死体遺棄は懲役(拘禁)何年?元検事の弁護士が死体遺棄・死体損壊の内容や弁護のポイントを解説

暴力事件
[投稿日]2025.05.27
[更新日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

この記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、死体遺棄・死体損壊罪の内容や、これらの事件の弁護のポイント等について解説します。

第1 死体遺棄・死体損壊とは

刑法190条は、死体損壊等の罪を定めています。

具体的には「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の拘禁刑に処する。」という規定となっており、死体のみならず、火葬後の遺骨や納棺物も対象とされており、これらに対する損壊、遺棄、領得の行為が犯罪とされています。

これらの罪は、基本的には死者に対する宗教的感情等を保護するためのものとされており、「礼拝所及び墳墓に関する罪」のひとつとされていますが、実際には殺人罪等に付随して行われた場合に併せて立件・処罰される例が多くあります。

ただ、もちろん殺人等との関連でなくとも死体遺棄・死体損壊等の罪は成立しますし、重大な犯罪のひとつです。

なお、「礼拝所及び墳墓に関する罪」には墳墓発掘罪や礼拝所不敬及び説教等妨害罪等があり、死体損壊等を伴わなくとも、墓所を汚損したり、いわゆる墓荒らしのような行為は処罰の対象です。

この記事では、刑事事件として立件されることが比較的多い死体遺棄をメインに解説します。

第2 死体遺棄罪の成立要件

1 法律上の要件

死体遺棄罪の対象となるのは「死体」であり、死亡した人の身体です。

ここにいう「死体」には、死体の一部や、人体の形を形成するに至った胎児の遺体も含みます。

死体遺棄罪の「遺棄」とは、社会通念上埋葬とは認められない態様で放棄することをいいます。

遺体を山中に埋めるなどはもちろん、例え愛着等からであっても、自宅に隠匿したりも遺棄と評価されうるものです。

また、殺人犯等が死体をそのまま放置する行為は基本的には「遺棄」には当たりませんが、葬祭の義務を負う家族等が亡くなった遺体をそのまま放置する行為は遺棄に当たるとされています。

2 死体遺棄となる具体的ケース

死体遺棄の典型的なケースとしては、殺人罪、傷害致死罪等の発覚を免れるために、被害者の遺体を隠そうとする場合が想定されます。山中や建物の床下に埋めるなどして後に発見されて事件化したケースなどは報道等でも見聞きするところです。

必ずしも他の犯罪との関連して死体遺棄を行うわけではないパターンとしては、出産して直後に亡くなったり、あるいは死産であったりした嬰児の遺体をそのまま放置したり隠匿したりするケースもしばしば報道されています。

また、近年では、引きこもりや老々介護等の末、親や子が亡くなった後、何らの手続等をせず放置していたとして刑事事件化するケースも散見されるようになっています。

3 死体損壊罪について

死体遺棄と併せ、死体損壊も成立しうるケースもあります。

ここにいう「損壊」とは物理的に損傷・破壊することをいいます。

典型的なパターンとしては、やはり殺人等の発覚を免れるために、被害者の死体を損壊した上で隠匿するというケースでしょう。

なお、司法解剖や臓器移植のための摘出などは法令に基づくものとして死体損壊罪には当たりませんし、いわゆる屍姦(死体との性行為)も物理的損壊を伴わない限り死体損壊罪には当たらないとされています。

第3 死体遺棄罪の刑罰と量刑

1 刑法上の定め

刑法第190条で、死体遺棄罪の法定刑は3年以下の拘禁刑とされています。この法定刑は死体損壊や死体領得の場合も同様です。

2025年5月までは3年以下の懲役とされていましたが、刑法の改正で2025年6月から懲役刑と禁固刑は拘禁刑に一本化されたところです。

2 実際の刑罰等

死体遺棄罪には罰金刑の定めはなく、起訴されれば必ず正式な裁判を公開の法廷で受けることとなります。

ただ、死体損壊罪のみであれば法定刑の上限が3年であることもあり、執行猶予が付される可能性は十分にあります。

もちろん、実際の量刑は事案の内容や被告人の前科前歴次第ですし、亡くなった実母の遺体を放置したというケースで懲役10月(刑法改正前の事件です。)となった例もあり、裁判では死体遺棄に及んだ経緯や動機等、被告人にとって酌むべき事情は裁判等で的確に主張すべきでしょう。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20240904/1030030443.html

第4 他の関連罪との関係性

1 殺人罪等との関係

前記のとおり、死体遺棄の典型的なケースとして、殺人や傷害致死等の犯罪を犯した上、その発覚を免れるために被害者の遺体を遺棄するというパターンがあります。

こういった場合、捜査機関としては、ゆくゆくは殺人等での逮捕や起訴も見据えつつも、まずは死体遺棄で逮捕し、捜査を進めていくという手法をとることがしばしば見受けられます。報道等で明らかに殺人等であると思われるのに、なぜ死体遺棄で逮捕なのだろうと感じられた方もいるかもしれませんが、勾留の期間は限定されているため、まずは死体遺棄の事実で逮捕・勾留して、その間に殺人罪の捜査も併せて行い、殺人の嫌疑が固まり次第、改めて殺人罪で逮捕・勾留等するという場合があるのです。

なお、裁判となった場合には、死体遺棄は殺人等と「併合罪」の関係にあるとされており、殺人のみの場合等より重い処罰となりえます。

2 墳墓発掘死体損壊等罪

単純に死体遺棄をした場合でなく、お墓を掘り起こした上で死体遺棄や死体損壊をした場合、刑法192条が定める「墳墓発掘死体損壊等」というより重い罪で処罰されることとなります。

具体的には法定刑が3月以上5年以下の拘禁刑とされており、実刑もかなり視野に入ってきうる内容となっています。

第5 死体遺棄事件における弁護士の重要性

1 情状面に関する弁護活動

先に述べたとおり、死体遺棄のみであっても、内容次第では実刑となりえます。記事中でも触れた事例では、葬儀費用の捻出できないという動機や、亡くなられた方の年金もそのまま受け取れると考えていたといった点が指摘されていたようです。

他方で、出産した嬰児の遺体を若年の女性が放置していたといった事案で、精神的な混乱があったこと等を踏まえ執行猶予とされたという事例もあります。

死体遺棄で起訴されるか否かや、判決で執行猶予が付されるか否かの場面では、前科や前歴等のみならず、どのような経緯・理由で死体遺棄に及んだのか、当時の経済状況や精神状況等に酌むべき点があったのか、あるいは利欲的な目的や身勝手な理由にすぎないと評価されるのかといった点も重要であり、的確に事情を整理し、主張していく必要があります。

2 他の犯罪の嫌疑も生じている可能性

死体遺棄の場合、前提として誰かしらの「死体」が存在します。

それがゆえ、少なくない場合において、その「死体」は殺人や傷害致死等の被害者ではないか、という疑いが生じえます。

また、強く意図して殺害したりしたという疑いまではなくとも、「まだ助かる状態だったのに何もせず放置したのではないか」といった疑いもありえ、状況次第では不作為の殺人や保護責任者遺棄致死での立件も検討されるおそれもあります。

当然ながら、これらは非常に重い罪であり、起訴されて有罪となれば長期の服役等になりえますし、これらの事実で逮捕されたと報道されるだけでも極めて重大な影響が生じかねません。

死体遺棄の疑いで捜査されているという場合には、このような重大な犯罪の疑いも抱かれているかもしれないという可能性も想定し、早い段階から弁護士のアドバイスを受け、適切に対応していく必要があるでしょう。

第6 お気軽にご相談ください

死体遺棄罪で捜査対象となっている方ご本人や、ご家族が捜査対象となっている場合、早期に適切な対応ができるかで事件の結末は大きく変わりえます。

上原総合法律事務所は、元検事(ヤメ検)の弁護士8名(令和7年6月1日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

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