定事項を確認した後、 容疑についての言い分を聞きます。

ですが、検察官の弁解録取手続とは異なり、勾留質問は通常、10分程度といったとても短い時間で終わります。

勾留質問を経て裁判官が勾留する必要があると考えれば、勾留決定がなされます。
勾留決定がなされると、勾留請求の日から数えて10日間身柄が拘束されます
逆に、勾留する必要がないと判断されると勾留請求が却下されます。
勾留決定や勾留請求却下決定に対しては準抗告という異議申し立てができます

準抗告をすると、勾留決定・勾留請求却下決定をした裁判官ではない別の裁判官3名が話し合い、勾留決定が正しかったのかどうかを判断します。
勾留する必要がなく、勾留決定が間違っているという判断がなされると、勾留決定が覆され、釈放されます
これを勾留決定に対する準抗告認容と言います。
逆に、勾留する必要があり、勾留請求却下決定が間違っているという判断がなされると、勾留請求却下決定が覆され、勾留されます。
これを勾留請求却下決定に対する準抗告認容と言います。

準抗告をしたとしても勾留決定や勾留請求却下決定が間違っていないと判断されると、元々の決定が維持されます。これを準抗告棄却と言います

裁判官が勾留する必要があると考える考慮要素は、3で記載した検察官における考慮要素と同じです。
ですが、検察官は、捜査機関であり、裁判にした後は弁護側と相対する一方当事者の立場であり、かつ、事案の真相を解明するべき立場にある、という特徴があります。
また、検察官は日々捜査と裁判を通して犯罪と戦い続けているので、どうしても犯罪に対して厳しくなるという傾向があります。

これに対し、裁判官は、あくまで証拠に基づいて公正な判断すべきである、という中立性が求められる立場です。

そのため、同じ事案についても、検察官における勾留の必要性の判断と裁判官における勾留の必要性の判断は、大きく異なります

検察官が勾留請求する事案についても、勾留請求される前の段階の弁護活動から、裁判官による勾留請求却下や勾留決定に対する準抗告認容を狙って行動しておくことで、釈放を勝ち取ることができることがあります。

勾留請求却下で釈放された具体例

初対面の見知らぬ女性に対するわいせつ事件で、 被害者が警察に被害申告をしました。
被害者は加害者の名前や住所などを知らなかったので、この事案は、加害者が誰なのかを調べるところから警察が捜査をしなければいけない事案でした。
この加害者が弁護士に相談したところ、放っておけば逮捕・勾留される事は間違いないので、早急な対処が必要だという判断に至りました。
この事案は、被害者の心が深く傷ついていると考えられる事案で、被害者に寄り添う立場にある警察官が逮捕しなかったり検察官が勾留を請求しなかったりすることは期待しがたい事案でした。

ですが、弁護士は、逮捕前に上申書を作成して自首すれば、逮捕と勾留請求は避け難いとしても、裁判所で勾留請求却下や勾留決定に対する準抗告認容により釈放してもらえる可能性がある、と考えました。

そこで、加害者は弁護士と相談しながら犯行の詳細を記載した上申書を作り、自分が加害者であることを示す証拠を持ち、警察に出頭しました。
また、 弁護士は警察官に対し「被害者に謝罪と賠償をしたい」ということを伝え、そのことを証拠に残しました。

自首後、想定通り、逮捕され、勾留請求されました
ですが、勾留請求を受けた裁判官は、勾留請求を却下しました
勾留請求却下決定においては、加害者が自ら上申書や証拠をもって警察に出頭していたり、示談交渉を申し入れていて、証拠隠滅及び逃亡の恐れが低いことが勾留請求却下の理由とされていました。

犯行後何もせずに逮捕まで至っていたら勾留決定されて20日間以上身柄拘束されたと推測される事案ですが、加害者が自主的に行動をしたことで、身柄拘束は約2日間に留まりました

この事案は、逮捕前からあらかじめ裁判所を視野に入れた弁護活動をしておくことで勾留を回避できた事案ということができます。

 

自首の仕方について詳しくはこちらをご覧ください。

上原総合法律事務所の自首サポートについて詳しくはこちらをご覧ください。

勾留決定に対する準抗告認容で釈放された具体例

夫婦が量販店において一緒に万引きをした共犯事件において、 口裏合わせのおそれがあるなどとして逮捕・勾留された事案がありました。
勾留決定後に弁護士へのご相談があり、勾留決定までは弁護活動は行われていませんでした。
ご依頼後に弁護士が接見に行ってご本人から事情を把握してみると、共犯者である夫婦がお互いをかばいあっていました。
夫婦の間に利害対立がなかったため、この状況を把握した弁護士は、夫婦が二人とも正直な事実を書いた上申書を作成し、身元引受人などを用意した上で勾留決定に対する準抗告をしました。

そうしたところ、準抗告は認容され、弁護士を依頼してから2日後に身柄が釈放されました

この事案は、適切な弁護活動により勾留の必要性をなくすことができた事案ということができます(※)。

※勾留決定に対する準抗告の考慮要素について
勾留決定に対する準抗告は、「勾留決定が間違っているかどうか」を判断するものです。
そうすると、勾留決定がされた後に事情が変わっても「勾留決定が間違っているかどうか」に影響を与えないのではないかという疑問が生じ得ます。

この点は過去に裁判で問題となっており、「勾留の判断に対する準抗告において、判断後の事情を考慮することができる」という判例があります。

ですので、「勾留決定後であっても、その時点からの弁護活動により勾留の必要性をなくし、勾留の必要性がなくなったことの証拠を提出しながら準抗告をする、という方法で身柄拘束からの解放を目指す」という弁護方針を立てることができます。

5 勾留から起訴不起訴の決定まで(詳細)

勾留は、原則は勾留請求の日から10日間ですが(刑事訴訟法第208条第1項)、裁判官は、検察官の請求により、この勾留期間を最大で10日間延長することができます(同条第2項)。
この勾留期間中に起訴しない限り、検察官は被疑者を釈放します(同条第1項)。

刑事訴訟法第208条
第1項 (前略)被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第2項 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

法律上、勾留期間を延長できるのは「やむを得ない事由がある」場合とされています。
具体的には、被害者からの事情聴取が終わっていない、現場検証が終わっていない、証拠である電子機器の解析が終わっていない、被疑者の取調べが終わっていない、などの理由で勾留期間を延長されます。
事案によっては本当に「やむを得ない事由がある」といえないにもかかわらず勾留期間延長決定がなされる場合もあり、そのような場合には、弁護人が勾留期間延長決定に対する準抗告をすることで、勾留期間延長決定が取り消されたり、延長期間が短縮されたりすることができます

 

検察官は、勾留期間中であっても、事件を不起訴にすると決めたら、被疑者を釈放します。
この釈放は、検察官の判断で行うことができ、裁判官の判断を必要としません

検察官が不起訴にすることを決める場合とは、例えば、被害者による告訴が取り消されたり、示談が成立して被害者が被疑者を許している場合などです。
また、ごく稀に、被疑者のアリバイ(※)が明白になったり、事件の犯人が別にいるなどの事情から被疑者が犯人ではないと明らかになった場合にも、被疑者を不起訴にすべきことは明らかですので、検察官は被疑者をすぐに釈放します。

アリバイとは
ナイフで人が刺された事件の発生時に被疑者が事件現場とは離れた場所にいたことなど、被疑者が事件の実行犯ではないことが明らかなことを「アリバイがある」といいます。
犯行の日時場所が特定できる事案で「自分は犯人ではない」という理由で無実を主張している事件の場合、アリバイを探すこと必ず行うべき弁護活動となります。

検察官は、勾留期間中に捜査し、事件を起訴するかどうかを判断します。

検察官は、起訴したら確実に有罪になるといえるだけの証拠がある、と考える場合に起訴します
起訴したら確実に有罪になる証拠がある場合であっても、検察官に起訴する義務はありません
事件を起訴するかどうかの判断は検察官の判断に任せられています(刑事訴訟法第248条。起訴便宜主義、といいます。)。

 

刑事訴訟法第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

検察官は、事件の個別具体的な事情や他の事案との公平などを考慮し、起訴するかどうかを決めます。
起訴すべきかどうか、という意味で「起訴価値があるか」などと言われたりします。

検察官は、証拠が十分にあり、かつ起訴価値がある事案について起訴します。

検察官は、さらに、事件を起訴するとして公判請求にするか略式手続にするか、を判断します。

公判請求というのは、公開の法廷による裁判にするものです。検察官が裁判所に「公判を求める」という意味で公判請求といいます。検察官が公判請求すれば、特別な事情のない限り裁判が開かれます。
初回の裁判は、公判請求の日から1−2ヶ月程度後になることが通常です。
ニュースやテレビドラマで写っているような法廷で、一般の方やメディアが傍聴(※)できる状態で裁判が行われます。

傍聴について
傍聴は誰でもすることができますが、傍聴席には限りがあります。
著名な事件などでは、傍聴するための傍聴券が配布され、傍聴券を求めて長い列ができることもあります。
著名な事件ではメディア用の傍聴席が確保されるため、一般の傍聴人のための席は少なくなります。
被告人の関係者用の傍聴席は用意されていません
被告人のご家族が傍聴したい場合、事前に弁護人から裁判所に調整することで傍聴席を確保できることがあります(特別傍聴席、などと呼ばれます)。
なお、警備上の理由から、傍聴人が傘を持ち込むことができません

略式手続は、検察官が懲役や禁錮ではなく罰金で良いと考えた場合に、公開の法廷による裁判の代わりに書類上のやり取りだけで刑罰が決定されるものです。
略式手続で事件を処理することについて被疑者の同意がある場合にだけ行われます。
略式手続による場合、通常、勾留期間の最終日に略式手続が行われ、その日のうちに罰金額が決まるとともに、釈放されます。
懲役や禁錮というより重い刑罰を避けることができ、釈放もされるため、不起訴であるべきと考えられる事案を除いては、略式手続に同意することが被疑者にとっても有利です

 

※勾留期間と土日祝日について
検察庁や裁判所の職員は、基本的に平日に勤務していて、土日祝日は、緊急業務を処理するために一部の職員が当番制で勤務しています。
勾留期間満了日が土日祝日になる場合、通常、事案の処理は、勾留期間満了日直前の平日に行われます。
例えば、8月1日木曜日に勾留請求されたため勾留期限が8月10日土曜日までだという場合、起訴不起訴の決定は基本的に8月9日金曜日までに決まります。
このような場合、8月9日に起訴されてしまう可能性があるため、それよりも前に示談しなければいけません
弁護人は十分に注意する必要があります

示談により勾留期間前に釈放になる場合

窃盗・暴行・傷害・痴漢・盗撮など、被害者がいて、かつ被害者が許していれば処罰しなくても良いと考えられる事件については、示談できれば不起訴になります
このような事件では、弁護士が被害者との示談を成立させて検察官に伝えると、検察官は、被害者に「本当に示談したのか」を確認した上で釈放されます。

そのため、できる限り早く示談を成立させることで釈放してもらうことが有益です

これに対し、薬物犯罪や汚職事件(贈収賄など)などの具体的な被害者がいない犯罪については、示談のしようがなく、示談成立による釈放は目指すことができません。

不起訴や不起訴にする方法ついては詳しくはこちらをご覧ください。

6 お気軽にお問合せください

長文をお読みくださりありがとうございます。

上に記載したように、刑事事件で逮捕された場合や逮捕されるかもしれない場合、すぐに適切な対応をできるかどうかで、身柄拘束の長さが変わりますし、刑事事件の結論が変わることもあります

上原総合法律事務所は迅速にご相談いただける体制を整えており、逮捕されている事案については、特段の事情のない限りご依頼いただいた当日に動き出します。

刑事事件でお困りの方は、上原総合法律事務所にご相談ください。

 

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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