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雇用調整助成金、不正受給になるのかが問題になる事例三つ

1 雇用調整助成金の不正(故意)受給なのか過誤(過失)受給なのかが問題になることがたくさんあります

雇用調整助成金については不正が多発しています。
他方、 上原総合法律事務所には、自分のしたことが不正なのかよくわからない、といったご相談をよくいただきます。
このようなご相談の中には、本来受け取れない雇用調整助成金を受け取ってしまったけれども、 不正ではなく過誤である、という場合も少なくありません。
不正受給ではないとなれば、不正受給の場合の不利益を避けることができます。

そこで、以下では、不正と過誤の違いを説明するとともに、不正受給になるかどうかが問題になるよくある例を三つご紹介します。

雇用調整助成金不正受給をしたらどうなるのかについて制度の詳細はこちらをご覧ください

雇用調整助成金不正受給についての相談の流れはこちらをご覧ください

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2 不正(故意)とは何か、過誤(過失)受給ならどうなるのか

本当は雇っていない従業員を雇っていたことにして申請したり、従業員に休業をさせていないのに休業させたことにして申請する、といったものが雇用調整助成金の不正受給の典型例です。雇用調整助成金の不正受給をすると、受給した額よりも多い金額を返さなければいけなくなったり、不正受給の事実が公表されたり、刑事手続になったりしてしまいます。

 これに対して、例えば、会社の役員らが気が付かない間に従業員が誤って真実と異なる申請をしてしまったり、本当は受給資格がないのにそうとは知らずに申請してしまうこともあります。このような場合は「わざと」ではなく、過誤(過失)だったと認めてもらえることがあります。
本来受給できない額を受給してしまったけれども過誤(過失)だったということになれば 、受け取るべきでなかった分のお金を返すことで許してもらうことができます。

このように、 不正か過誤かは、「受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまった」という点では同じですが、結果は大きく異なります。
 このような違いが生じるのは、不正が「わざと」行われるものだからです(※)。
本当は雇用調整助成金の申請内容に真実と異なることがあると分かっていながら内容虚偽の書類を提出し、労働局を騙したと言い得るような申請であることが、不正受給に対して厳しい制度が作られている理由だと考えられます。

※不正受給の定義は、厳密には、雇用調整助成金支給要領に「偽りその他不正の行為(詐欺等に触れる行為のほか、犯罪を構成するに至らない場合であっても、故意に支給申請書に虚偽の記載を行い又は偽りの証明を行うことが該当する。ただし、支給申請書に事実に反する記載があった場合であっても、当該記載誤りが故意によらないものと認められる場合は不正の行為には該当しない。)により本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすること」と規定されています。

3 雇用調整助成金不正受給かどうかが問題となるよくある事例1(従業員が隠れて出勤)

最もよくあるご相談は、「従業員が隠れて出勤していた」というものです。
 これは例えば、以下のような流れで生じます。

(1)まず、感染拡大の影響で業績が悪化したため経営者は従業員に休業を指示する

(2)ところが、従業員は、「仕事を休むと出勤する日にやるべき仕事が集中してしまうのが嫌だ」などの様々な理由で経営者に黙って出勤する

(3)経営者に黙って出勤した従業員は、出勤したことが経営者に知られないようにタイムカードを押さない

(4)タイムカードに記録されていないので、経営者は従業員が勤務していたことを知らずに雇用調整助成金を申請してしまう

(5) 申請後にパソコンのログなどから休業していたはずの従業員が出勤していたことが明らかになる

このような場合、経営者は「わざと」真実と異なる申請をしているわけではありませんが、申請だけを見ると「タイムカードをごまかして雇用調整助成金不正受給した」かのように見えます。

そのため、このような事案では、経営者が「わざと」真実と異なる申請をしたわけではない、ということを適切に労働局に理解してもらうことがとても大切になります。

4 雇用調整助成金不正受給かどうかが問題となるよくある事例2(親会社・子会社の場合)

親会社・子会社の関係にある会社間で役員や従業員が共通している場合、雇用調整助成金の受給資格に制限があることがあります。
例えば、子会社の代表取締役が親会社の従業員でもある場合、その方について親会社の従業員としての立場で雇用調整助成金を申請できません。

ですが、雇用調整助成金の申請において、専門家でない方がこのような制限を熟知しているとは限りません。
また、専門家の方が関与していても、会社の方が親会社・子会社の関係にある会社がある場合の雇用調整助成金の受給資格制限があることを知らなければ、専門家の方に親会社・子会社の関係にある会社があることを伝えない可能性もあります。

このような場合には、故意なく、受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまうこととなります(※)。

このような事案でも、申請者や専門家が「わざと」真実と異なる申請をしたわけではない、ということを適切に労働局に理解してもらうことがとても大切になります。

※ 説明の便宜上、事例を簡略化しています。具体的事案における時給資格の有無・不正か過失かの判断は弁護士にご相談ください。

5 雇用調整助成金不正受給かどうかが問題となるよくある事例3(代表取締役を雇いあっている)

友好的な関係にある二社の間でお互いの代表取締役をお互いの会社で雇いあっていることがあります。
このような場合にも、それぞれ雇っている別の会社の代表取締役を従業員として雇用調整助成金を申請することはできません。

ですが、雇用調整助成金の申請時に、申請者がこのようなルールを知らなかったり、専門家が「お互いの代表取締役をお互いの会社で雇いあっている」という事実を知らなかったりすることがありえます。

このような場合には、故意なく、受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまうこととなります(※)。

このような事案でも、申請者や専門家が「わざと」真実と異なる申請をしたわけではない、ということを適切に労働局に理解してもらうことがとても大切になります。

※ 説明の便宜上、事例を簡略化しています。具体的事案における時給資格の有無・不正か過失かの判断は弁護士にご相談ください。

6 誤りを発見したらどうすれば良いか

自分の会社で行った申請によって受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまっていることが分かった場合には、見て見ぬふりをしてはいけません。

労働局は雇用調整助成金の不正受給がないかどうかについて、調査を強化しています。
不正か過誤かにかかわらず、調査が入れば、受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまったことが発覚すると考えられます。
そして調査が入った後に受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまったことが発覚すると、 はじめから雇用調整助成金を不正受給しようとしていたかのように見える可能性があります。

これに対して、会社が自発的に「受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまっていました」と申告して詳細を報告していれば、 不正ではなく過誤だということを理解してもらいやすくなると考えられます。

7 上原総合法律事務所で行っている対応について

上原総合法律事務所では、自分のしたことが不正なのかよくわからない、とか、間違えて受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまった、といったご相談をよくいただきます。

このような場合、まず事案の詳細を調査し、どのような誤りがあったのか 、なぜそのような誤りが生じたのか、証拠と共に労働局に報告します。
特に、一見すると不正(故意)のように見えるけれども実際は過誤(過失)であるという場合には、調査する側の視点に立ち、疑わしく思える部分を先回りして説明し、過誤だということを理解してもらえるようにします。

このような対応をすることで、不正をしていないことを理解してもらったり、一見すると故意のように見えるけれども過失であると理解してもらったりできます。

8 お悩みの方はお気軽にご相談ください

上原総合法律事務所にご相談をいただく方の多くが、相談前は「自分1人で悩んでいてとても辛い、夜も眠れない、食欲もない」といったご不安を抱えていますが、ご相談後は「相談して気が楽になった、眠れるようになった、食べられるようになった。助成金についてはとりあえず弁護士に任せておけば良いと考えることで、仕事にエネルギーを割けるようになった。」などとおっしゃいます。

経営者の方がこのような苦しみから少しでも開放することが上原総合法律事務所の役割だと考えています。
雇用調整助成金の問題については専門家である上原総合法律事務所がお引き受けすることで経営者の時間と能力を本業に集中し、会社を少しでも回復させていただきたいと考えています。

そのために、上原総合法律事務所では、迅速にご相談に対応できる体制を整え、丁寧にご相談にお答えいたします。
ご相談は上原総合法律事務所へのご来所のみならず、ズームまたはお電話によるリモートでのご相談も可能です。

全国からのご相談をお受けしています。

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上原総合法律事務所にご相談いただく際の流れはこちらの記事をご参照ください。

弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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