弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
日本では近年、在留資格の審査が厳格化し、在留資格等の不正取得への警戒感も高まっています。
その中で、在留や就労を目的とする外国人の一部が「偽装結婚」に関与し、刑事事件として立件されるケースがあります。
偽装結婚は“在留資格を得るための手段”として使われており、決して軽い犯罪でありません。
報酬を得て外国人の相手となった日本人側も検挙されています。
本記事では、偽装結婚とは何か、どのような犯罪が成立するのか、罰則の内容、発覚理由や弁護活動のポイント等を、元検事(ヤメ検)の弁護士がわかりやすく解説します。
第1 偽装結婚とは?
偽装結婚とは、一般的には
実際に結婚生活を送る意思がないにもかかわらず、婚姻手続を行う行為
を指します。
法律で「偽装結婚」という犯罪が定められているわけではなく、後述のとおり、婚姻の手続を行うことで「電磁的公正証書原本不実記録」という犯罪になるのです。
偽装結婚の目的は、主に、外国人の方が、日本での在留資格を不正に取得しようとすることにあります。
日本人と偽装結婚することにより「日本人の配偶者」という立場となり、「配偶者ビザ」(「日本人の配偶者等」の在留資格)を取得することができます。
その場合、比較的長期間の在留が認められるほか一定以上の期間を経て、永住権や日本国籍の取得が認められることもあります。
偽装結婚は、ブローカーが介入し組織的に行われる場合が多く社会問題となっていますので、警察・出入国在留管理庁ともに重点的に取り締まっています。
第2 偽装結婚が行われる経緯
偽装結婚は、ブローカーが介入し、組織的に行われる場合が多いです。
流れとしては
①日本での在留資格がほしい外国人の方が、ブローカーに偽装結婚を依頼する(ブローカーから持ちかける場合も多い)
②ブローカーが偽装結婚の相手となる日本人を探して、偽装結婚の了承をもらう
③婚姻届を作成・提出する
というものが典型的です。
この場合、外国人の方からブローカーに報酬が支払われ、その一部が偽装結婚相手の日本人に流れるということが多いと思われます。
日本人としては、ブローカーから
報酬を支払うので、人助けのため書類上でだけ結婚してほしい
などと言われ「報酬が支払われるなら」「人助けになるなら」と考え、犯罪に当たるかどうかを深く考えることなく、偽装結婚に応じてしまうケースが多いのです。
ブローカーによる接触は、近年では各種SNSや、マッチングアプリ等を利用してなされているため、普通に生活している人であっても関わってしまう可能性があると言えます。
また、闇金業者に借金してしまい、返済の代わりに偽装結婚の相手とさせられたり、いわゆる闇バイトの募集に引っかかってしまい偽装結婚に関与してしまうといった例もあるでしょう。
第3 偽装結婚で問われる犯罪
婚姻をする場合、婚姻届等の書類を市区町村に提出することになります。
届出を受理した公務員は、その届出内容に基づき、電磁的記録である戸籍簿を作成します。
つまり、結果として実態に反した戸籍簿が作成され記録されることになります。
これは、刑法157条1項における「電磁的公正証書原本不実記録罪」に該当します。
条文は以下のとおりです。
第157条(公正証書原本不実記載等)
1 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
日本人側も外国人側も共犯として処罰されることとなりますし、偽装結婚をする目的で日本人を探したブローカーも共犯となります。
罰金刑もありますが、法定刑の上限は5年となっており、決して軽い罪ではありません。
また、外国人側は退去強制等に繋がる可能性もあり、安易に偽装結婚という手段をとったことで日本で生活することができなくなってしまうこともあります。
第4 偽装結婚が判明する理由とは?
偽装結婚については「形式だけ整えればバレないのではないか」と思われがちですが、実際には、出入国在留管理庁による審査が行われており、それが発覚の端緒となるケースが多くあります。
まず、在留資格申請時に結婚の経緯等について詳細に調査されるため、回答に矛盾がある場合などには疑われることになります。
また、必要に応じて、実際の居住地に生活実態があるかについても調査されることとなるため、そこで発覚するケースもあります。
そのほか、第三者からの情報提供によって発覚するケースも少なくありません。
入国在留管理庁が偽装結婚との疑いを抱いたことで、警察に情報提供がなされ、警察による詳細な捜査が実施され、そこで実態が明らかになる場合もあります。
第5 偽装結婚と疑われたら
偽装結婚を争わないのであれば、当時の認識や偽装結婚に至る経緯等をしっかりと供述し、捜査機関に対し、情状上有利な事情を十分に分かってもらう必要があるでしょう。
一方、偽装結婚ではなく結婚の実態があるということであれば、婚姻に至る経過や実際の生活状況等を説明して、偽装結婚という認定は誤りであるということを理解してもらう必要があります。
いずれにしても、法的観点から事実関係を整理して主張していくことが肝要ですので、弁護士のアドバイスを受けつつ、必要に応じて、弁護士から書面を提出して事情を理解してもらうよう務めるのが最善でしょう。
そのため、偽装結婚の疑いをかけられた段階で、できる限り早期に弁護士へ相談し、適切な対応を行うことが重要と言えます。
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第6 まとめ
安易な気持ちで偽装結婚に関与してしまう方は少なからずいますが、社会問題ともなっている犯罪に当たる行為です。
報酬目的で安易に偽装結婚に加担してしまったがゆえに逮捕され、刑事裁判を受けることとなってしまう方もいます。
偽装結婚の疑いを指摘された場合には、できるだけ早期に弁護士へ相談することが最も安全です。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
元検事の弁護士として、偽装結婚を含む多様な刑事事件について熟知しているほか、、独自のノウハウを有しており、偽装結婚で検挙されたとき又は検挙されそうなとき、さらには起訴されてしまった場合も、不起訴や執行猶予に向けたの具体的な対応につきアドバイスをすることが可能です。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
弁護士費用の一例
【偽装結婚に関与したが前科を避けられた】
着手金:55万円
成功報酬(不起訴・立件なし):66万円
日当(出張1回):3万3000円



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