公開日:2024年11月20日
再逮捕とは、一般的に、刑事事件において捜査機関に逮捕された被疑者が一度釈放された後、再び逮捕されることを指します。
法律上の「再逮捕」とは同一事実に基づいて逮捕する場合のことを指します。
そもそも逮捕は被疑者の自由を一時的に制限するものであり、厳格な要件のもと認められます。
そして、刑事訴訟法においては、「一つの罪については一回だけ逮捕される。」という原則がありますので、本来の意味での再逮捕は非常に限定的な場合にのみ許容されるものです。
しかし、実際には「再逮捕」と呼ばれる逮捕は一般的によく行われています。
本記事では、刑事実務において、捜査機関が行っている再逮捕について、可能な回数やその影響、罪が重たくなるかどうかなど、元検事である弁護士が詳しく解説します。
再逮捕のリスクや対応策を知り、最善の結果を得るために必要な情報を提供します。
Contents
法律上の再逮捕とは、捜査機関が被疑者を逮捕し、一度釈放した後に「同じ事実で」再び逮捕することをさします。
これに対して、捜査機関が「再逮捕」という言葉を使うときは、おおむね「それぞれ別の事実で連続して逮捕する」ことを指します。
同一の犯罪事実に基づく再逮捕は、非常に限定的なケースで許されます。
例えば、逮捕・勾留期間中に証拠が不十分で処分保留釈放された場合、新たな証拠が出た際に再び逮捕されることがあります。
しかし、実務上はあまり見られません。
別の犯罪事実に基づく再逮捕は、余罪が発覚した場合や、異なる犯罪行為が疑われる場合に行われます。これは同一の事件ではなく、別の事件として捜査されることになります。
今回は基本的に、別の犯罪事実で逮捕される場合を説明します。
再逮捕をされ得るパターンはさまざまですが、ほとんどの場合、被疑者がすでに逮捕されている事実についての勾留期間満了とともに処分保留で釈放された後、別の事実で逮捕されるという流れになります。
処分保留釈放とは、処分(起訴するか不起訴にするか)が決まっていない状態で被疑者を釈放することを指します。この場合、処分が決まっていない以上、捜査自体はいわゆる在宅捜査として継続します。
ここで注意が必要なのは、「処分保留で釈放される。」と言っても、一旦家に帰ることなどはできないということです。
実際の、処分保留釈放と再逮捕の手続は、警察署の取調べ室内で同じ機会に行われることになります。
すなわち、警察官が「今あなたのことを逮捕している事件については、処分保留で釈放します。」と言って釈放の手続きをした直後、「そして、これまで逮捕していた事実とは別の新しい事実で逮捕します。」と言って逮捕するのです。初めに釈放と言われるので、ぬか喜びをしてしまい、再逮捕されて落胆したという話はよく耳にします。
そのようなことがないように、再逮捕される可能性がある場合は事前に弁護士からその旨の説明があってしかるべきでしょう。
再逮捕後の手続きは初回の逮捕とほぼ同じです。
逮捕後、48時間以内に検察官に送致され、その後24時間以内に勾留請求がなされるかどうかが判断されます。
この場合、再逮捕前の事実について捜査を担当していた検察官のもとに送致されることがほとんどです。
再逮捕が行われると、その都度、身柄拘束期間が延長される可能性があります。
通常、勾留期間は最長で20日間ですが、再逮捕されるとさらに20日間の勾留をされる可能性があります。
そして、実務上運用されている再逮捕の回数には法律上の限定がなく、再逮捕されるごとに、拘束期間が20日間伸びることもあり、被疑者やその家族にとって大きな負担となります。
しかし、裁判官によっては、あまりに再逮捕及び勾留期間が長くなっている被疑者については逮捕勾留のために必要な令状を出さないという考えを持っている方もいますので、再逮捕されるとしても2~3回というのがボリュームゾーンです(もちろん場合によります。)。
当然、逮捕の要件を満たす犯罪事実がなければ逮捕はできないので、一回の窃盗で何度も再逮捕されるということはなく、何度も窃盗を繰り返している場合に、その一つずつの窃盗について逮捕を繰り返される可能性があるということですから、いわゆる余罪がない人が何度も再逮捕されて拘束期間が長くなるということはありません。
結論から申し上げると、再逮捕自体が罪を重くすることはありません。
刑罰の軽重は最終的に裁判官が決定します。
裁判官は、検察官によって起訴され、有罪となったすべての犯罪について、総合的に判断して最終的な刑罰の重さを決定します。
すなわち、再逮捕された事案を全て起訴され、有罪となった場合、その結果として罪が重くなるという関係にあります。
再逮捕されても執行猶予が付与される可能性は残ります。
ただし、前記のとおり、再逮捕が繰り返され、全ての罪について起訴されれば、最終的に下される刑罰も必然的に重くなります。その結果として執行猶予が得られる可能性が低くなることがあります。
再逮捕された場合でも、保釈請求は可能です。
ただし、裁判所が保釈を認めるかどうかは、その時点での証拠や被疑者の逃亡・証拠隠滅の恐れなどを考慮して判断されます。
複数の事実で再逮捕されている場合は、一つの事実で逮捕されている被疑者と比べて刑罰が重くなる可能性がある以上、被疑者が逃亡したり証拠隠滅したりする可能性が高いので保釈請求は難易度が高まることがあります。
※保釈に関する詳細はこちらをご覧ください
また、仮に保釈請求が認められ、保釈されたとしても、たくさんの罪を犯している被疑者は、すぐに他の事実で逮捕されてしまうことが考えられます。
そうすると、再逮捕された事案についてもさらに保釈請求を行う必要があります。
保釈の際には保釈保証金が必要となりますし、一度保釈されたのに再度逮捕されるのは被疑者の精神にも大きな影響を与えてしまいます。
したがって、余罪がたくさんある場合などは、弁護士が検察官や警察などの捜査機関から情報を引き出し、再逮捕の可能性があるのかなどをよく吟味したうえで保釈請求の要否を判断するべきです。
再逮捕が行われやすい事件には、特定の特徴があります。特に余罪が多く、捜査が長期化しやすい事件では、再逮捕が行われる可能性が高くなります。
重大な犯罪においては、再逮捕が行われるケースが多いです。
例えば、殺人事件が問題になっている場合、まず被疑者を死体遺棄で逮捕し、勾留期間満了後に殺人事件で逮捕するということがあります。
しかし、このような逮捕の仕方は、実質的には一つの事実関係に基づいて再逮捕されている場合に当たり、法律上の再逮捕の厳格な要件を満たしていないのに行われている脱法的なものとして批判をうけることがよくあります。
詐欺や業務上横領などの経済犯罪も、再逮捕が多い事件の一つです。特に組織的に行われる特殊詐欺では、複数の被害者や犯罪手口が発覚することがあり、捜査が長期化します。
組織的な詐欺や長年にわたって行われた業務上横領については、一つ一つの詐欺、一つ一つの横領がそれぞれ犯罪事実を構成します。
結果として、各犯罪事実に基づいて逮捕・勾留の要件を満たしてしまい、再逮捕が繰り返されることがあります。
また、そもそもいわゆる経済犯罪は証拠の収集や全容の解明に多くの時間を要することがあり、かつ、証拠の隠滅が比較的容易なため、長期の身体拘束に及んでしまうことがあります。
薬物犯罪は、その性質上再逮捕が頻繁に行われることがあります。
使用や所持のほか、販売・流通に関わる犯罪が次々に発覚するため、捜査が進むにつれて新たな事実が明るみに出やすい類型の一つです。
再逮捕を避けるためには、迅速かつ的確な弁護活動が重要です。逮捕後すぐに弁護士に相談し、適切な対応を取ることで、再逮捕を回避する可能性が高まります。
再逮捕を避けるためには、初回の逮捕時から弁護士を依頼し、証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示すための準備を行うことが重要です。
また、まだ逮捕されていない余罪について、捜査機関に先んじて被害者と示談交渉を行うなど、早期解決に向けた戦略を立てることで、再逮捕のリスクを減らすことができます。
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年9月現在)を中心とする弁護士集団で,迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
重大事件や経済犯罪についても、捜査機関側弁護側それぞれの立場からの経験を踏まえ、最適な弁護活動を行い、早期に身体拘束を解き、再逮捕されないための弁護が可能です。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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