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捜査段階において、検察官は
・その事件を起訴するのかどうか
・起訴するとして罰金で良いのか、懲役刑や禁固刑が必要なのか
といった点を考えます。
そして、罰金で良いと考える場合には、ほとんどの場合、略式手続(略式命令請求、略式起訴)を選択します。
略式手続とは、事案が明白で簡易な事件について、書面による審査を求める起訴手続のことです。
この場合、逮捕されていた被疑者は、裁判官の略式命令のある日に釈放されますが、罰金前科がつくことになります。
略式手続の対象となるのは、簡易裁判所の管轄に属する事件で、100万円以下の罰金又は科料を科し得る事件(刑訴法461条)です。
罰金を科し得ない殺人罪(死刑又は無期若しくは5年以上の懲役)、不同意性交等(5年以上の有期拘禁刑)、詐欺罪(10年以下の懲役)などは略式手続の対象とはなりません。
また、略式手続によること(罰金前科がつく)について、被疑者に異議がないこと(刑訴法461条の2)が必要であるため、否認している場合も対象となりません。
対して、検察官が公判請求(いわゆる正式裁判にすること)をする場合、検察官はその事件が懲役刑や禁固刑になるべきだと考えています。
公判請求とは、検察官が裁判所に公開の法廷での裁判を求めるものです。ドラマやニュースなどで、よく見る裁判です。
裁判は、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続、判決宣告という流れで行われます。
詳しい刑事裁判の流れについては、以下の動画をご参照ください。
公判請求される場合、検察官はその事件が懲役刑や禁固刑になるべきだと考えているということですので、多くの場合、公判請求されたら、執行猶予を得ることが弁護活動上の目標となります。
以下では、執行猶予を得るための考え方や裁判の準備について説明します。
※実刑自体は避けられないため実刑の年数を減らすことが目標となる場合や、罰金が目標となることもあります。また、無実の場合には無罪が目標になります。
また今回、執行猶予を得るためにすべきことについて7分ほどの動画を作成しました。
このページの内容をより詳しくご理解いただけると思いますので、是非ご覧ください。
執行猶予をつけるかどうかは、裁判官が決めます。
執行猶予とは、刑事裁判で有罪判決をする場合に、いきなり刑務所行きにせずに一定期間待ち、その間に新しく罪を犯さなければ刑務所に行かなくてよくする、という制度です。
執行猶予を得るためには、裁判官がどのようなことを考慮して刑の重さを決めるのか(量刑)を知る必要があります。
裁判官は以下のことを考慮していると考えられます。
(1)動機・犯行に至る経緯・計画性
すべての事件には、犯行に至る流れがあります。
魔がさして突発的にやってしまった事案もあれば、綿密に練られた計画に基づく組織的詐欺事案もあります。
また、怖い人に脅されて断りきれずに行ってしまった事案や被害者側にも落ち度がある事案も少なくありません。
被告人が犯行を思い止まる余地が少なければ、情状酌量の余地があるものと考えられます。
(2)犯行態様
例えば暴力事案であれば、被害者が抵抗できなくなっているのに殴り続けるなどの執拗な犯行、鋭利なナイフを使った危険な犯行、激情に駆られて殴ってしまったけれどもすぐに冷静になってそれ以上手を出さなかった事案など、様々な犯行態様があります。
また、わいせつ事案であれば、服の上から触ったのか、下着の中まで手を入れて触ったのか、触っていた時間はどれくらいだったのか、などの様々な犯行態様があります。
態様が軽いほど罪が軽いと言えます。
(3)結果
被害者の怪我の程度、被害金額、汚職事件における公務の信頼喪失、などが事件の結果になります。
被害者のいる犯罪については、被害弁償をすることで事後的に犯罪の結果を少しでも軽くすることができると考えられます。
(4)再犯防止(環境面)
被告人がもう二度と犯罪をしないための環境が整っていることは、重要な情状になります。
ご家族や職場の方が「裁判後も被告人を監督し支えていくことで再犯を防ぐことができる」と言えれば良い情状になります。
また、犯行が被告人の精神的問題に基づいている場合には、裁判をしている段階から治療を受け、裁判後も治療を受けられる環境を整えておくことが良い情状となります。
(5)再犯防止(本人)
再犯を防ぐためには被告人が事件や自分自身としっかり向き合って反省を深める必要があります。
反省の深まりを裁判官に理解してもらえれば、良い情状となります。
(6)その他情状
その他にも、被告人のそれまでの社会貢献や、実刑にすることによる家庭や社会への影響など、様々な事情が情状として考慮され得ます。
執行猶予を得るためには、被告人が行った犯行について、真実よりも悪く見えてしまうことを防ぐ必要があります。
捜査の過程においては、様々な理由から、被告人に有利な証拠が発見されなかったり、真実に基づいていない被告人に不利な証拠が作られてしまったりします。
そのため、このようなことがないよう、以下の点に注意する必要があります。
(1)供述関係(特に捜査段階)
取調べにおいては、被疑者が話したことを捜査機関が書面にまとめ、被疑者が内容を確認して署名します。
この書面を供述調書といいます。
供述調書に署名をすれば、被疑者がそこに書かれている内容の話をしたという証拠になります。
ですが、ここには間違いが入り込む危険性があります。
まず、取調べにおいて被疑者が正確に言葉で真実を伝えられるとは限りません。
次に、被疑者が話したことを捜査機関が誤解する可能性があります。
さらに、捜査機関が認識している内容を文章にして表現するときに正確に記載できるとは限りません。
加えて、被疑者が内容を確認したときに間違いに気がつけるとは限りません。
そのため、供述調書には真実が記載されない危険性が潜んでいます。
これを避けるため、弁護人が接見して依頼者とよく話し合い、取調べの準備をするとともに、作成される供述調書の内容を想定し、誤りが記載されると特に問題となり得る点をアドバイスしておく必要があります。
(2)証拠関係
捜査機関にとって必要がなければ、捜査機関が収集せずに証拠が残っていることがあります。
そのような証拠については、急いで弁護側で確保する必要があります。
例えば防犯カメラ映像が保存期間切れでなくなってしまうように、証拠は時間とともになくなってしまいます。
依頼者にとって有利な証拠も不利な証拠もありますが、いずれもなくなってしまう前に弁護士が収集します。
被害者のいる事件については、被害者に謝罪や被害弁償し、お許しをいただくことがとても有効な弁護活動となります。
被告人が謝罪や被害弁償をし、被害者が許す、ということを中心とする合意を示談といいます。
示談交渉は、弁護人が被告人の代わりに被害者に連絡を取って行います。
なお、被害が重ければ重いほど、被害者は示談に応じなくなります。
しかし、一度示談ができなかったからといって諦めるべきではなく、時間をあけて再度被害者にご連絡すべきです。
はじめにお断りされた時点では示談することができない状況にあっても、時間が経てば被害者にとっても示談をすることが最適になっていることがあります。
被害者側の状況を推し量りながら、適切なタイミングで話し合いをお願いし続けるべきです。
実際に、上原総合法律事務所では、多くの事案で、話し合いを繰り返して被害者側のご理解をいただいて示談しています。
また、仮に被害弁償や示談ができなくても、謝罪や被害弁償の申し出をしていること自体が誠意の表れとして有利な情状になり得ます。
(1)再犯防止(環境面)
まず、家族や職場の方に再犯防止体制構築の必要性を理解していただきます。
その上で、被告人と家族や職場の方が向き合ってしっかりと事件や人生について話し合い、事件の原因を探るとともにどうやって再犯を防ぐかを話し合っていただきます。
必要に応じ、弁護士もこの話し合いに参加し、対話の円滑化を図ります。
また、犯行が被告人の精神的問題に基づいている場合、適切な治療を受けられる環境を整えることも大切です。
この場合、まず、長期間にわたる継続的な治療がなされなければいけないということを被告人本人や家族が認識する必要があります(自分や家族が病気だということを認める事は簡単ではなく、この部分が治療環境構築の上では大きな問題となることが多いです。)。
その上で、適切な病院を受診し、ご本人・病院・家族らの周辺の方、という協力関係を築いていく必要があります。
上原総合法律事務所においては、適切な病院をご紹介したり、ご本人が病院に通い続けるためのサポートなどをします。
(2)再犯防止(本人)
被告人本人が反省している事は、とても重要な情状です。
では、「反省」とは何でしょうか。
弁護士上原幹男は、刑事事件における反省とは、事件と正面から向き合って考え続けることではないかと考えています。
そして、反省は考え続けることで時間をかけて深めていくものであり、すぐにできるものではないと考えています。
事件を犯してすぐのうちに「深く反省しています」と言う方がたくさんいます。
ですが、深く反省していると言うだけで具体的な反省内容を話せない状況では、反省が深まっているとは言い難いと考えます。
自分の犯した事件について正面から向き合って考えていくと、誰に言われなくても、
「なぜ自分が事件を起こしてしまったのか」
「どうやったら事件を防げたのか」
「自分のどのようなところが悪いのか」
「事件を起こしてしまったことについてどう思っているのか」
「今後どうすれば事件を防げるのか」
「被害者に対してどう思っているか」
「家族や職場の方に対してどう思っているか」
「今後どのように生きていきたいのか」
などのたくさんの言葉が生まれます。
そして、このような言葉にさらに自問自答を繰り返し、反省が深まっていきます。
このような反省を深めるためには、家族や職場の方との対話がきっかけになることもあります。
また、刑事事件の経験豊富な弁護士が依頼者と対話をすることで、反省を深めるきっかけとなることもあります。
上原総合法律事務所の弁護士は、必要に応じ、依頼者の反省を深めるきっかけを作るべく対話をします。
その他の情状については、ケースバイケースです。
多くの事件では、その事件特有の事情や、被告人特有の事情などがあります。
そのような事情を弁護人が探し出し、適切に裁判に反映させる必要があります。
以上説明してきた裁判の準備は、短時間でできるものではありません。
弁護士は、依頼者と話し合いを重ね、事務所内で同僚の弁護士と議論をし、足を使って証拠収集し、最善の弁護活動の準備をします。
裁判においては、いかに適切な準備をしたかで結果の大半が決まると考えられます。
上原総合法律事務所では、依頼者が裁判という危機を乗り越えて前に進んでいくことができるようにするため、元検察官の弁護士が活発な議論と協力をしながら弁護活動をしています。
執行猶予を得るためのフルサポートを得たい方は、お気軽にご相談ください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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