「ファスト映画」をユーチューブに投稿したとして、著作権法違反容疑で逮捕された男性が、映画会社のうち1社に対して1000万円超の賠償金を支払うことになった。
男性は、知人に依頼されて、報酬を受けながらファスト映画のナレーションを行っていた。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082601014&g=soc
ファスト映画とは、一つの映画について、その映像や静止画を切り貼りし、10分から15分程度にまとめたうえで、字幕やナレーションをつけ、内容の「ネタばれ」をする動画のことを指します。
映画は、著作権法上、著作物として保護の対象となっており(著作権法10条1項7号)、著作者が、「上映権」「公衆送信権」「頒布権」等を専有しています。
したがって、著作者の許可を得ずに、ファスト映画を作成し、インターネット上にアップロードすることは、著作者が占有している著作物に対する権利を害しており、著作権法違反として刑事上民事上の責任を問われる可能性が高いということです。
本件報道によると、この男性は、ファスト映画にナレーションを付けただけであったとされています。
このように直接ファスト映画をアップロードしたわけではない人も刑事上の責任を問われることがあります。
この点について、刑法上は、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。(刑法60条)」と規定しており、犯罪行為の一部を分担した者は共犯として処罰の対象になります。
本件の男性は、ナレーションを録音するという形で著作権法違反の行為の一部を分担していると考えられ、共犯に当たることになります。
本件報道によると、男性は、1000万円を超える高額な賠償金を支払うことになったとされていますが、著作権法違反に問われた場合常にこのような高額な賠償金を支払うことになるわけではなく、あくまで、著作権者に生じた損害について賠償する責任を負います。
この「著作権者に生じた損害」については、立証が困難な場合も多いことから、損害額を推定する規定が設けられています(著作権法114条)。
その推定方法はいくつかありますが、もっともわかりやすいものをご紹介すると、「著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。(著作権法114条2項)」というものです。これを簡単に言うと、著作権を侵害している者が、著作権侵害により、お金儲けしている場合は、その儲けたお金が「著作権者に生じた損害」であると推定されるということです。
もちろん、根拠があれば、この推定額を超える損害賠償請求も可能です。
一般的に、著作権侵害が大々的になればなるほど損害賠償請求も多額になる傾向にあります。
本件報道でも述べられているように、この男性は「友達のお願いを聞いている感じ」で著作権侵害をしてしまい、結果として捜査機関による摘発を受け、多額の賠償金も支払うことになりました。
このような結果を避けるためには、自分が著作権法違反を犯したかもしれないと思った時点で専門家に相談することが必要です。
弊所では、元検事率いる弁護士チームが、その知識と経験から、著作権法違反にあたるのかの調査や仮に著作権法違反にあたる場合にどうすればよいか等についてのアドバイス、事案解決のためのお力添えができます。
著作権違反をしてしまった可能性がある方、実際に著作権法違反で訴えられている方や自身の著作権が侵害されて困っている方はお気軽に弊所にご相談ください。
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