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税理士が逮捕されたら

税理士が刑事事件を起こしたらどうなるのか。税理士資格は?対応方法は?
コロナ禍、持続化給付金をはじめとする各種給付金や補助金の申請において、税理士だけではありませんが、いわゆる士業に携わる者が、不正受給を指南したとして逮捕されるといった報道は記憶に新しいかと思います。
私自身も同様、その道のプロが法知識を利用し、不正や犯罪に関与すれば、罪証隠滅の恐れが高い等と判断され、逮捕・勾留は免れませんし、最悪の場合は実刑も免れません。
そこで、今回は、税理士を例として、国家資格者が刑事事件を起こした場合について、以下の4点をご説明します。

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税理士資格は失われるのだろうか。

刑事事件を犯してしまった税理士の方は、この点がとても気になると思います。
まず、逮捕、勾留、裁判を受けることになっただけで、税理士資格を失うことはありません。
税理士が資格を失うことになるのは、法令違反により「禁錮以上(又は罰金)の刑に処せられた」として、税理士法が定める欠格条項に該当した場合です(法第4条第3号から第5号)。
以下、第4条第3号を例に説明します。
「国税若しくは地方税に関する法令又はこの法律の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行が終わり、又は執行を受けなくなった日から5年を経過しないもの」は税理士となる資格を有しないと規定されています。
「国税若しくは地方税に関する法令」とは、国税若しくは地方税に関する法律、政令、省令及び地方公共団体の条例のことです。
「禁錮以上の刑に処された者」とは、裁判で死刑、懲役・禁錮(執行猶予を含む)の判決を受けた者という意味です。
「その刑の執行が終わり」とは、懲役又は禁錮で実刑判決を受けて刑期を満了したことを意味し、第4号の罰金の場合は罰金を完納したことを意味します。
ここで、勘違いしがちなのが「刑の執行が終わる=執行猶予期間が経過」と考えてしまうことです。
先ほどお話したとおり、「刑の執行が終わり」に「執行猶予期間が経過」は含まれません。
執行猶予期間が経過した場合、刑の言い渡しの効果が将来に向かって消滅します(刑法第27条)。
つまり、そもそも第4条に規定された「禁錮以上の刑に処せられた者」に該当しないこととなるため、当然、欠格条項にも該当しないことになります。
では、執行猶予判決の場合はどうなるのでしょうか。
執行猶予付判決を受けた場合は、税理士となる資格を失うため、業務を続けることはできません。
「税理士登録を受けている者」と「税理士試験5科目合格、税理士未登録の者」に分けて説明します。
・税理士登録を受けている者
執行猶予判決であったとしても、禁錮以上の刑に処された者に該当します。
そのことから、法第26条4号に該当し、登録が抹消されるため、業務を続けることはできません。
・税理士試験5科目合格、税理士未登録の者
税理士登録に際して、日本税理士連合会に登録申請書を提出する必要があります。執行猶予中である場合は、たとえ、5科目合格を果たしたとしても、税理士となる資格を有しない者と扱われ、第22条1項により登録を拒否されます。
そのため、執行猶予期間が経過するまでは、業務を行うことができません。
以下、第4条第3号から第5号の欠格事項をまとめた表となります。

  違反法令 受けた刑 欠格期間
第3号 国税若しくは地方税に関する法令、税理士法 禁錮以上 刑期満了から5年
第4号 国税若しくは地方税に関する法令、税理士法 罰金 罰金完納から3年
第5号 それ以外の法令(刑法等) 禁錮以上 刑期満了から5年

国税若しくは地方税に関する法令及び税理士法違反では、罰金で資格を失うことになりますので不起訴処分を目指すことが重要になります。
また、それ以外の法令(刑法等)では、禁錮以上で資格を失うことになりますので罰金又は不起訴処分を目指すことが重要になります。
ただ、報道された持続化給付金の不正受給等の指南については詐欺罪に当たり、10年以下の懲役刑のみで、罰金刑がありません。
そのため、検察官に詐欺罪で起訴されると、無罪判決を勝ち取ることができなければ、禁錮以上の刑となり、資格を失うことになります。

税理士の場合、刑事事件において何か考慮されるのか。

刑事事件においては、逮捕するかどうか、起訴するかどうかなどを判断するにあたり、被疑者被告人の職業や家族関係を考慮します。
税理士は一般に社会的に高い信用を持っているため、逃亡したりする可能性は高くなく、逮捕される可能性は高くありません。また、捜査機関としても、税理士を逮捕すればその事業を壊してしまうため、いたずらに逮捕したりしようとはしません。ですが、もちろん、犯した罪の内容・重さや、証拠隠滅をする可能性の有無・程度によっては、税理士といえども逮捕されますし、長期間勾留されることがあります。

税理士であることが特に意味を持つ刑事事件とは。

税理士であっても、傷害事件や交通事件などを犯してしまうことがあることは当然です。
このような場合、税理士ではない方と同様に処分がなされる可能性が高いといえます。

これに対し
・助成金詐欺・幇助
・脱税幇助
といった犯罪については、税理士という資格の信用を悪用したものとして、厳しく処罰されます。
そして、これらの犯罪は、税理士が依頼者に利用されたりして犯罪に巻き込まれるというケースもあり、必要に応じ、無実を証明するための証拠を事前に弁護士が収集します。

元検事率いる弁護士チームにできること

刑事事件において、早期の対応が何より重要です。
税理士等の国家資格者は、資格を失えば、仕事も同時に失う恐れがあります。
資格を守るため、罰金よりも重い刑を避けるためにできる手段を全て取る必要があり、特に早期の対応が必要となります。
私たちは元検事集団であるため、捜査機関の証拠収集状況や展開を的確に予測し、状況に応じた行動を行うことで、早期対応を実現できます。
また、各種助成金の不正受給事案の相談も多数受けております。
可能であれば、自分のしたことが犯罪に当たり得ると分かった段階で、捜査機関に発覚する前に弁護士に相談し、自首をすべきかどうかを含めた適切な対処をができると、より選択肢が増えます。
同じ士業に携わる者として、何か困っていることがあれば、お気軽にご相談ください。

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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。

弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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