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盗撮で後日逮捕される可能性について

公開日:2024年10月23日

本稿では、盗撮行為を行ってしまったご相談者様やそのご家族様向けに、盗撮行為で後日逮捕されてしまう可能性の有無、逮捕されてしまう可能性のあるケース、盗撮行為で逮捕されてしまった後の手続の流れ、逮捕されないようにするための弁護活動などについてご説明します。

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1 盗撮で後日逮捕される可能性は

令和5年7月13日より「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」といいます。)が施行されました。

この性的姿態撮影等処罰法においては、性的姿態等の撮影、具体的には、性的な部位、身に着けている下着、わいせつな行為・性交等がされている間における人の姿を撮影することが禁止されています(性的姿態等撮影罪)。

この性的姿態等撮影罪では、法定刑が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金とされており、刑事訴訟法の規定によれば、その公訴時効は3年ということになります(刑事訴訟法250条2項6号)。

また、性的姿態撮影等処罰法においては、性的姿態等の画像(以下「性的映像記録」といいます。)を提供・陳列することも禁止されています(性的映像記録提供等罪)。

この性的映像記録提供等罪では、的映像記録を特定・少数の者に提供した場合には、法定刑が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金性的映像記録を不特定・多数の者に提供又は公然と陳列した場合には、法定刑が5年以下の懲役又は500万円以下の罰金とされており、刑事訴訟法の規定によれば、その前者の公訴時効は3年、後者の公訴時効は5年ということになります(刑事訴訟法250条2項5号6号)。

このように盗撮行為については、従来よりも厳罰化がされており、性的姿態撮影罪では行為から3年間、性的映像記録提供等罪では提供・陳列行為のときから5年間は公訴時効にかからないということになります。

そのため、公訴時効が完成するまでの期間については、法律上、起訴される可能性があることから、逮捕される可能性も完全には否定できないということになります。

性的姿態撮影等処罰法違反について詳しくはこちらの記事をご覧ください

2 逮捕される可能性のあるケースとは

駅や商業施設のエスカレーターや階段でスカート内をスマートフォンで盗撮するという類型の場合には、盗撮行為に気づいた被害者や目撃者が被疑者を取り押さえた上、駅の係員や商業施設の警備員を呼んで、通報により駆け付けた警察官が被疑者を現行犯逮捕するというのが一般的です。

しかし、盗撮行為に気づいた被害者や目撃者が、その場では被疑者を取り押さえることはせずに、駅の係員室や商業施設の管理センターや交番に駆け込むなどして被害を訴え出ることにより、警察が盗撮行為を認知する場合もあります。

そのような場合には、警察は、被害者や目撃者の供述を基に、駅や商業施設の階段やエスカレーターに設置されている防犯カメラ画像を解析し、被害者や目撃者が映りこんでいる画像から犯人を特定することができます。

引き続き、警察は、改札やレジなど複数の防犯カメラを確認することで、その犯人が使用した交通系ICカードやクレジットカード等を割り出し、犯人が誰であるかを特定することもできます。

その上で、警察は、逮捕状の発付を受けた上で、後日、盗撮の被疑者として犯人を逮捕するということがありえます。

また、盗撮した画像を第三者に送信してしまったような場合には、その第三者が性的姿態撮影等処罰法違反に限らず何らかの刑事事件の被疑者として立件されてしまえば、その第三者のスマートフォンやパソコン等の解析結果から、その第三者にメールやSNSを通じて盗撮画像を送信したことが発覚して、性的映像記録提供等罪の被疑者として逮捕されるパターンも想定されます。

さらに、盗撮行為ではなく自身が他の犯罪行為(例えば、傷害・窃盗・横領・酒気帯び運転など)で立件されてしまった場合にも、自らのスマートフォンを押収・分析されることになりますから、その過程で盗撮画像の存在が明らかになれば、更に余罪として性的姿態等撮影罪で逮捕されるパターンも想定されます。

このように盗撮行為で逮捕されるパターンは、何も現行犯逮捕に限られるものではありません

3 逮捕された後の流れ

⑴ 逮捕から検察官送致まで

性的姿態撮影等処罰法違反で逮捕された場合には、通常、逮捕から48時間以内に検察官に送致されることになります(身柄付き送致)。

メディアは、警察からの被疑者逮捕の報道発表を受けて、被疑者の検察官送致のタイミングで警察署に集まり、被疑者が警察署から検察庁に向かう車両に乗り込むときにその容姿を撮影し、その映像を被疑者の実名とともに報道することがあります。

なお、令和5年版犯罪白書*によれば、従前、盗撮行為や痴漢行為等の処罰根拠とされてきた地方公共団体条例違反(令和4年分)について、警察等で逮捕した後に身柄付き送致を行った件数が3628件であるのに対して、警察等で逮捕後釈放した件数は435件とされており、一旦逮捕されてしまうと、送致前に釈放される割合が極めて少なくなっていることがわかります。

『令和5年版犯罪白書-非行少年と生育環境-』(法務省法務総合研究所編)参照(以下同じ)。

⑵ 検察官送致から勾留請求まで

被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、被疑者の取調べ(弁解録取)を行い、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれの有無・程度を考慮して、送致から24時間以内に勾留請求を行うかどうかを決めます。

なお、前述の令和5年版犯罪白書によれば、従前、盗撮行為や痴漢行為等の処罰根拠とされてきた地方公共団体条例違反(令和4年分)について、身柄付き送致を受けた被疑者のうち76.9%が勾留請求されており、身柄付き送致がなされた場合の勾留請求の割合も大きくなっていることがわかります。

⑶ 勾留請求から勾留決定まで

検察官が勾留請求を行うと、裁判官は、裁判所において、被疑者に対する勾留質問という手続を行い、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれの有無・程度を考慮して、まずは10日間の勾留を行うかどうかを決定します。

なお、前述の令和5年版犯罪白書によれば、従前、盗撮行為や痴漢行為等の処罰根拠とされてきた地方公共団体条例違反(令和4年分)について、勾留請求された被疑者のうち約79.3%が勾留請求を認容する決定(勾留決定)を受けており、ここでも実際に勾留される割合が大きくなっていることがわかります。

⑷ 勾留決定から勾留延長まで

裁判官が勾留決定を行うと、捜査機関(警察・検察)は、その10日間のうちに必要な捜査を行いますが、10日間で足りない場合には、更に最大10日間の勾留の延長を請求することができます

盗撮行為の事案の場合には、逮捕時にスマートフォンやパソコン等を押収するのが通常であり、その解析のために勾留の延長が必要であるとされるリスクも大きいといえます。

勾留延長について詳しくはこちらの記事をご覧ください

⑸ 勾留延長から終局処分(起訴)まで

検察官は、最大20日間の勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴(処分保留)にするかを決めます

検察官は、被疑者を起訴する場合には、公判請求(公開の法廷での裁判の請求)をするか、略式命令請求をするかを決めます。

一般に、懲役刑を求刑する必要がある事案や被疑者が否認している事案の場合には公判請求を行い、被疑者が認めていて罰金刑の求刑でも足りる事案の場合に略式命令請求を行います。

公判請求をされると、被疑者勾留が自動的に2ヶ月間の被告人勾留に切り替わり、以後、1ヶ月ごとに勾留更新がされることになります(なお、被告人勾留からは保釈請求を行うことができるようになります)。

他方で、略式命令請求をされる場合には、検察庁で罰金を納めることによって、その場で釈放となり、その後に身柄を拘束されることはなくなります。

なお、検察官が不起訴処分とする場合には、まずは勾留満期日に「処分保留」で釈放した上で、後日、正式に不起訴処分を行うことが通例です(釈放と同時に不起訴処分を行うこともあります)。

略式起訴・前科について詳しくはこちらの記事をご覧ください

⑹ まとめ

以上のとおり、一度逮捕されてしまうと、身柄付き送致をされてしまい、勾留や勾留延長を請求されてしまうリスクがとても大きくなります

一度逮捕されてしまい、容姿とともに実名報道がされてしまえば、そのニュースがインターネット上にも残り続けることにもなりかねず、自身が仕事を失うおそれが大きくなるだけでなく、罪のない家族にも将来にわたってその悪影響が生じることにもなりかねません。

そのため、盗撮行為を行ってしまった場合には、まずもって逮捕を避けるための行動が必要です。

4 逮捕をさけるためには

⑴ 自首について

逮捕状や勾留状は、被疑者に罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがあるときに発付されるものです。

逆を言えば、警察において、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがない(あるいは小さい)と考えれば、被疑者を逮捕して捜査するのではなく、在宅事件として捜査を行えば足りるとの方針に至る可能性が高くなります。

つまり、逮捕をさけるためにするべきことは、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを警察にわかってもらうための弁護活動ということになります。

上原総合法律事務所は、逮捕をさけるための弁護活動の一環として、自首同行というプランをご提案しております

自首は、犯人が捜査機関に自発的に自己の犯罪事実を申告し、その訴追を含む処分を求めることをいうとされています(刑法42条)。

早期に自首をすることは、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを裏付ける事情になるため、逮捕や勾留のリスクを下げることにつながりますし、検察実務においても、起訴か不起訴か、あるいは公判請求か略式命令請求かを決める上でも、1つの重要な考慮事由となるものです。

それだけではなく、被疑者にとっても、いつか逮捕されるかもしれないという不安を抱えながら生活していくことは、精神的にも負担であり、仕事や勉学や家族関係に悪影響を与えかねません。

そのため、上原総合法律事務所では、過去の失敗を悔いて再出発をしようという決意を抱いているご相談者の方のために、逮捕のリスクを減らし、不安を少しでも和らげるために、自首同行というプランをご提案しております。

なお、自首をした際、警察によっては、被害届も出ておらず、そもそも被害者が誰であるかがわからない事案については、盗撮被害が確認できないために事件化を行わないという処理をする可能性もありますが、その場合であっても、警察に自首に赴いた事実を相談記録にとどめてもらうことで後日に逮捕されるリスクを大きく下げることができます。

自首について詳しくはこちらの記事をご覧ください

自首同行プランについて詳しくはこちらの記事をご覧ください

⑵ 再犯防止について

盗撮行為をしたいという欲求が芽生えたとしても、通常であれば、盗撮される被害者の心情に思いを致したり、盗撮行為が発覚した場合に自らや家族に降りかかる不利益の大きさを想像して、その欲求を行動に移すことを止めることができます。

盗撮行為に及ぶ際に、被害者がどう思うかをまったく考えなかったとか、逮捕されるとは思ってもいなかったとか、逮捕された際に自らや家族にどのような不利益が生じるかを考えもしなかったという状況に陥っている場合には、認知に深刻な歪みが生じている可能性が高いといえます。

他方で、盗撮行為に及ぶ際に、被害者がかわいそうだと思ったけど止められなかった、逮捕されるリスクがあることは分かっているけど、そのスリルを味わいたくて止められなかったという場合も、認知に歪みが生じている可能性が高いといえます。

盗撮行為や痴漢行為は、一度行ってしまうと、それが成功体験となり、再び成功体験を得るために、徐々に犯行頻度が増えていったり、犯行態様が大胆になったりする傾向があり、そのようになればなるほど犯行が発覚するリスクは大きくなっていきます

盗撮行為を行ってしまった場合には、罪悪感の残っているうちにその認知の歪みを矯正して二度と再犯に及ばないようにすることが肝要です

精神科・心療内科に通院して認知行動療法などの再犯防止策を既に講じていることを証拠化して捜査機関に提出することにより、逮捕や勾留の必要性がないことを説得的に主張できることにもなります。

上原総合法律事務所では、過去の失敗を悔いて再出発をしようという決意を抱いているご相談者の方のために、前述の自首同行プランの一環として、クリニック選びをはじめとして、ご相談者様の再犯防止の取組みのお手伝いもさせていただいております。

5 お気軽にご相談ください

上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年8月7日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

 

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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