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執行猶予をつけてほしい

実刑判決と執行猶予付き判決の違い

そもそも、執行猶予とはどのような制度でしょうか。

執行猶予とは、被告人に懲役などの刑罰を言い渡す時に、その刑を執行するまでの猶予期間を与え、その期間中に他に罪を犯さないなどの条件を守れば、言い渡された刑が消滅され、刑務所に行かなくてもよくなる制度のことです。「懲役3年、執行猶予5年間」という刑が言い渡された場合、5年の間に他の罪を犯さなければ、本来刑務所に行くべきだった懲役3年という刑がなくなるということです。

執行猶予付きの判決が言い渡された場合は、その日のうちに釈放となり自宅に帰ることができます。前科はつきますが、通常の生活に戻ることができます。

平成28年から、刑の一部執行猶予という制度が始まりました。

懲役刑の言渡しは「実刑判決」「全部執行猶予付き判決」「一部執行猶予付き判決」に分けられます。

それぞれ詳しく説明します。

実刑判決

実刑判決が言い渡され、裁判が確定した場合、刑務所に入ることになります。保釈中の人が実刑判決を言い渡されると、保釈の効力は判決の言渡しとともに効力を失うため、その場で身体を拘束され、その日から拘置所や刑務所に入ることになります。

実刑判決が確定して刑務所に入った後、通常は言い渡された刑の期間が過ぎるまで刑務所にいることになりますが、一定の条件を満たすと「仮釈放」という制度で刑務所から出ることができます。仮釈放期間中には様々な遵守事項があり、これらを破ってしまうと仮釈放が取り消されて再度刑務所に入ることになるので注意が必要です。

令和元年では、出所した受刑者のうち約58%(約1万1600人)が仮釈放で出所しています(令和2年版犯罪白書より。以下同じ)。

その一方で、刑務所に新たに入所した受刑者のうち約2.3%(約400名)が仮釈放の取消しを理由に再度受刑をしています。

全部執行猶予付き判決

全部執行猶予は、以下の条件を満たしている場合に言い渡すことができます。

「以前に禁錮以上の刑に処せられたことがない」若しくは「以前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行が終了した日又は免除(執行猶予等)を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」場合であって、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の言渡しを受けた場合、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の執行を猶予することができます。

また、「以前に禁錮以上の刑に処せられその刑について執行猶予中であっても、1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきことがある」場合にも、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の執行を猶予することができます。

令和元年に言い渡された裁判では、懲役判決のうち約61%、禁錮判決のうち約98%が全部執行猶予の判決が言い渡されています。

全部執行猶予には、保護観察付きの執行猶予と保護観察が付いていない執行猶予の2種類があります。保護観察は、執行猶予期間中に保護観察所の職員による指導を受けたり、公共の場所での環境美化活動などの社会貢献活動を行うなど、更生や再犯防止を目的としています。遵守事項と言われるルールを課され、ルールを守らない場合は執行猶予が取り消される場合があります。

また、執行猶予期間中に再び罪を犯して実刑判決が言い渡された場合なども執行猶予が取り消され、刑務所に行くことになるため、執行猶予期間中は再度刑事事件の被告人にならないよう注意が必要です。

令和元年に起訴された人のうち、全部執行猶予期間中であった者が約13.4%、一部執行猶予期間中であった者が約0.7%と、全体の14%が執行猶予期間中に再犯をし、起訴されています。

執行猶予の取消しについては、「執行猶予が取り消される場合」で詳しく述べますのでそちらをご覧ください。

一部執行猶予判決

一部執行猶予とは、どのような制度でしょうか。

例えば「懲役2年、うち懲役6月につき2年間執行猶予」というような判決が言い渡されます。

この場合、懲役2年のうち1年6月は刑務所に入り、残りの6月については社会に出て2年間罪を犯すことなく過ごしたら刑務所に入る必要はない、ということになります。

一部執行猶予は、以下の条件を全て満たした場合に言い渡すことができます。

すなわち、①「以前に禁錮以上の刑に処せられたことがない」、「以前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、全部執行猶予であったこと」若しくは「以前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行が終了した日又は免除(執行猶予等)を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」場合であって、②3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合で、③犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再犯を防ぐために必要であり、かつ相当であると認められる時、に一部執行猶予を言い渡すことができます。

一部執行猶予を言い渡す場合、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができます。

また、上記の条件に当てはまらない場合でも、①薬物の使用や所持を犯した人が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合で、かつ、②犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、「刑務所における処遇に引き続いて、社会においても規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが」再犯を防ぐために必要であり、かつ相当であると認められる時、刑の一部の執行を猶予することができます。

この場合も、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができます。ただし、この場合、保護観察は必ず言い渡され、定期的に保護観察所の職員と面談をすることや、薬物の依存改善に対する処置と併せて公共の場所の美化活動などの社会貢献活動など、遵守事項が課されます。

令和元年に言い渡された裁判では、懲役判決のうち約3%が一部執行猶予の判決が言い渡されています。

執行猶予を獲得することによるメリット

執行猶予を獲得することによる最大のメリットは、実刑を免れることができること、つまり、刑務所に行かなくて済むということです。

執行猶予期間に罪を犯すなどした場合、執行猶予が取り消されることがあるため、執行猶予期間中は今まで以上に慎重に生活をする必要がありますが、執行猶予期間が満了したら言い渡された懲役刑は消滅し、この件で刑務所に行くことはなくなります。

刑務所に入ることなく日常生活に戻ることができるというのは何にも代えがたいものだと思います。

執行猶予によるデメリット

①前科がつく

執行猶予が満了した場合、懲役刑の刑は消滅しますが、「執行猶予判決を言い渡された」という事実は消えません。

日常生活であまり支障はありませんが、就職活動の際に「刑罰を受けたことがあるか」と聞かれた際に答える必要がありますし、学生の場合、退学処分の理由に該当するとして退学させられることもあります。

②資格免許などが取得できなくなる

医師や税理士などの免許、外国へ渡航するためのビザなど、執行猶予期間中である人は取得できなかったり行えないことがあります。

しかし、これらは執行猶予期間が終了したり、執行猶予期間が終了して一定期間が経つと、免許の取得やビザの取得を行えるものがあります。

詳細は、以下で述べます。

執行猶予期間が過ぎたら行えること

資格免許の取得

医師や税理士、公務員などの職業に就いている方やなろうとしている方が執行猶予の判決を受けた場合、それぞれ免許を失ったり、免許の取得できなくなったりする場合があります。

ただし、執行猶予期間が過ぎている場合は欠格事由とならず、免許を取得することが可能となる資格がほとんどです。そのため、執行猶予期間を少しでも短くするよう弁護活動を行ったり、欠格事由に該当しないよう、罰金や不起訴などより軽い刑を目指す弁護活動を早期に行うことをおすすめします。

詳しくは、医師については「医師や医学生が逮捕されたら」を、税理士については「税理士が逮捕されたら」を、公務員については「公務員が逮捕されたら」を、宅建士については「宅建士が逮捕されたら」を、教員については「教員が逮捕されたら」をそれぞれご覧ください。

犯罪経歴証明書の取得

様々な国のビザの取得の際に、「犯罪経歴証明書」というものの提出を求められることがあります。無犯罪証明書や渡航証明書などと呼ばれることもあります。

この証明書は、警察に申請をして発行してもらうこととなりますが、犯罪経歴証明書に犯罪経歴が記載されていた場合、ビザが発行されない場合があります。

ここで言う犯罪経歴は、禁錮以上の実刑、執行猶予、罰金の刑に処せられたことを言い、執行猶予中の人が犯罪経歴証明書を取得すると、「犯罪経歴あり」という証明書が発行されることになります。

この犯罪経歴は、「3 執行猶予によるデメリット」に記載した前科と考え方が異なっており、

・刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき

・禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過しているとき

・罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき

には、犯罪経歴がないものとみなされます(警察庁通達抜粋)。

実刑判決や罰金刑を受けた場合、刑の執行が終わってから一定期間は犯罪経歴として残りますが、執行猶予の場合、執行猶予期間が過ぎた時点で犯罪経歴がないものとみなされ、すぐに犯罪経歴のない証明書を取得することができます。

執行猶予を獲得するためにやるべきこと

起訴された人が執行猶予を獲得するためには、裁判官に対して、刑務所に行く必要まではなく、社会内でも罪を犯すことなく更生できる、と思わせる必要があります。

裁判官が刑を決める時は、まず、犯した罪の重さについて判断します。

この時に、被害者と示談をして許してもらえているかどうかが大切になります。被害者がいる事件の場合、弁護士を通じて被害者との示談交渉を成立させ、被害者に嘆願書や示談書を書いてもらうなどし、それを証拠として裁判所に提出します。示談により事後的に被害を回復し、犯した罪を軽くするのです。

犯した罪の重さの次に、その人が再犯をしないかということが大きな考慮要素となります。なぜ罪を犯したのか、反省しているのか、更生の環境はあるのかといったことが考慮されます。そのため、なぜ自分が罪を犯したのかを振り返って突き詰めて考える必要がありますし、反省も深める必要があります。また、家族や医師などに協力を要請するなど、生活を監督してくれる人や更生の環境も整える必要があります。

被害者と示談交渉を行ったり、自身の行った犯罪に対して反省を深めたり、更生の環境を整えたりといったことを、起訴されてから自分でやったのでは裁判に間に合いません。起訴される前から弁護士に相談し、起訴されないように弁護活動をしつつ、起訴された場合に備えて準備を進めるべきです。

特に、示談交渉は事件発生から早ければ早いほど成立する可能性が高くなります。事件を起こしてしまったらなるべく早く対策をし、出来るだけ有利に物事を進めるため早期に弁護士に相談することが重要です。

示談に関しては、詳しくは「示談を成立させたい」をご覧ください。

執行猶予が取り消される場合

執行猶予は、大きく分けて①必要的取消②裁量的取消の2つの理由から取り消されます。

全部執行猶予の場合と一部執行猶予の場合で多少異なるため、ここでは、全部執行猶予について詳しく説明します。

必要的取消

 以下の3つのいずれかに当てはまる時、執行猶予は必ず取り消されます。

・執行猶予期間中に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき

・執行猶予判決の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき

・執行猶予判決の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき

執行猶予期間中に罪を犯した場合、その罪について高い確率で実刑判決を言い渡されることとなります。「5 執行猶予を獲得するためにやるべきこと」で述べたとおり、裁判官が刑を決めるにあたって、再犯をしないかどうかが重要となりますが、執行猶予期間中の再犯であるため、「もう二度と犯罪はしません。」と言っても信じてもらえないであろうことは想像できると思います。

窃盗癖(クレプトマニア)や薬物の使用の場合など、依存性の高い事件で執行猶予が言い渡されている場合、再犯に注意が必要です。これらの依存症については、執行猶予期間中に病院に通院するなど、依存脱却のための治療を行うことが有効です。

クレプトマニアについては、詳しくは「クレプトマニア(窃盗癖)とは」をご覧ください。

裁量的取消

 以下の3つのいずれかに当てはまる時、執行猶予が取り消されることがあります。

・執行猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき

・保護観察に付された者が遵守すべき事項を守らず、その情状が重いとき

・執行猶予判決の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき

裁量的取消は、検察官が執行猶予を取り消す必要があると判断した場合に、裁判所に執行猶予の取消しを請求することになります。執行猶予の取消しは、執行猶予期間内であればいつでも行うことができるため、執行猶予の期間が長い方は注意が必要です。

令和元年では、執行猶予を言い渡された者のうち、約12%が再犯や遵守事項違反で執行猶予が取り消されています。

執行猶予が取り消された場合、元々言い渡されていた懲役刑の年数分刑務所に行くことになりますし、再犯が理由で執行猶予が取り消された場合は、執行猶予時に言い渡された懲役刑の年数と再犯で言い渡された懲役刑の年数を合計した期間刑務所に入ることになります。

例:懲役3年執行猶予5年が言い渡されていた場合で、再犯が懲役1年6月の実刑判決で執行猶予が取り消された場合

  →懲役3年+懲役1年6月=懲役4年6月の間、刑務所に行くことになります。

ご相談は上原総合法律事務所へ

上原総合法律事務所では、元検事(いわゆる「ヤメ検」)の弁護士が多数在籍しており、執行猶予を獲得した事案も多数ございます。

それぞれの事案や状況に即して、示談交渉や執行猶予の獲得・減刑など迅速かつ的確な弁護活動や、刑事事件に伴う困りごとへのアドバイスも行っています。

起訴されてしまうのではないか、執行猶予がつくのだろうか等の不安な気持ちを抱えている方は、お気軽にご相談ください。

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