窃盗と強盗の違いとは?元検事の弁護士が関連する犯罪や刑罰の違い等について解説

窃盗
[投稿日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

「窃盗」と「強盗」は、いずれも他人の財産を奪う犯罪ですが、法律上は大きく異なる意味を持っています。

この記事では、窃盗罪と強盗の基本的な違いから、それぞれの刑罰、関連する犯罪類型や弁護活動のポイント等まで、元検事の弁護士が詳しく解説します。

第1 窃盗とは?強盗とは?

1 窃盗とは何か

「窃盗」については、刑法235条に規定されています。条文は以下のとおりです。

(窃盗)
刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。

簡単に説明しますと、他人の物をこっそりと盗む行為が窃盗罪に該当します。

典型的な窃盗としては、店に置いてある商品をひそかに盗むいわゆる「万引き」や電車等で財布を盗むなどの「スリ」、留守の家に忍び込んで金品を盗む「空き巣(侵入盗とも呼ばれ、多くの場合住居侵入の罪も成立します。)」などが挙げられます。

2 強盗とは何か

「強盗」については、刑法236条に規定されています。条文は以下のとおりです。

(強盗)
刑法第236条
1 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

典型的な強盗としては、コンビニで店員にナイフを突きつけて金銭を奪うような行為が挙げられます。

重要なポイントは「暴行又は脅迫」を用いているという点です。

また、窃盗犯が、盗んだものを取り返されることを防ぐ、逮捕を免れる又は証拠を隠滅するために暴行又は脅迫をした場合も「事後強盗」として、強盗と同様に処罰されます。

条文は以下のとおりです。

(事後強盗)
刑法第238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

典型的な事後強盗としては、万引き犯が店員に発見されて声をかけられたところ、その店員に暴行を加えて逃げる行為が挙げられます。

事後強盗についても、重要なポイントは「暴行又は脅迫」を用いているという点です。

窃盗の犯行に及んだところ見つかってしまい、逃げるために暴行を加えるなどすれば、思いもよらず、刑罰が重い事後強盗罪や、けがをさせてしまえば強盗致傷罪などに発展してしまう可能性があるのです。

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第2 窃盗と強盗の違いは?

1 成立要件の違い

窃盗と強盗は、どちらも他人の財物を奪い、不法に自分のものにする犯罪ですが

・暴行又は脅迫が用いられているか

という点で異なります。

簡単に説明しますと

・財産を奪う際に暴行又は脅迫が用いられていなければ「窃盗罪」
・財産を奪う際に暴行又は脅迫が用いられていれば「強盗罪」

ということになります。

なお、財産を「だまし取った」という場合には詐欺が、自分の手元にある他人の物などを自分のものにした場合には横領が成立することになります。

ただ、被害者の意思を制圧して財物を奪う強盗の手段としての暴行・脅迫は「被害者の反抗を抑圧するに足りる」ものであることが必要です。

「被害者の反抗を抑圧するに足りる」か否かは、暴行・脅迫の態様だけではなく、犯行場所、犯行時刻、周囲の状況、相手方の性別・年齢・体格等も考慮して具体的に判断されることとなります。

けん銃やナイフを突きつける行為は、一般人の反抗を抑圧するものですから、原則として「被害者の反抗を抑圧するに足りる」と判断されるでしょう。
他方で、いわゆるひったくりのような犯行の場合、状況次第で強盗と評価されることも窃盗と評価されることもありえます。

上で説明したとおり、窃盗犯が、盗んだものを取り返されることを防ぐ、逮捕を免れる又は証拠を隠滅するために暴行・脅迫をした場合は「事後強盗」となりますが、ここでいう暴行・脅迫も「被害者の反抗を抑圧するに足りる」程度である必要があります。

なお、暴行・脅迫が被害者の反抗を抑圧するに足りないとされた場合には、恐喝罪が成立し得ます。
恐喝罪は刑法249条に規定されており、内容は以下のとおりです。

(恐喝)
第249条
1 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

ここで言う「恐喝」とは「反抗を抑圧するに至らない程度の暴行又は脅迫」と解されています。

被害者の反抗を抑圧するに足りる暴行又は脅迫がされたときには強盗罪、それには足りない場合には恐喝罪が成立し得ることとなります。

2 窃盗と強盗の法定刑の違い

窃盗罪と強盗罪とでは、法定刑に大きな差があります。

  • 窃盗罪 ⇒ 10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
  • 強盗罪(事後強盗罪) ⇒ 5年以上の拘禁刑

窃盗罪は「10年以下の拘禁刑」というかなり幅のある法定刑となっていますが、実際には、5年以上の拘禁刑が科されるような事案は多くはありません(常習犯や高額の窃盗事件に限られるでしょう)。

それに対し、強盗罪は、最低でも5年の拘禁刑とされていますので、窃盗よりかなり重く処罰されることとなります。

ただし、実際にいかなる刑が科されるかは、前科があるかどうか、被害弁償や示談ができているか、組織的な犯罪の場合はその役職がどの程度なのか等、個別の事情で判断されますので一概に判断することはできません。

3 強盗致死傷について

強盗犯が、強盗(事後強盗犯を含みます。)の機会において、相手方を負傷、死亡させたときには、更に重く処罰されます。

刑法240条に「強盗致死傷罪」として規定されており、条文の内容は以下のとおりです。

(強盗致死傷)
第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。

このように

  • 強盗の機会に相手が負傷したとき ⇒ 無期又は6年以上の拘禁刑
  • 強盗の機会に相手が死亡したとき ⇒ 死刑又は無期拘禁刑

という、極めて重い法定刑となっています。

ここでいう「負傷」は、重篤なものには限られず、軽い擦過傷等も含まれますので、強盗行為が行われた場合、強盗致傷罪が成立するケースは多いです。

強盗致死傷罪として起訴された場合には、裁判員裁判により審理されることとなります。

第3 窃盗・強盗における弁護活動

窃盗・強盗事件において想定される弁護活動は、多岐にわたります。

逮捕・勾留のリスクを減らすために、自首を検討しなければならない場合もあるでしょうし、不起訴を求めたり刑を軽くしたりするために、被害者と示談交渉しなければならない場合もあるでしょう。

窃盗、強盗はいずれも財産犯であり、基本的には金銭的な被害が発生しているため、被害弁償をしたり示談をすることは極めて重要です。

この点、示談交渉は、相手方が警戒して被疑者本人と連絡をとるのは拒むことが多いこと、そもそも被疑者本人が相手方の連絡先を知らなければ示談を進めることは不可能なことなどから、被疑者本人で行うことは非常に困難ですし、示談交渉自体がトラブルの種になりかねません。

しかし、弁護士であれば、相手方が警戒を解いて連絡をとってくれる可能性が高まりますし、捜査機関は、相手方の承諾を得られれば、弁護士限りでその連絡先を開示してくれますので、安心してください。

窃盗事件についてはこちらの記事もご参照ください。

第4 まとめ

窃盗と強盗は、いずれも他人の財物を不法に奪う行為ですが、暴行・脅迫の有無という点で異なります。

窃盗罪は、常習犯や高額の窃盗事件でなければ罰金や執行猶予が見込まれる一方、強盗罪は重大犯罪として厳しく罰せられ、相手に負傷・死亡の結果が発生した場合には裁判員裁判の対象にもなり得るものです。

いずれの犯罪であっても、早期の法的対応が重要です。

もしも逮捕された、呼出しを受けたという場合には、速やかに弁護士等に相談することをおすすめします。

上原総合法律事務所は、元検事 8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

弁護士費用例【強盗事件を起こしたが前科を避けれれた】

着手金:55万円
成功報酬(不起訴・立件なし):66万円
日当(出張1回):3万3000円

※費用は一例です。弁護士費用は具体的な事案によって異なることがありますので、法律相談時にお尋ねください。

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