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「飲酒の影響もあって、カッとなって我慢できなかった。」「どうしても許すことができない相手だった。」などの理由で、つい手が出てしまうことがあるかもしれません。
・ 他人に暴行を加えれば暴行罪(刑法208条)
・ 怪我をさせれば傷害罪(刑法204条)
暴行罪と傷害罪の違いは、被害者に怪我が生じたかどうかです。
暴行罪になるか傷害罪になるかは、主に警察に診断書が提出されたか否かで決まってきます。
また、暴行罪と逮捕されたとしても、その後に被害者が怪我をしたとして診断書を提出すれば、傷害罪として処罰を受ける可能性が出てきます。
暴行罪や傷害罪といった犯罪は、日常生活を営む中の些細なトラブルが原因でも発生するため、誰もが起こしうる身近な犯罪とも言えます。
しかし、怪我の程度や示談状況によっては、厳しい処罰を受ける可能性があります。
もし、ご家族が他人を怪我させてしまい、逮捕されたら、とても心配になると思います。
今回は、元検事である弁護士が、傷害罪で逮捕された場合の流れやそれに伴う弁護活動、そして元検事の集団である当事務所にできることをお話します。
傷害罪とは、素手で暴力を振るったり凶器を使ったりして、他人の生理的機能に障害を負わせることです。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)のように心に傷を負わせる行為も傷害罪です。
傷害を生じさせる方法として、暴行だけでなく、嫌がらせ電話をして精神的に衰弱させる行為や性病・コロナなどの病気をうつす行為も傷害罪になります。
・ 結果として被害者が死んでしまった➡傷害致死罪(刑法205条)
・ 殺してやろうと思ってたり、死んでもいいと思いながら暴力を振るったりした➡殺人罪(刑法199条)
※ 傷害致死罪と殺人罪は、いわゆる裁判員裁判対象事件です。
・ 傷害罪の場合は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金(傷害罪の時効は10年です)
・ 傷害致死罪の場合は、3年以上20年以下の懲役(傷害致死罪の時効は20年です)
ここで、この記事をよりご理解いただくために傷害事件における弁護活動の動画を作成いたしました。
5分ほどの動画ですので、是非ご覧ください。
逮捕・勾留、そして検察官が事件を処分するまでの流れは、以下のとおりです。
② 検察官が24時間以内に勾留請求を行うべきか否かの判断
※ 判断は、犯行を認めているか、家族など身元引受人がいるか等が考慮
③ 裁判官において勾留決定
※ 10日間勾留され、更に必要があれば最大10日間の延長が可能
④ 検察官が起訴、不起訴を判断
逮捕から起算すると最大で23日間、身柄を拘束される恐れがあります。
令和3年版犯罪白書(以下、出典同じ。)による、傷害事件の逮捕・勾留率は、以下のとおりです。
・ 警察に発覚事件のうち、約55%が逮捕
・ 逮捕された方のうち、約10%は検察庁に送致する前に釈放(送致前釈放)
・ 逮捕のまま送検された事件の約90%について勾留請求
・ 勾留請求された事件のうち、約94%について勾留が決定
傷害で逮捕された人のうち、逮捕から3日以内に身柄が解放されることになるのは約23%となります。
検察官や裁判官が身柄を拘束するのは、以下の場合です。
➀ 証拠隠滅の恐れがある場合(物的証拠を壊したり、被害者を脅したり、関係者と口裏を合わせなど)
② 逃亡の恐れがある場合
そのため、早期釈放のためには証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す必要があります。
具体的には、弁護人は、以下の3つの方法で意見を伝え、早期釈放を目指します。
この意見書や申立てについて、傷害罪においては、特に、以下のことが重要です。
傷害事件においては、当事者が興奮状態にあったりお酒を飲んで酔っ払っていたりしていることが多く、加害者・被害者ともに事実関係を正確に把握・記憶していないことがままあります。
逮捕された被疑者が「事件のことを覚えていない。」と述べるだけだと、捜査機関としては、本当に覚えていないのか、覚えているけども嘘をついているのか判断がつかず、被疑者のことを疑わざるを得ません。
多くの場合、被疑者は事件の全部は覚えていなくても一部を覚えていたり、逮捕後に警察官から事件の内容を聞かされたりして思い出したりしています。
上原総合法律事務所では、必要に応じて依頼者(被疑者)に上申書を書いてもらい、依頼者の覚えていることや考えていることを検察官及び裁判官に伝えます。
上申書の内容は、元検事としての経験を踏まえ、検察官や裁判官の知りたがることを依頼者に聞き、依頼者とともに考えていきます。
また、弁護人が収集することのできる物的証拠(例えば、依頼者のP Cやスマートフォンのデータなど)は、支障がない限り、捜査機関に提出します。
このように事実を隠さない姿勢を示すことで、証拠隠滅の恐れを減らし、身柄解放を目指します。
また、弁護人は、早期釈放に向けて家族などの身元引受人を探します。
検察官や裁判官は、勾留すべきか判断するに際して、証拠を隠滅したり逃亡したりしないかを心配しています。
釈放しても信頼できる人が監督して証拠隠滅や逃亡を防いでくれるのであれば、被疑者を釈放しやすくなります。
身元引受書を検察官及び裁判官に提出し、証拠隠滅及び逃亡の恐れがないことを示します。
逮捕・勾留されて直後から、被害者との示談交渉をはじめます。
早期に示談を成立させることができれば、職場や学校に逮捕されたことが発覚せずに、職場等のへ復帰もできます。また、示談交渉をはじめていることは、自分のした罪を認めて謝罪することを示しているため、被疑者の誠実さをわかりやすく示しています。
示談交渉を開始していることを伝えると、検察官も裁判官も対応が柔らかくなることが多いです。
示談交渉においては、主に以下の2つを行うことになります。
・ 謝罪
・ 損賠賠償
謝罪について、ご本人で被害者に謝罪し、示談交渉も行いたいと思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、実情としては、弁護人が代理で被害者側の方とお会いすることが多く、被害者と特別な関係にある場合でなければ、ご本人で行うのは難しいです。
一般的な場合、示談交渉をするためには被害者の連絡先を知る必要があります。
連絡先を知るためには、まず弁護士が警察官や検察官に被害者の連絡先を知りたいと伝え、警察官や検察官が被害者に連絡をし、「連絡先を教えてもいい」と了解が得られた時にのみ、警察官や検察官が弁護人に被害者の連絡先を教えてくれます。
ご本人が警察官や検察官に対し被害者の連絡先を教えてほしいと頼むことは可能です。
しかし、傷害罪の場合、怪我を負わされた側である被害者とすれば、怖いなどの理由から加害者に直接会いたくない、話したくないと思っている方がほとんどです。
また、警察官や検察官としても、特に傷害罪の場合、ご本人と被害者が直接会ってトラブルが再発することを避けたいと考えます。そのため、ご本人が被害者の連絡先を知りたいと言っても、被害者や警察官・検察官の了解を得られず、連絡先を教えてもらえないことが大半です。
それに対して、弁護士は専門家ですから、以下の3つのメリットがあります。
・ スムーズな示談交渉を行えます。
・ 示談成立の可能性も高くなります。
傷害罪のような被害者の存在する事件の場合、示談ができれば不起訴処分の可能性も高まります。
傷害罪の場合、怪我によって病院に行ったり仕事を休んだりしていることが多いので、治療費や休業損害に対する被害弁償が必要となってきます。
これらに加え、精神的苦痛を負わせてしまったことに対する慰謝料を併せて支払うことになります。
示談金の額については、怪我の程度や事案によって金額に大きな差が生じますが、軽い傷害結果で10−30万円程度であることが多いです。
傷害をしていない場合は、冤罪により刑罰を受けないように、徹底的に戦う必要があります。
また、暴力を振るったけれども、相手方から攻撃してきていて正当防衛であったということもあります。
このような場合も、不起訴処分や無罪を求めて徹底的に戦う必要があります。
傷害自体をしていないという場合、被害者や目撃者による犯人の特定が誤りである可能性や、被害者が嘘を言っていて傷害被害自体がなかったという可能性もあります。
そのため、弁護士が、無罪を勝ち取るための証拠を探します。
無実の場合や正当防衛の場合、取調べ対応についても、弁護士としっかり打ち合わせをする必要があります。
「やましいことはないのだから事実を正直に言えば良い」とだけ思って取調べに応じていると、思わぬ形で揚げ足を取られる可能性があります。
逮捕されている事案では、弁護士が警察署に行ってこの打ち合わせをします。
弁護士との打ち合わせには警察官の立ち会いはなく、誰にも聞かれることがないので安心して相談ができます。
☑ 後悔している
☑ 夜も眠れない
☑ 逮捕されたらと考えると不安でしかたない
警察から連絡が来ていなかったり逮捕されていない場合でも不安を抱えておられる方は多いです。
このような方は、相手方が分かっていれば弁護士を通じて示談交渉するべきです。
また、示談交渉ができないのであれば、自首をすることを強くお勧めします。
傷害は放っておけば逮捕される可能性が高いです。
ですが、自首をすれば、逮捕を避けられる可能性が出てきますし、逮捕されたとしても裁判官が勾留しないでくれたりする可能性が出てきます。
また、傷害は、怪我の重さによっては実刑になる可能性があります。
ですが、自首すれば、執行猶予がつく可能性が高まります。
被害者にも、反省していることをわかりやすく示すことができます。
あらかじめ弁護士に相談し、自首後に警察にどのようなことを話すのかを打ち合わせの上、弁護士を同行させて自首するべきです。
こちらの記事で自首について詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
刑事事件では、まずは弁護士に相談し、事案に応じた適切な対応を速やかにとることが大切です。
特に傷害罪は、怪我の程度によっては重い罪となります。そのため、対応を間違えると初犯でも実刑になって刑務所行きになりかねません。
当事務所では、元検事の経験を活かし、じっくりお話をお聞きします。
その後、それぞれの事案に即して
・ 示談交渉
・ 早期の身柄の解放
・ 勤務先への対応
・ 取調べ対応など
必要な弁護活動を誠心誠意行います。
お気軽にご相談ください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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