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企業において不正行為が発覚した場合において重要なのは、当該不正行為が企業価値に及ぼすダメージを最小限に食い止めることです。
他方で、企業の自浄作用を発揮し、当該不正行為の原因を分析して再発防止策を策定することによって、かえって将来的に企業価値を高めることも重要です。
では、企業において役員・従業員による不正行為が判明した場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
対応方針を検討する前提として、不正行為が発覚するきっかけ(調査の端緒)について説明します。
不正行為は、大きく分けて、社内から発覚する場合と、社外から発覚する場合があります。
社内から発覚する場合としては、内部通報窓口に対する通報のほか、内部監査、人事異動に伴う業務引継、事業承継等を端緒として不正行為が発覚することが多く、中にはうわさ話から不正行為が発覚する場合もあります。
社外から発覚する場合としては、従業員らが監督官庁に通報を行ったり、従業員らがマスコミにリークしたり、従業員らがSNSに書き込んだりするなどして不正行為が発覚する場合があります。
このように社外から不正行為が発覚する場合には、既に不正行為に関する情報が企業外部に流出してしまっており、企業の社会的評価(レピュテーション)が低下するリスクは大きい状況にあるといえます。
なお、内部通報窓口に対する通報により不正行為が発覚する場合については、こちらをご参照ください。
企業において不正行為が発覚した場合、その初動対応は極めて重要です。
とりわけ、内部通報窓口に対する通報が行われた場合には、初動対応を誤ると不正行為に関する情報が社外に告発されるリスクは大きいといえます。
また、既に不正行為に関する情報が企業外部に流出してしまっている状況下においては、初動対応を誤ることによっていわゆる「炎上」を招き、企業の社会的価値の低下は更に現実的なものとなっていきます。
ところで、不正行為が発覚した場合における初動対応としては、情報収集、対応方針の決定、証拠保全、情報管理が挙げられます。
以下、順に説明します。
不正行為が発覚した場合には、企業内の危機管理担当者(例:コンプライアンス室)は、関係者・関係部署から情報を収集し、事実関係を正確に把握することが必要です。
そして、危機管理担当者は、危機管理担当の役員に事実関係を正確に報告し、場合によっては、顧問弁護士等に相談を行って対応方針を検討する必要があります。
不正行為の大まかな事実関係が把握できた場合には、危機管理担当者(役員を含む。以下同じ。)は、不正調査の要否(調査をするかどうか)、調査範囲(余罪の有無まで調査するかどうかなど)、調査実施主体(社内調査か、顧問弁護士による調査か、外部弁護士による調査か)を大まかに検討します。
また、不正行為が疑われる役員・従業員について、自宅待機とするなど当面の処分を検討する必要があります。
さらに、被害者がいる不正行為であったり、内部通報を端緒とする不正行為の場合には、被害者・通報者に対して、当面の対応方針を説明することも必要です。
加えて、監督官庁に対して報告するかどうかを検討したり、マスコミに不正行為の情報が流出している場合にはマスコミ用コメントの準備をするなどの必要が生じることもあります。
不正行為が判明した場合には、その証拠を保全することが重要です。
物的証拠のうち消去可能なものから優先的に収集(PC・業務用スマホ・メール・電子ファイル等)を行う必要があります。
また、不正行為者は、当初は不正行為を自認していても、後に否認に転じたり供述を後退させたりすることもありますので、供述書を取得しておくことも有効です。
そして、不正行為者に対して出社を許すことは、物的証拠の隠滅や口裏合わせなどを誘引するおそれがありますので、不正行為者に対しては自宅待機命令を出すことも考慮しなくてはなりません。
不正行為が発覚した場合、その情報が分散すると、物的証拠の隠滅や口裏合わせを誘引するおそれがあります。
また、メディアから不正行為に関する取材を受けた場合に、それぞれの役員・従業員がそれぞれの知りうることを自由に発言したとすると、説明の一貫しない企業であるとの評価を受けてしまうおそれがあります。
そのため、不正行為が発覚した場合には、危機管理担当部署において、保全した証拠資料や収集した情報について一元的に管理するとともに、メディア対応の担当者を固定化することも必要になるでしょう。
初動対応が完了したら、危機管理担当者は、不正調査の要否、調査範囲、調査実施主体について更に詳細に検討を進めることになります。
検討の際の判断基準としては、不正行為が与える社会的影響、事案の重大性、監督官庁への報告の要否、経営陣の関与の有無、上場会社であるか否か、被害者の存否、内部通報を端緒とするものであるか否か、懲戒処分を相当とする事案か否か、不正行為者の認否などを総合的に考慮して決めていくことになります。
なお、経営陣が関与していないことが明らかな不正行為であれば、顧問弁護士による調査で足りることもありますが、経営陣の関与が疑われるような不正行為などは、外部の弁護士等に中立的・第三者的な観点からの調査を依頼することが望ましいものと考えられます。
不正調査においては、証拠資料(PC・メール・業務用スマホ内のデータ・電子ファイル・書類等)を精査・分析するとともに、関係者のヒアリングを実施するなどして、不正行為について正確な事実認定を行っていきます。
そして、認定された事実に基づいて、不正行為者がどのような法的責任(刑事・民事・行政)を負うのか、あるいは、社内規程のどの規定に違反するのかなどを評価します。
その上で、不正行為が行われた原因(例えば、どのような動機で、どのような機会に行われたもので、どのように正当化がなされたのかなど)を分析し、再発防止策の提言を行います。
内部通報を端緒とする不正調査についてはこちらをご覧ください。
ハラスメント事案における不正調査についてはこちらをご覧ください。
企業は、不正調査の結果に基づいて、実際に再発防止策を策定し、損なわれた社会的評価を回復するとともに、これを向上させていくことになります。
不正行為が既に公になっていたり、社会的影響が大きかったりする場合には、調査結果を公表することによって、その社会的評価を回復させる必要性が高いといえます。
加えて、不正行為者の不正行為が懲戒事由に該当する場合には、不正行為の動機・態様(回数・期間・頻度)、不正行為により生じた結果(財産的損害・信用)、同種事例の場合の処分例などを考慮しつつ、不正行為者に対する懲戒処分を決する必要があります。
また、内部通報制度・コンプライアンス体制の信頼を確保するためにも、被害者や通報者に対しては、調査結果を通知する必要性が高いといえます。
上原総合法律事務所は、不正行為が発覚してしまった数々の企業から、不正調査のご依頼を受けております。
不正行為が発覚した場合には、認定された事実関係を基にしてその後の対応を決していくことになりますので、事実関係を正確に認定することが極めて重要です。
私たちは、元検察官としての捜査経験を活かし、正確な事実認定をはじめとして、不正行為が発生してしまった企業の方々のダメージを最小限に食い止めるためのお手伝いをさせていただきます。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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