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多くの刑事事件では、警察が一定の捜査を行った後、事件は検察庁に送致されます。
身柄事件(逮捕される事件)では身柄と併せて事件が送致されますが、逮捕されないいわゆる在宅事件の場合には、事件の記録が警察から検察庁に送られることにより、事件が送致されることとなります(いわゆる「書類送検」です。)。
その上で、検察官が各事件を起訴するか不起訴とするかなどを判断することとなりますが、これに当たっては検察庁でも一定の捜査を行うことが一般的であり、被疑者(いわゆる「容疑者」と同じです。)や目撃者等の取調べを行うために、取調べの対象者を検察庁に呼び出します。
ですので、呼び出しは基本的には取調べのためですし、取調べは起訴不起訴等を判断するために行うものであり、検察庁から呼び出されたからといって必ず起訴されると決まっているわけではなく、不起訴となる場合もありえます。
不起訴にも「起訴猶予」「嫌疑不十分」などのパターンがあり、その判断基準等の詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
また、呼び出されて起訴される場合にも、略式手続となり、裁判所に行くまでもなく罰金となるパターンもあります。
検察庁が呼び出しをするのは、基本的には取調べを行うためです。
例外として、押収している証拠品の処分についてなどで呼び出す場合もなくはないですが、そうであればその旨告げられることが多いかと思われます。
取調べのためとはいってもその内容は千差万別であり、被疑者として取調べを受ける場合のほか、目撃者や被害者もその対象となります。
また、被疑者ではなくあくまで「参考人」として呼び出されて取調べを受けるという場合であっても、検察庁としては共犯ではないかと疑っていたり、ゆくゆくは被疑者として立件しようと考えているという可能性も否定できません。
また、極めて例外的なパターンですが、呼び出されて検察庁に出向いたタイミングで逮捕されるという場合もあり、どのような理由・趣旨で呼び出されたのかは事件の内容と自分自身の立場を踏まえて慎重に判断する必要があります。
警察が捜査をしている間、被疑者として何度か取調べを受け、警察からは検察庁に事件を送致すると告げられたのに、数か月経っても検察庁からは何の連絡もない、という状況もあるかもしれません。
「もう事件は終わったのかな」と思いたくなるところですが、しばらく呼び出しがないからといって不起訴となったとは限りません。
前記のとおり、一般的な刑事事件では警察がまず捜査をした上、検察庁に事件を送致するのが原則です(例外的に送致すらしない場合もないわけではありません。※微罪処分等についてはこちらの記事をご参照ください。)。
そして、事件を起訴するのか不起訴にするのかを判断するのはあくまで検察であり、そのために検察官は送致された事件記録を精査し、被疑者や参考人を呼び出して取調べを行い、さらには警察に捜査の補充を依頼することもあります。
警察においても一定の捜査を行ってはいますが、捜査はそれで終わりではなく、検察への送致後も何らかの捜査がされることの方が多いですし、少なくとも検察官による被疑者の取調べは行うのが一般的です。
そして、参考人の取調べや補充捜査が必要な場合には、これらの捜査を行って証拠を得た上で被疑者を呼び出すことも多く、警察での最後の取調べから数か月、時にはそれ以上の期間が経ってから突然検察庁から呼び出される可能性もあるのです。
また、特段の補充捜査等が必要というわけではなくとも、事件記録が大量にあって精査に時間がかかる、担当検察官が多数の事件を抱えているなどの事情で被疑者の呼び出しまでに数か月かかってしまうという場合もあるのが実情であり、残念ながら、長期間呼び出しがないからといって不起訴となったのだろうと安心することはできません。
他方、ごくごく軽微な事案や、証拠上明らかに有罪とすることが難しい事案などは、改めて検察官による取調べをするまでもなく不起訴とする場合もありえます。
ただその場合にも、必ずしも被疑者本人に不起訴となった旨連絡が入るわけでもないため、安心のためには弁護士を通じて検察庁に確認するなどされるのが望ましいかもしれません。
検察庁による呼び出しの方法は電話か郵送によることが一般的です。
郵送の場合、検察庁の封筒で自宅に届くのが一般的であり、家族の目に触れる可能性は否定できません。
他方で電話の場合には、被疑者や参考人の携帯電話の番号が分かっていれば、まずはその番号に連絡するのが一般的かと思われます。
ただ携帯電話に繋がらない場合などは自宅等へも電話することもありますので、なるべく周囲に知られたくないといった場合には、すぐに出る、出られなかったら折り返すなどの対応が望ましいと思われます。
呼び出しに当たっては、身分証と印鑑(シャチハタではなく朱肉で押すタイプのもの)を持ってくるよう求められることがほとんどかと思います。
身分証は本人確認のためですが、印鑑は供述調書の作成に用いるものであり、後記のとおり、供述調書を作成する場合には特に注意が必要です(※供述調書についてはこちらをご参照ください。)。
呼び出しまでの期間については、厳密な期限等があるわけではなく状況によって異なります。
場合によっては検察庁への送致から1年以上経って呼び出しがある可能性も否定できませんが、特段の問題がある事件でなければ、送致から1~3か月程度で呼び出しがあるのが一般的です。
検察庁から呼び出しを受けた場合、まずは自分がどの事案との関係でどのような立場で呼び出されたかを把握することが第一です。
どう転んでも自分は被疑者とはなりえない、という場合であれば真に参考人として取調べをしたいのだと考えてよいと思われますが、現状被疑者として立件されてはいなくとも、既に立件されることが視野に入っている場合や供述の内容次第では立件されることもありますし、そのような見込みがあっても予め捜査機関がその旨告げてくれるわけでもありません。
このような可能性についてはなかなかご自身では判断が難しい場合もあるかもしれませんが、自分が被疑者である場合、あるいは被疑者となってしまうのではないかとご不安になりうる状況であれば、呼び出しを受けた時点で弁護士にご相談されることをおすすめします。
被疑者(ないしそれに準ずる立場)として呼び出しを受けた場合には、検察官から事件について取調べを受け、その中で追及を受け、多くの場合は供述調書(被疑者等の話をまとめた書面)も作成することになります。
そしていったん供述調書が作成されれば、起訴か不起訴か、略式手続で罰金とするか、正式な裁判とするかなどの判断資料となるほか、裁判でも証拠となりえます(※供述調書についてはこちらをご参照ください。)。
また供述調書の作成に至らない場合であっても、一度検察官の前である供述をすれば、その供述を撤回することは容易ではなく、「さっきはこう言っていたはずだ」「嘘をついたということか」「前と違う話をされても信用できない」などと追及されることとなりえます。
基本的なスタンスとしては、
・安易に取調官に迎合せず、自分自身の記憶、認識と異なる話はしない
・記憶がはっきりしないこと、知らないことについてあてずっぽうに話したりしない
・供述調書の作成に当たっては、記載されている内容がニュアンス含め正しいか詳細に確認する
・もし自分の認識等と異なる記載があれば修正を求め、納得がいかなければ安易に署名等には応じない
といったものになりますが、具体的な注意点は事案により千差万別です。
また、事実関係のみならず、示談や被害弁償について、更生への取り組みについて、周囲の方の指導監督についてなど、不起訴へ向けてむしろ検察官に伝えておくべき内容がある場合もありえます。
ですので、特に取調べを受けることについて不安のある方は、検察庁に出向く前に弁護士に相談し、取調べ等における注意点等についてアドバイスを受けることをおすすめします。
従前の経緯等も詳細に伺えれば、事案に即したアドバイスを差し上げることが可能です。
郵送で呼び出しを受けた場合には既に出頭すべき日程が特定されていることが多いですし、電話による呼び出しの場合も、なるべく早いタイミングで出頭するように求められることが多いかと思います。
場合によっては身柄拘束等もありうる以上、連絡を無視したり、あまりに長期間出頭しないことはおすすめできませんが、予定がある場合、事前に弁護士に相談したい場合などは、日程を変更することも可能です。
必ずしも電話口でそのまま日程を決めなければならないというわけでもありませんし、一旦日程を決めたとしても、再調整を申し入れることも可能です。
難色を示されることもあるかもしれませんが、ご自身のために必要であれば、毅然と変更を申し入れて差支えありませんし、場合によっては弁護士から検察庁に連絡することも可能です。
なお、呼び出しの連絡を再三にわたり無視するなどしていれば、逃亡しようとしているのではないか、証拠隠滅のためになにかしようとしているのではないかなどとの疑いを生じさせ、逮捕されるという可能性も否定できません(※逮捕についてはこちらをご参照ください。)ので、呼び出しを無視し続けることはおすすめできません。
・検察庁からの呼び出し=起訴?
→検察庁から呼び出されたといって必ず起訴されるわけではありません。単なる参考人として呼び出されたという場合もありえますし、被疑者として呼び出された場合であっても、適切に対応すれば、不起訴となる可能性、略式手続で裁判所に行かずに罰金で終わる可能性もあります。
・日時の変更は可能?
→可能です。予定がある場合、弁護士に相談してからにしたい場合などは日程の変更を申し出て構いません。やや難色を示される場合もありえますが、弁護士から連絡することも可能です。
・呼び出しを無視したらどうなる?
→あまりに長期間呼び出しを無視すると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕される可能性も否定できません。日程の調整等も可能ですので、無視することはおすすめできません。
・印鑑は何に使うの?
→供述調書への署名押印の際に使用するために用意を求められる場合がほとんどです。供述調書は署名押印すると証拠となりうるものですので、作成には特に注意が必要です。
・どんな服装が好ましい?
→特に決まりはなく、人と会うのに常識的な恰好であれば問題ありません。とはいえ検察官も人間ですし、印象は良いに越したことはありません。
・弁護士に相談すべき?
→被疑者として呼び出しを受けた、あるいは自分も被疑者となりうるのではないかと不安がある場合には、事前に相談されることをおすすめします。当事務所では刑事事件については基本的に元検事の弁護士が対応しており、経験を踏まえ事案に即したアドバイス等を差し上げることが可能です。
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年9月19日現在)を中心とする弁護士集団であり、迅速にご相談等に対応できる体制を整えています。
刑事事件については基本的に元検事の弁護士が対応させていただき、検察官時代も含めた過去の経験も踏まえ、事案に応じた適切なアドバイスや対応を行って参ります。
当事務所は所属弁護士全員が刑事事件について熟知しており、独自のノウハウにより、「罪を犯してしまったが示談するなどしてなるべく穏便に解決させ、再出発したい」「罪を犯していないので疑いを晴らしたい」といった方々の弁護を行っています。
財産犯、交通事故、性犯罪等、多種多様な事件を扱い、現に多くの事件を不起訴や執行猶予に導いています。
お悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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