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検察官の処分の一つに、略式起訴(略式命令の請求)というものがあります。
略式起訴は、以下の3つの要件を満たす事件であればすることができます。
① 簡易裁判所の管轄に属する事件であること
② 法律上、100万円以下の罰金または過料が定められている罪であること
③ 被疑者が略式起訴に同意していること(異議がないこと)
略式起訴と正式裁判(公判請求)との最も大きな違いは、テレビドラマなどで見るような「裁判所での裁判が開かれない」という点にあります。
そのため、被告人として公判廷に出廷する必要はなく、検察官や裁判官から質問されて、それに答えるという手続(被告人質問)や、家族・友人などに出廷してもらって「今後、被告人を監督していきます」と話してもらう手続(証人尋問)もありません。
一方で、裁判官に直接言いたいこと、自分にとって有利な事情を伝える機会は保障されていませんので、検察官が起訴したとおりの事実で罰金の有罪判決となるのが通常です。
なお、実務上、検察官は略式起訴をする段階で裁判所に希望する罰金額を伝えており、原則としてそのとおりの金額で罰金判決が言い渡されています。
こうした略式起訴と正式裁判との違いを踏まえると、略式起訴のメリット・デメリットとして、以下のように整理できます。
・裁判所に行く必要がない
・正式裁判に比べ、早期に解決する(在宅事件の場合でも略式起訴から1〜2月程度)
・裁判段階の弁護士費用がかからない
・原則として罰金の有罪判決になる
・裁判官に言いたいことや有利な事情を伝える機会がない
なお、略式起訴であれば職場や家族にバレない、実名報道されないというネット記事等がありますが、職場や家族に連絡をするかや、マスコミへの情報開示は捜査機関の判断(捜査のために必要かどうか、ニュースバリューがあるかどうか)ですので、絶対にバレない、報道されないということはありません。
ご心配な方は、経験豊富な弁護士に相談されることをおすすめします。
略式起訴であっても前科はつきます。
略式命令というのは、裁判所での裁判を開かない簡単な(略式の)手続というだけですので、略式起訴されて有罪判決を受けた場合は、正式裁判で有罪判決になったときと同じく前科になります。
ですので、「絶対に前科をつけたくない」という場合には、早急に弁護士に相談し、略式起訴がされる前に被害者と示談をするなど、不起訴処分の獲得を目指した活動をしていくことが必要です。
略式起訴になるのは「罰金相当の事件」で、かつ、「被疑者が犯罪事実を認めている場合(自白事件)」です。
略式起訴がされるケースで多いのは、万引き、痴漢、盗撮、暴行、傷害、過失運転致傷(交通事故)、酒気帯び運転、無免許運転、ゴミの不法投棄、銃刀法違反などの事案です。
ただし、これらの犯罪であれば必ず略式起訴というわけではなく、事案の内容や示談ができているか、同種前科の有無・回数などによって変わってきますので、ご自身の状況に応じて経験豊富な弁護士に相談するのがいいでしょう。
なお、詐欺罪や業務上横領罪、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪には罰金刑がありませんので、略式起訴になる可能性がないため、示談をすることなどによって、不起訴や執行猶予を目指していくことになります。
略式起訴になる場合、通常は、検察官から取調べに呼ばれた当日か、取調べの後日にもう1回呼び出しがあり、「略式起訴で構わない」ということが書かれた書面(実務ではこの書面を「略請(りゃくうけ)」と呼んでいます。)に署名・押印をするよう求められます。
この際に、検察官から、「あなたの事件は略式起訴にするのが相当だと思っています。」「略式起訴というのは〜という手続です。」「もし結果に不服があれば、結果の告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができます。」などと手続についての説明がありますので、もし心配な点があれば遠慮せずに検察官に確認してください。
略請に署名・押印をした後は、逮捕されている身柄事件の場合は勾留期間の最終日頃に、在宅事件であれば概ね2週間以内に検察官が略式起訴をします。
身柄事件の場合は、略式起訴当日に裁判所が「〜万円を支払え。」という略式命令を出し、その罰金額を納付することで釈放されるという流れが通常です。
逮捕されている本人は罰金額の持ち合わせがないということが多いと思いますが、罰金額を把握している検察官が、事前に弁護人や被疑者の親族等に現金を準備するよう伝えておくのが通例です。
在宅事件の場合は、略請の作成から概ね1〜2月以内に、自宅に起訴状、略式命令、納付書が届きますので、納付期限(2週間後に指定されていることが多いです)内に納付してください。
略式手続で言い渡される罰金は1万円〜100万円です。
犯罪白書などで罰金額の統計が公表されていますが、概して20万円〜50万円がボリュームゾーンとなっています。
罰金額が50万円を超えることは珍しく、一部の過失運転致傷(交通事故)事案で70〜80万円となることがあります。
万引きや盗撮であれば20万〜50万円、酒気帯び運転や無免許運転であれば30万円〜50万円などある程度の傾向はありますが、どの程度の罰金額が想定されるかという点は、事案の内容や示談ができているか、同種前科の有無・回数などによって様々です。
どのような罰金刑になりそうかをお知りになりたい方は、専門的知識を有する弁護士に相談し、見通しなども含めて適切な助言を受けることをおすすめします。
罰金を払えない場合は、労役場留置又は強制執行を受けることになります。
まず、納付書記載の納付期限内に罰金を支払わない場合、検察庁から督促状が届きます。
その督促状の支払期限内にも支払えない場合には、一般的には労役場留置の手続に進むことが多く、検察庁から呼び出しの連絡があります。
この呼び出しを受け、①任意で出頭する、②出頭を拒否し、自宅等に検察庁職員が来て強制的に身柄拘束されるのどちらかの流れで労役場に留置され、労役場で1日あたり5000円〜1万円の換算で罰金額に満まで軽作業をすることになります。
なお、罰金刑を期限内に支払うことが難しい場合、分割払いの相談をすることも一応できますが、懲役刑の分割(例えば毎年8月の1か月だけ刑務所で服役するなど)ができないのと同様、検察庁は原則として分割払いには応じてくれません。
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年9月1日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
所属弁護士全員が刑事事件について熟知しており、独自のノウハウにより、「罪を犯してしまったが示談等して事件をなるべく穏便に解決させて再出発したい」「罪を犯していないので冤罪を受けないようにしたい」といった方々の弁護をしています。
窃盗罪や詐欺罪などはもちろん、性犯罪、背任罪、脱税、談合事案等に至るまで幅広く取り扱っており、たくさんの事件を不起訴や執行猶予に導いていますので、刑事事件でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
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