ご注意ください
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
「護身用にナイフを持ち歩いていたら、警察に職務質問された」
「キャンプの後も包丁を車に置き忘れたままにしていたら銃刀法違反だと言われた」
「初犯でも前科がつくのか不安だ」
銃刀法違反は、日常生活の中でも思わぬ形で成立する可能性がある犯罪です。とはいえ、最悪の場合は逮捕され、刑務所へ行く可能性(実刑)もある重大な罪であることを忘れてはいけません。他方、銃刀法違反に該当してしまう場合でも、適切な対応をとることで不起訴や軽い処分となる可能性もあります。
本記事では、日常生活の中でもしばしば問題となりうる包丁やナイフなどの携帯についての違反をメインに、元検事(ヤメ検)の弁護士が、銃刀法の基本から具体的な規制内容、初犯の罰則、立件や逮捕後の流れ、そして不起訴処分を目指すための具体的なポイントを徹底解説します。
目次
第1 銃刀法とは何か?
銃刀法(正式名称:銃砲刀剣類所持等取締法)とは、銃や刀剣類などの危険物の所持等を規制する法律です。
この法律の目的は、社会の安全を守ることにあります。刃物や銃器は本来、正当な用途で使用されるべきものですが、人の生命や身体を傷つける凶器となりかねない危険性が大きな物でもあり、不適切に所持・使用されると重大な犯罪につながる危険性があります。
そのため、銃刀法では銃器のほか、刃物についても、原則として一定の形状の刃物の所持を禁止し、違反した場合には刑事罰が科される仕組みとなっています。
刑罰としては
- 拘禁刑
- 罰金
が定められており、違反の内容によっては無期の拘禁刑といった非常に重い処罰が科される可能性があります。
銃刀法違反というと、拳銃や刀剣など、いかにも凶器になりうるものを規制するというイメージの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、銃刀法違反の規制対象はそれらに留まらず、包丁やはさみなど日常的に使用する刃物についても対象となる上、それらの「正当な理由のない携帯」は、日常生活の中でも問題となりやすく、初犯であっても処罰対象となりうるため、注意が必要です。
第2 銃刀法違反の具体的な規制内容
1 規制対象となる刃物の種類
銃刀法で規制される「刃物」には、大きく分けて2つの基準があります。
- 刀剣類(許可等のない所持自体が禁止、銃刀法第3条1項): 日本刀、あいくち、ダガーナイフ(両刃のナイフ)などが該当します。これらは自宅に置いておくだけでも、公安委員会の許可等がない限り違法となります。
- その他の刃物(正当な理由のない携帯が禁止、銃刀法第22条): 刃体の長さが6センチメートルを超える包丁、ナイフ、ハサミなどが該当します。これらは所持自体は認められますが、「正当な理由」なく外へ持ち出す(携帯する)ことが禁止されています。工具として使うカッターナイフや果物ナイフであっても、状況によっては違法と判断されることがあります。
「刃体の長さ」は切先と柄部における切先に最も近い点を結ぶ直線の長さとされていますが、形状によってはやや特殊な図り方をする場合もあり、明らかに上記に該当しない場合や正当な理由のある場合以外には携帯を避けるべきでしょう。
2 「銃刀法」と「軽犯罪法」の違い
刃体の長さが6センチメートル以下であっても安心はできません。
軽犯罪法第1条頭書、同条2号は「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」について拘留又は科料に処すると定めており、カッターナイフや小型の折りたたみナイフなどは、銃刀法には触れなくても「軽犯罪法」違反として処罰される可能性があります。どちらにせよ、正当な理由のない携帯は法的リスクを伴います。
3 「護身用」はNG?正当な理由の判断基準
銃刀法違反で争点となりがちなのが、同法22条で規制される刃物の携帯につき、「正当な理由」があるか否かという点です。
⑴ 正当な理由と認められる具体例
- 料理人が仕事場に自分の包丁を持っていく
- キャンプや釣りの際、ナイフやはさみを携帯している
- 店で購入した包丁を、包装された状態で自宅へ持ち帰っている
⑵ なぜ「護身用」は認められないのか
「夜道が怖いから」「念のため」と護身用に刃物を持ち歩いていたと主張する例がしばしば見られますが、実務上、これは基本的には「正当な理由」にはなりません。
捜査機関は、「刃物を持ち歩くことによる危険性」の方が、「万が一の護身の必要性」よりも圧倒的に高いと判断することがほとんどでしょう。元検事の視点から言えば、取調べで「護身用」と供述することは、むしろ「いざとなったら人に向ける準備があった」と捉えられる可能性が高いと考えられます。
第3 初犯の罰金はいくら?科される刑罰と前科
正当な理由なく刃物を携帯したという類型の銃刀法違反において、多くの方が気にするのが「初犯でも罰金になるのか」「罰金で済むのか」「罰金だといくらになるのか」という結果についてです。
正当な理由なく刃物を携帯したとして銃刀法違反で起訴された場合、以下の刑罰が科される可能性があります。
2年以下の拘禁刑(※従来の懲役)または30万円以下の罰金
1. 初犯の処分相場
結論としては、刃物の携帯の初犯であれば20万円前後の罰金刑、又は弁護活動次第では不起訴となるケースも多いものの、必ずしも罰金で済むとは限りません。
実務上は、以下の事情が考慮され、起訴されるか否かや刑の重さが決まります。
- 刃物の種類(危険性の高さ)
- 携帯していた目的・状況
- 前科・前歴の有無
- 反省の態度
- 再犯のおそれ
例えば、刃体の長さなどは規制対象とはなるものの、危険性が比較的軽微なナイフを持っていただけであり、特段の目的もなく荷物と一緒に入れっぱなしにしていたなどといった、危険性や悪質性が低い場合には、重くない罰金や不起訴(起訴猶予)処分となる可能性があります。
一方で、危険性の高い刃物を携帯していた場合や、携帯の目的や携帯の状況から想定される危険性が大きいと考えられる場合、再犯のおそれも否定しにくい場合などは、初犯であってもより重い処分となる可能性があります。
刃物の携帯で初犯の場合、最も軽ければ不起訴(起訴猶予)処分がありえ、そうでなくとも略式手続(正式な裁判ではなく簡易な手続)による比較的少額の罰金がありえますが、状況次第では公判請求(正式な裁判)で拘禁刑に処されるという可能性もあります。
また、罰金刑であっても有罪判決であるため、前科がつく点には注意が必要です。
※不起訴(起訴猶予)の獲得についてはこちら( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
※略式手続についてはこちら( 略式起訴・略式命令でも前科?手続の流れ、罰金の相場等を元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所 )の記事をご参照ください。
2 前科がつくとどうなる?
「罰金なら払えば終わりだ」と軽く考えるのは危険です。罰金刑であっても「有罪」には変わりなく、一生消えない「前科」がつきます。 前科がつくと、その内容次第では就職や資格取得(医師、弁護士、警備員など)に制限がかかったり、海外渡航の際のビザ申請で不利益を被ったりする可能性があります。
第4 逮捕後の流れと注意点
銃刀法違反は、職務質問などをきっかけに発覚することが多い犯罪です。
一般的な流れは以下のとおりです。
刑事事件の流れ一般についてはこちら( 嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
1. 逮捕から送致までのスピード
その場で現行犯逮捕されるなど 逮捕された場合、48時間以内に検察庁へ送致され、さらに24時間以内に「勾留(こうりゅう:長期の身柄拘束)」の必要性が判断されます。
検察官が勾留の必要があると判断すれば勾留請求がなされ、これを受けた裁判官が勾留の必要性認めると、延長も含め最大で合計23日間も警察署の留置場から出られなくなる可能性があります。
※逮捕から起訴までの流れについてはこちら( 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
逮捕された事件の場合、仕事や私生活への影響を最低限に留めるよう、まずは身柄の解放を目指し、勾留請求や勾留決定がなされないよう意見書の提出や検察官との面談、準抗告等の弁護活動を行っていく必要があります。
※勾留の回避等、釈放される方法等についてはこちら( 釈放、保釈について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
また、身体拘束下の取調べで不用意な発言や不利な調書の作成がなされないよう、弁護人との接見で対策を講じていくべきでしょう。特に、正当な理由の有無含め事実関係を争う場合には取調べにおける対応等も非常に重要です。
弁護士の接見についてはこちら( 弁護士による接見とは?元検事の弁護士が通常面会との違いや差し入れについて解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
勾留期間中も捜査は進行していき、最終的に、検察官が起訴するか不起訴とするかを判断します。
勾留されているいわゆる身柄事件の場合には、その満期の段階で起訴されるか否か、起訴されるとして略式手続か公判請求かなどが決まるのが通常です。
不起訴となれば前科はつきませんが、起訴されて有罪となれば罰金であっても前科がつきます。また、公判請求の場合、公開の法廷で裁判を受けることとなりますし、保釈されるまで勾留が継続していくこととなり、略式手続か否かという点も重要な分かれ道です。
※不起訴(起訴猶予)の獲得についてはこちら( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
※不起訴(嫌疑不十分)の獲得についてはこちら(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
※略式手続についてはこちら( 略式起訴・略式命令でも前科?手続の流れ、罰金の相場等を元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所 )の記事をご参照ください。
2. 在宅事件として進行する場合
銃刀法違反の事実が発覚し、刑事事件として立件されたからといって、必ず逮捕や勾留をされるわけではありません。
また、逮捕や勾留をされても、勾留請求が認められなかったり、準抗告が認められるなどすれば早期に釈放される可能性もあります。
その場合、いわゆる在宅事件として捜査等が進んでいくこととなります。
取調べ等については、警察からの呼出しに応じて行っていくこととなり、一定の捜査が遂げられれば事件は警察から検察に送致(いわゆる書類送検)されます。
その後、検察からも呼出しがあって取調べが実施されることが一般的ですが、最終的に検察官が起訴不起訴や起訴する場合の形式を判断することは身柄事件の場合と同様です。
※不起訴(起訴猶予)の獲得についてはこちら(起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所 )の記事をご参照ください。
※不起訴(嫌疑不十分)の獲得についてはこちら(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
※略式手続についてはこちら( 略式起訴・略式命令でも前科?手続の流れ、罰金の相場等を元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
第5 不起訴・減刑を勝ち取るための弁護活動
銃刀法違反においては、早期の弁護活動が結果を大きく左右します。
まず重要なのは、「正当な理由」があったと認められるか否かを的確に判断し、どのような方針とするのかを慎重に検討する必要があるでしょう。
どのような場合に正当な理由があったと判断されうるのか、当該事案において、どのような理由があったと認定されうるかなどは専門的な知見に基づいた検討が不可欠です。
また、「正当な理由」とまでは言えなくとも、携帯の理由等から悪質性や危険性が認めあっれるか否かは変わって来うるところですし、捜査機関のストーリーに沿って事実と乖離した見立てで捜査等が進行してしまうことは防がなくてはなりません。
さらに、、反省の態度や生活状況などのその他の情状関係を整え、適切に主張することも、不起訴処分や軽い処分に繋がりうるものです。
さらに、先述のとおり、逮捕されている場合には、早期の釈放に向けた活動も重要となります。
弁護士が関与することで
- 不起訴の可能性を高める
- 略式手続による罰金刑にとどめる
- 身体拘束の期間を短縮する
といった効果が期待できます。
刑事事件では初動対応が極めて重要であり、早期に弁護士へ相談することが重要です。
※勾留の回避等、釈放される方法等についてはこちら(釈放、保釈について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※不起訴(起訴猶予)の獲得についてはこちら(起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
※不起訴(嫌疑不十分)の獲得についてはこちら( 嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
※略式手続についてはこちら(略式起訴・略式命令でも前科?手続の流れ、罰金の相場等を元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
第6 まとめと今後の対策
銃刀法違反、なかでも刃物の携帯については日常生活の中でも成立し得る身近な犯罪ですが、処罰は決して軽くありません。
本記事のポイントは以下のとおりです。
- 銃刀法は拳銃や刀など以外にも、刃物の携帯等を厳しく規制する法律
- 一定の刃物の正当な理由がない携帯は犯罪となる(「護身用」は正当な理由にはならない)
- 初犯でも逮捕の可能性、罰金となり前科がつく可能性がある
- 早期の弁護活動が早期の釈放や不起訴、略式手続など、結果を大きく左右しうる
特に、「軽い気持ちで持っていた」「なんとなく置いていた」というケースでも処罰対象となるため、十分な注意が必要です。
万が一、銃刀法違反で捜査を受けている場合には、早期に弁護士へ相談し、適切な対応をとることが重要です。
当事務所では、元検事の弁護士が銃刀法違反の事件含め多数の刑事事件について、検察側弁護側双方の立場からの豊富な経験を有しており、不起訴や軽い処分を目指した弁護活動を行っています。お困りの方は、お早めにご相談ください。
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