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パート社員の雇用契約書|法律や注意点などを元検事の弁護士が解説

上原総合法律事務所では、顧問先企業などから、雇用契約書に関するご相談をいただきます。

パート社員(パートタイム労働者)を雇用する際にも、正社員と同様に雇用契約書を締結することが望ましいです。労働基準法その他の法令のルールを踏まえて、適切な内容・形式により雇用契約書を締結する必要があります。

本記事ではパート社員(パートタイム労働者)の雇用契約書について、法律のルールや注意点などを解説します。

1. パート社員(パートタイム労働者)とは

パート社員(パートタイム労働者)とは、正社員に比べて労働時間が短い労働者をいいます。

パートタイム・有期雇用労働法※では、1週間の所定労働時間が通常の労働者(正社員)よりも短い労働者を「短時間労働者」と定義し、待遇面に関する保護を行っています。
※正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・アルバイトなどの呼称にかかわらず、通常の労働者(正社員)よりも1週間の所定労働時間が短ければ、短時間労働者としてパートタイム・有期雇用労働法が適用されます。

2. パート社員の雇用に関する書類|労働条件通知書・雇用契約書

パート社員を雇用する際に、会社とパート社員の間で取り交わされる主な書類は、「労働条件通知書」と「雇用契約書」の2種類です。

2-1. 労働条件通知書とは

「労働条件通知書」とは、会社が労働者に対して、労働条件を明示するために交付する書面です。

会社は労働者を雇い入れる際、以下の事項を記載した労働条件通知書を交付することが義務付けられています(労働基準法15条1項、同法施行規則5条1項、パートタイム有期雇用労働法6条1項、同法施行規則2条1項。ただし⑦~⑭については、定めがない場合は不要)。

<すべての労働者に対して明示すべき事項>

  1. ①労働契約の期間に関する事項
  2. ②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. ③就業の場所および従事すべき業務に関する事項
  4. ④始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  5. ⑤賃金(退職手当および⑧の賃金を除く)の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期ならびに昇給に関する事項
  6. ⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  7. ⑦退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法ならびに退職手当の支払の時期に関する事項
  8. ⑧臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与等および最低賃金額に関する事項
  9. ⑨労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  10. ⑩安全および衛生に関する事項
  11. ⑪職業訓練に関する事項
  12. ⑫災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
  13. ⑬表彰および制裁に関する事項
  14. ⑭休職に関する事項

<短時間労働者に対して明示すべき事項>

  1. ①昇給の有無
  2. ②退職手当の有無
  3. ③賞与の有無
  4. ④短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

労働条件通知書は、労働者が希望する場合に限り、ファクシミリや電子メールによって送信・交付することも可能です(労働基準法施行規則5条4項)。

2-2. 雇用契約書とは

「雇用契約書」とは、会社と労働者の間の雇用関係に関して締結される契約書です。

雇用契約書には、労働条件通知書に記載すべき事項のほか、労働条件の詳細やトラブル発生時の処理方法などが定められます。

2-3. 労働条件通知書と雇用契約書の違い

労働条件通知書は、会社が労働者に対して一方的に交付する文書です。これに対して雇用契約書は、会社と労働者が共同で作成・締結する文書です。

労働条件通知書の交付は会社に義務付けられていますが、雇用契約書の締結は法律上必須ではありません。しかし、労働条件についての合意内容を明確化するためには、雇用契約書を締結することが望ましいでしょう。

3. パート社員と締結する雇用契約書に関する注意点

会社がパート社員と雇用契約書を締結する際には、特に以下の事項に注意した上で労働条件等を決定しましょう。

  1. ①無期雇用契約と有期雇用契約の選択
  2. ②パート社員の労働時間
  3. ③パート社員の待遇の最低ライン
  4. ④同一労働同一賃金
  5. ⑤パート社員の社会保険加入義務

3-1. 無期雇用契約と有期雇用契約の選択

雇用契約には、期間の定めがない「無期雇用契約」と、期間の定めがある「有期雇用契約」の2種類があります。

無期雇用契約は、期間満了によって終了することがなく、解雇の要件を満たさなければ会社が一方的に契約を終了させることはできません。
これに対して有期雇用契約の場合は、原則として期間満了時に、会社の判断で契約を終了させることができます(=雇止め)。

パート社員とは有期雇用契約を締結するケースが多いですが、雇用の目的に応じて、雇用契約の種類を選択しましょう。

なお、有期雇用労働者の雇止めは必ず認められるわけではなく、「無期転換ルール」(労働契約法18条)や「雇止め法理」(同法19条)によって制限される場合がある点に注意が必要です。
実際に雇止めを行う際には、厚生労働省が公表している雇止め基準を参考にして、トラブルの防止に努めることが望ましいです。

参考:
有期雇用契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(厚生労働省告示第357号)|厚生労働省

3-2. パート社員の労働時間

正社員とは異なり、パート社員の労働時間は、個々の労働者ごとに定めることが多いです。

始業・終業・休憩時刻などを、雇用契約書に明記しておきましょう。また、シフト制を採用する場合には、シフトの決定方法や最低ラインなども雇用契約書に定めましょう。

3-3. パート社員の待遇の最低ライン

パート社員の待遇については、就業規則に定める基準以上とする必要があります。就業規則に達しない労働条件を雇用契約書において定めても、その労働条件は無効となり、就業規則の基準が適用される点に注意が必要です(労働契約法12条)。

また、パート社員の賃金は、最低賃金以上の金額としなければなりません。都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、都道府県および業種ごとに定められた「特定最低賃金」のうち、いずれか高い方が適用されます。

参考:
地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

参考:
特定最低賃金の全国一覧|厚生労働省

地域別最低賃金は、毎年10月をめどに改定されます。特に近年では、地域別最低賃金が大幅に引き上げられる傾向が続いているので、パート社員の賃金についても定期的に見直しを行いましょう。

3-4. 同一労働同一賃金

パート社員の待遇を、正社員に比べて不合理に低く設定した場合は、「同一労働同一賃金」(パートタイム・有期雇用労働法8条、9条)に違反して違法となります。

実際には、パート社員は正社員の補助的な業務を担うことが多いでしょう。この場合、業務内容・責任・配置転換の範囲等の観点から、正社員とパート社員の間で待遇差を設けることは認められます。

これに対して、パート社員が正社員とほぼ同様の働きをしているにもかかわらず、「パートだから」という理由だけで待遇を低く抑えることは、同一労働同一賃金違反となるので注意が必要です。

3-5. パート社員の社会保険加入義務

「特定適用事業所」または「任意特定適用事業所」においては、一定の要件を満たすパート社員を社会保険に加入させる必要があります。

  1. ①特定適用事業所
    短時間労働者を除く被保険者の総数が、常時100人を超える(=101人以上の)事業所
  2. ②任意特定適用事業所
    特定適用事業所以外の事業所であって、労使合意に基づき、短時間労働者を社会保険の適用対象とする旨を申し出たもの

<社会保険加入義務の要件>

  • ・1週間の所定労働時間が20時間以上あること
  • ・見込まれる雇用期間が2か月を超えること
  • ・月額賃金が8.8万円以上であること
  • ・学生でないこと

なお、2024年10月1日以降は、短時間労働者を除く被保険者の総数が常時50人を超える(=51人以上の)事業所が「特定適用事業所」となり、新たにパート社員を社会保険に加入させる義務の対象となる点にご留意ください。

4. まとめ

契約書は、適切に作成することでトラブルを予防するとともに、揉め事が起きそうになった時に会社を守る役割を果たします。会社がパート社員を雇用する際には、不備のない雇用契約書を取り交わし、トラブルを未然に防ぐ必要があります。

上原総合法律事務所では、労働問題に詳しい弁護士が、企業からのご相談をお受けしています。必要な契約形態のご相談をお受けすることもできますし、ご想定の労働条件を適切に反映し、実態に合わせた雇用契約書の作成やリーガルチェックを行います。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。

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