コロナ禍、簡単に人と繋がれることで注目を集めるマッチングアプリやSNSの出会い。
恋人や結婚相手を見つけて幸せを掴むケースがある一方で、報道を見て分かるようにトラブルや刑事事件に巻き込まれるケースがあるのも見逃せない事実です。
当然ながら、ネットでの出会い以外でも社会生活を営んでいればトラブルに見舞われることはあります(例えば、友人と喧嘩をして殴った、殴られた、大学の片思い相手を抱きしめたなど)。刑法上は暴行罪、強制わいせつ罪に該当します。
しかし、これらが直ぐに刑事事件に発展することは多くありません。
それは、おおむね人間関係が構築された間柄でのトラブルだからです。
それに対して、ネット上での出会いは、人間関係が構築する前に気軽に会ってしまうことが多く、また、その際にトラブルや「罪を犯したかも」と自覚していたとしても「バレないだろう!」と放置してしまいがちです。
放置した結果、知らないうちにトラブルが大きくなり、最悪の場合には目の前に警察官という事態も考えられます。
そこで、今回は元検事である弁護士が、よくあるネットでの出会いトラブルのケースが、どのような犯罪に該当する可能性があるのか、その際に法的にどのように対処する必要があるのかを説明します。
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インターネット上、ワンナイトの流れや手順といったタイトルの記事が散見されます。
1度は見たことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。
記事では、簡単に同意のある性交ができるかのように書かれています。
しかし、実際には、マッチングアプリで見ず知らずの人と会い、ご自身としては同意のある性交と思っていても、相手としては同意のない性交であったとして、トラブルや刑事事件に発展するケースがあります。
それは、通常、性交の際、雰囲気や相手の気持ちを推し量ることが重要視されるため、明確な同意を取らないのが普通だからです。
そして、相手の心の内は、表情や言動からは判断しにくいものです。
特にマッチングアプリで出会ってから付き合いの浅いで段階で性交に及んでしまった場合、相手の考えや思いを正しく推測することができず、認識の齟齬が生じる可能性があります。
このようなケースの場合、強制性交等罪(2017年6月の刑法改正以前は強姦と呼ばれていた)に問われる可能性があります。
また、お酒や睡眠薬を飲ませて抵抗できなくして性交等した場合は準強制性交等罪、そして、これらの罪を犯して怪我をさせた場合は強制性交等致傷罪となり、いわゆる裁判員裁判対象事件に問われる可能性があります。
強制性交等罪(強姦罪)は、暴行又は脅迫をして性交、肛門性交又は口腔性交をすることにより成立します。(刑法第177条)。
成立要件は以下の2つを満たすことで成立します。
➀ 反抗を著しく困難にする程度の暴行又は脅迫(暴行・脅迫要件)
② 相手の同意がなかった(性交の不同意)。
要件を確認し、「強引にいったが、反抗ができないくらいの暴行や脅迫は行っていないから犯罪は不成立だろう。」と胸を撫で下ろした方もいるのではないでしょうか。
しかし、この罪における暴行又は脅迫は、典型的な「殴る」「蹴る」「押さえつける」「脅す」が当たるのはもちろん、通常、性交に至る過程で行うことが多い行為「手を引っ張る」「不意にキスをする」なども、その時の状況や言動と相まって、暴行又は脅迫があったと評価されることがあります。
このようなことから、強制性交等罪は、女性を襲って無理矢理性交(セックス)をするなどの特別なケースでのみ成立する罪ではありません。
マッチングアプリで出会い、誰しもが行っているような行為であったとしても成立する可能性が十分あります。
これらの罪の刑罰は
・強制性交等罪、準強制性交等罪:5年以上
・強制性交等致傷罪:6年以上
です。
刑の下限は5年ですから、非常に厳しい刑罰となっています。
執行猶予を付すことができるのは3年以下です。
そのため、前科や前歴がなくとも、1発実刑の可能性があります。
最近では有名俳優が実刑に処されたのが記憶に新しいと思います。
ケースにもよりますが、多くの場合、性犯罪の当事者間で1つだけ一致している思いがあります。
それは、できれば公開の法廷での審理を避けたいという思いです。
法廷審理になるということは、お互いに警察官、検察官、裁判官、傍聴人などに当時の性交について聞かれることになります。
誰しも性行為を他人に聞かれることを望みません。
そのため、早期にご相談いただければ、示談をして刑事事件化の回避、不起訴処分にできる可能性があります。
ただ、ご自身で相手方と示談交渉をするのは危険なケースがあります。
最近、強制性交等罪の刑罰が重いことを利用し、女性側から「警察に被害届を出す」と恐喝する事件が発生しています。
そのため、安易に相手に同意のない性交であったと認めるのは危険です。
私たちは元検事でありますから、ご相談いただいた内容から正確に事実を認定し、最悪の事態にならぬようサポートいたします。
具体的な詳しい弁護活動等については以下を参照ください。
恋活や婚活、デート目的で多くの人に利用されるマッチングアプリ。
異性と気軽に繋がることができ、交際の機会は増えるかと思いますが、必ずしも、その恋が成就するわけではありません。
一方的な好意の感情が行き過ぎてしまうと、ストーカー規制法に問われる可能性があります。
ストーカー規制法で規制の対象となる行為は、「つきまとい等」と「ストーカー行為」の2つです(第2条)。
「つきまとい等」とは、恋愛感情や好意の感情、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を満たす目的で、以下の8つの行為をすることです。
1 つきまとい、待ち伏せ、見張り、押し掛け、うろつき
2 行動を監視していると思わせるような事項を告げる。
3 面会や交際の要求
4 下品又は乱暴な言動
5 無言電話、拒否後の連続電話、FAX、メール、SNS等
6 汚物や動物の死体を送付
7 名誉を傷つけるようなことを告げる。
8 性的羞恥心を害することを告げたり、文書や写真等を送ったりする。
これらの行為は、交際関係(元含む)にある相手に対して行われることが多く、行為形態は「1つきまとい等」「3面会や交際の要求」「5無言電話等」の発生件数が多いです(令和2年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について)。
また、善意(例えば、心配だから待ち伏せした。)又は無意識(例えば、連絡がこないから何度も連絡した)で行ってしまうことが多いのも、ストーカー犯罪の特徴です。
特に、マッチングアプリでは、出会いの気軽さから、相手のことをよく知らないままに交際してしまうこともあり、一方的な好意の感情で、今回のケースのようなことをすれば、ストーカー規制法違反となる可能性があります。
ストーカー規制法の罰則は、「ストーカー行為をした者(第18条)」と「禁止行為等に違反してストーカーをした者(第19条)」で処罰規定が異なります。
➀ ストーカーをした者(第18条)
警察等から警告や禁止命令を受けることなく、逮捕などをされた場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
例えば、処罰を求めて被害者が被害届を提出した場合などです。
② 禁止行為等に違反してストーカーをした者(第19条)
警察は、被害者の申出により、「ストーカーをやめる」旨の警告をすることができ、その警告に従わず、繰り返してつきまとい等をする恐れがある時には、更に公安委員会から禁止命令等が命じられます。
この禁止命令等に違反して、ストーカー行為をした場合は、2年以上の懲役又は200万円以下の罰金となります。
恋愛感情や好意の感情を伴う行為はエスカレートしやすく、昨今、凶悪ストーカー事件が発生しています。
そのため、ご自身では大丈夫だと思って行った行為であったとしても、捜査機関から緊急性等があると判断されれば、逮捕される可能性は十分にあります。
逮捕されれば、復縁等が叶わないのはもちろんのこと、その後の人生に影を落とすことになります。
そうならないためにも、早期に弁護士にご相談ください。
そして、ストーカー犯罪において、最も重要なことは示談です。
示談することによって、刑事事件化の回避、身柄拘束の回避、事件化したとしても不起訴の可能性が高くなります。
交際関係のもつれによる示談交渉は、お互いに言い分があるため、困難が伴うことが多いです。
しかし、我々は元検事でありますから、交際トラブルを端緒とした事件も数々手がけておりますので、最悪の事態にならむようサポートいたします。
特に、このような場合、ご相談者様と相手方(被害者とされている人)の認識が大きく異なるため、「相手方は通常どのような認識を持つのか」ということを理解することが大切であり、元検事として多数の被害者と話をしてきた経験を生かすことができます。
また、第三者である弁護士に話すことにより、心の整理ができる場合もあるかと思いますので、お気軽にご相談ください。
関係記事については以下を参照くだい。
SNSとは、人と人が繋がりあって、気軽に情報共有やコミュニケーションをとることができるオンラインサービスです。
代表的なものとして、Twitter、Instagram、TikToKがあります。
これらは同じ趣味を持つ者や友達同士で情報共有や交流を深めるためのツールとしては便利である一方、簡単に人と人が繋がりあい、匿名性があることなどから、SNSをきっかけとする犯罪が増え、社会問題化しています。
特に多いのが、SNSはマッチングアプリのように18歳以上という年齢制限がないため、未成年者が被害者となる犯罪の発生が後を絶ちません。
警察庁公表の「令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」によると、育成条例738名、児童ポルノ597名、児童買春311名、略取誘拐75件の犯罪が発生しています。
同意の上で金銭関係もなかったとしても、18歳未満の未成年者と性交(セックス)又は性交類似行為(手や口など)を行った場合、青少年育成条例違反(淫行条例違反)に問われる可能性があります。
ただ、未成年者との性行為が一律に禁止されている訳ではありません。
以下の2つの場合に当たる場合は除かれます。
1 婚姻中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある場合(最高裁昭和60年10月23日判決)
2 青少年同士の場合(東京都の場合は条例第30条、青少年についての免責)
要するに、真剣交際しているカップル又は中学生、高校生同士の性行為については成立しないということです。
ここで問題となるのが、40代の男性でも14歳の少女と真剣に交際していたら罪に問われないのか。
恋に年齢差は関係ないとも言われますが、社会通念上は真摯な交際関係とは認められない可能性が高いです。
そのため、処罰を受ける可能性は高いです。
また、処罰を逃れる目的で、後付けで「真摯に付き合っていたことにしてほしい」などと言ったりすれば、罪証隠滅の恐れが高いとして、逮捕・勾留される可能性が高まりますので、ご注意ください。
東京都の場合の刑罰は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
一昔前は、援助交際と呼ばれていたものです。
コロナの影響もあり、アルバイト先を失った児童(18歳未満)などがお小遣い欲しさからSNSを介してパパ活を行い、犯罪が増加しています。
パパ活とは、金銭を対価とし、女性が食事やデートに付き合う活動です。
パパ活自体の行為(食事やデート)が犯罪となることはありません。
しかし、女性側の目的は多くの金銭を得ることであり、男性側の目的は若い子と関係を持ちたいという性的欲求がお互いの根底にあるため、性行為に発展するケースが多いです。
未成年者に金銭を対価として、性交(セックス)又は性交類似行為(手や口など)を行った場合、児童買春罪に問われる可能性があります。
特にTwitterで盛んに募集が行われています。
そこで使われている隠語は以下のとおりです。
・性交:サポ、大人
・性交類似行為:プチ(手、口など)
これらの隠語に当たる行為を児童(18歳未満)と行った場合、処罰を受ける可能性があります。
刑罰は5年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。
SNSで出会い、「相手はどんな人なのだろう?」と思い、写真交換をすることはよくあると思います。
顔写真などを送ってもらう分には問題はありません。
しかし、ついつい要求がエスカレートしてしまい、児童(18歳未満)に「下着姿見たい」などと言って、写真や動画を撮らせた上で送らせた場合、児童ポルノ(製造)に問われる可能性があります。
児童ポルノとは、衣服の全部を着けない(全裸)姿だけでなく、性器やその周辺、臀部、胸部の写真や動画であっても当たります。
この罪が発覚する場合の多くは、児童の携帯電話のやりとりを親や警察官に見つかった場合です。
そのため、ご自身の携帯電話から写真や動画を削除したとしても、児童が親などに見つかった段階で携帯電話のやりとりを捜査機関が押さていることが多いため、罪から逃れることは難しいです。
刑罰は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。
SNS上で「親と喧嘩しました。家に泊めてください。」といった投稿が多数なされています。
「本人も同意の上だし、1日くらいいいか。」と安易に未成年者(20歳未満)を泊めてしまうと未成年者誘拐罪(刑法224条)に問われる可能性があります。
なぜ本人が同意しているのに誘拐となるのか?
それは親の監護権も保護法益であるため、監護権の侵害となるからです。
昨今、SNS上をきっかけとした子供の性被害が問題とされている中、大事な子供が家出をし、見ず知らずの人の家に泊まることを親が許すとは普通考えられません。
そのため、本罪は親告罪という告訴がなければ起訴されることはありませんが、たとえ、本人が告訴しなかったとしても、親から告訴される可能性は非常に高いです。
安易な気持ちで未成年者を泊めると処罰を受ける可能性はあります。
刑罰は3月以上7年以下の懲役です。
罰金刑がないため、非常に厳しい刑罰です。
これらの犯罪で検挙されたり逮捕されたりした際、共通する弁解は「18歳以上だと思った。」というものです。
まずこのような弁解は通るのか?
元検事で弁護士の立場からお話します。
結論は、非常に厳しいです。
なぜならば、これら4つの犯罪は、未成年者とそれなりのやりとり(ダイレクトメール、LINE、会った際の会話)がなければ犯すことができないものだからです。
未成年者がSNSを利用する際、「親と喧嘩した」「寂しい・孤独」「人生を充実したい」「お金がない」など様々理由で利用していると思われ、それらの心の隙間に付け入ることで犯罪が行われることがほとんどです。
人の心に付け入るためには、多くのやりとりが必要となります。
いくら気をつけていたとしても、やりとりの中から18歳未満であると認識し得るやりとりが含まれてしまいます。
また、やりとり以外にも様々は証拠を捜査機関は全て勘案し、18歳未満であったことの認識を認定します。
そのため、「18歳以上だと思った」との主張を通すことは厳しいケースが多いです。
また、未成年者が被害者となる犯罪に対して捜査機関は強い信念のもとに捜査を行っています。
当然、逮捕されれば、大々的に実名報道されることが多く、また社会的関心も高いため、インターネット上に記事が一気に拡散する恐れがあります。
そのような最悪の事態にならないためにも、トラブルを放置することなく、弁護士に相談ください。
私たちは元検事でありますから、ご相談いただいた内容から正確に事実を認定し、最悪の事態にならぬようサポートいたします。
当然、本当に18歳未満とは知らなかった場合には無罪主張のサポートをいたします。
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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