公開日:2024年11月19日
警察等の捜査機関が犯罪を認知してから検察庁が起訴・不起訴の判断をするまでの期間を捜査段階といいます。
この捜査段階の刑事事件には、在宅事件と身柄事件の2種類があります。
この記事では、元検察官の弁護士が、在宅事件と身柄事件との違いや在宅事件の流れ、在宅事件の被疑者になったときに注意すべき点等について解説します。
なお、刑事手続全体の流れについてはこちらの記事で解説していますのでご参照ください。
「在宅事件」とは、被疑者が、逮捕・勾留による身柄拘束を受けていない刑事事件のことをいいます。
一方で、「身柄事件」とは、被疑者が、逮捕・勾留による身柄拘束を受けている刑事事件のことをいいます。
在宅事件と身柄事件との詳細な違いについては、後記の「2 身柄事件との違い」において解説します。
どのような事件が在宅事件となるかについて、法律上明確な基準が定められているわけではありません。
ただし、次のような事件は在宅事件になりやすいといえます。
捜査機関が逮捕・勾留といった身柄拘束をするためには、被疑者に犯罪の証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること、逃亡するおそれがあることが必要です。
被疑者にこのような事情が認められないと捜査機関が判断すれば、在宅事件になる可能性が高いといえます。
「犯罪の証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」の有無については、捜査機関がどれだけの証拠を収集しているか、被疑者が犯罪を認めているか否認しているか等を考慮して判断されます。
「逃亡するおそれ」の有無については、被疑者に定職があるかどうか、同居の家族がいるかどうか等を考慮して判断されます。
一般的な傾向として、比較的軽微な犯罪であれば在宅事件になる可能性が高いといえます。
例えば、殺人罪や強盗致傷罪等のように法律で定められている刑罰が比較的重い犯罪よりも、窃盗罪や過失運転致傷罪(交通事故で人に怪我を負わせた場合に成立する犯罪)といった法律で定められている刑罰が比較的軽い犯罪の方が在宅事件になりやすいといえます。
また、上記のように法律で定められている刑罰が比較的軽い犯罪の中でも具体的な犯罪事実の程度が軽いものの方が在宅事件になりやすいといえます。
例えば、同じ窃盗罪であっても被害額が高額な事案より少額な事案の方が在宅事件になりやすいでしょう。
また、同じ過失運転致傷罪であっても被害者の怪我の程度が重い事案より軽微な事案の方が在宅事件になりやすいといえます。
上記のとおり、身柄事件では捜査機関に逮捕・勾留されることにより被疑者の身体が拘束されます。
このため、身柄事件の被疑者になれば家族と離れ離れとなり仕事にも通うことができません。
また、捜査機関が逮捕・勾留できる期間は法律上定められているので、原則として勾留期間が終わるタイミングで検察による起訴・不起訴の判断がなされることとなります。
ただし、捜査状況によっては例外的に勾留期間が終わるタイミングで処分を保留し、それ以降身柄の拘束を解いて在宅事件として捜査が続けられる場合もあります。
一方で、在宅事件では捜査機関に逮捕・勾留されず被疑者の身体が拘束されません。
このため、在宅事件の被疑者になれば従前どおり家族と暮らすこともできますし仕事にも通うことができます。
ただし、従前どおりの生活を送ることができるからといって、自身に対する刑事事件が終わったわけではありません。
在宅事件の被疑者になった場合に注意すべき点については、後記の「4 在宅事件になった際の注意点」で記載します。
また、在宅事件では、上記身柄事件のように身体の拘束期間が法定されているわけではないので、いつ頃までに起訴・不起訴の判断がなされるのか予測しづらい傾向があります。
まず、何らかの方法で犯罪の嫌疑を把握した捜査機関が在宅事件として捜査を開始します。
上記のとおり在宅事件では身体が拘束されないため、この段階で自分に対する在宅事件の捜査が始まったことを認識することは難しいでしょう。
一般に、捜査機関から自宅等の捜索を受けたり、取調べを行うための呼出しの連絡を受けたりして初めて、自己に対する捜査が行われていることに気づくことが多いでしょう。
捜査機関が必要な捜査・取調べ等を終えると、検察官が起訴・不起訴の判断をすることとなります。
ここで不起訴となれば、当該在宅事件は終結します。
一方、ここで起訴となれば、刑事裁判が始まります。
在宅事件では、上記のとおり身体の拘束を受けることなく表面上は通常どおりの生活を送ることができます。
しかし、繰り返しになりますが、ご自身に対する刑事事件の捜査は続いており不起訴が確定したわけではありません。
例えば、起訴されて有罪判決となり罰金刑を受けることになれば前科がついてしまいます。
また、起訴されて刑事裁判を受け、懲役等の実刑判決をうければ前科がついてしまうだけでなく刑務所に収監されることになります。
したがって、在宅事件であったとしても、できるだけ起訴が回避できるように、仮に起訴されたとしてもできるだけ軽い刑罰で済むように打てる手を尽くす必要があります。
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年11月19日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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