
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
みだらな行為とわいせつな行為について、その違いや刑事責任、逮捕の可能性などを、元検事の弁護士が詳しく説明します。
第1 みだらな行為とわいせつな行為の違いとは
マスメディアの報道等において「みだらな行為」「わいせつな行為」という言葉が使われているのをよく見聞きします。
1 わいせつな行為とは
「わいせつな行為」という言葉は、不同意わいせつ罪を定める刑法176条1項や監護者わいせつ罪を定める同法179条1項などで使われている文言です。
「わいせつな行為」とは、性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいうものとされており、例えば、以下のものなどが該当します。
・乳房をもむ
・陰部を手指で触る
・キス
こうした行為について、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」行えば不同意わいせつ罪として処罰されます(刑法176条1項、6月以上10年以下の懲役)。
また、「18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」行えば監護者わいせつ罪として処罰されます(同法179条1項、6月以上10年以下の懲役)。
なお、「性交等」もわいせつな行為に該当しますが、「性交等」を(同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて)した場合には、更に重い不同意性交等罪が成立します(無期又は3年以上の懲役)。
「性交等」とは、以下の全てをいうとされています(陰茎のみならず、指等の身体の一部や何らかの物を膣や肛門に挿入した場合も、「性交等」として(不同意わいせつ罪ではなく)不同意性交等罪により処罰されます)。
・膣性交(男性の陰茎を女性である被害者の膣内に挿入する行為)
・肛門性交(男性の陰茎を被害者(男女を問わない)の肛門に挿入する行為)
・口腔性交(男性の陰茎を被害者(男女を問わない)の口腔内(口の中)に挿入する行為)
・男女を問わず、陰茎以外の身体の一部(例えば指など)を、被害者(男女を問わない)の膣又は肛門に挿入する行為であってわいせつなもの
・男女を問わず、何らかの物を、被害者(男女を問わない)の膣又は肛門に挿入する行為であってわいせつなもの
2 みだらな行為とは
他方、「みだらな行為」という言葉は、マスメディア等により、各都道府県が定める青少年保護育成条例により禁じられている18歳未満の者(条例では「青少年」などとも記載されます。)との性的行為を指して使われることが多いようです。
例えば、東京都では、青少年の健全な育成に関する条例を定めて、「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。」とし(18条の6)、違反者に対して2年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科すこととしています(24条の3)。
こうした青少年保護育成条例における「みだらな行為」の意義については、昭和60年10月23日の最高裁判決において、青少年との「淫行」(「みだらな行為」と同義と言って差し支えないでしょう。)を禁じていた福岡県青少年保護育成条例に関し、
本条例10条1項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうものと解するのが相当である。
と判示されているところであり、他の都道府県の条例における同旨の定めについても同様に解されています。
また、「みだらな行為」という言葉が、マスメディア等により、児童買春を指して使われることもあるようです。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律は、児童や児童の保護者等に対して「対償を供与し、又はその供与の約束をして」「当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。)をすること」を「児童買春」と定義し(2条2項)、児童買春をした者に5年以下の懲役又は300万円以下の罰金を科すこととしています(4条)。
その他、児童福祉法34条1項6号は「児童に淫行をさせる行為」を禁じています(10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科)。
ここでの「淫行」は、児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又は性交類似行為をなすことをいう(その性交等の相手方が行為者自身である場合も含む)とされ、同法は、そのような「淫行」を、児童に事実上の影響力を及ぼして助長し促進する行為を禁じています。
第2 逮捕の可能性
これらの罪は、一般に、刑事事件化して捜査対象となった者が相手方(被害者)に働きかけたり危害を加えたりするおそれが大きい犯罪であると考えられており、逮捕される可能性が高い犯罪です。
第3 弁護活動
これらの罪を犯してしまった場合でも、起訴前に被害者と示談ができ、被害者が宥恕して(許して)処罰を求めないなどの意向となれば、検察官がこれを尊重して不起訴処分とする可能性が十分にあり、弁護人としては、被害者との示談成立に向けて交渉することが重要な活動の1つとなります。
第4 お気軽にご相談ください
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和7年1月31日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。