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宅建士が逮捕されたら

宅建の欠格事由とは。
不動産業界や金融機関で重宝される宅建士。
正式名称は、宅地建物取引士と言います。
宅建士の主な仕事は、不動産取引の際の重要事項の説明、重要事項説明書や契約書への記名押印です。
毎年約20万人が受験し、すでに10月の試験に向けて勉強に励まれている方も多いのではないでしょうか。
宅建には受験資格は特になく、誰でも受験は可能ですが、合格したとしても一定の欠格事由が存在します。
欠格事由とは、宅建業免許や宅建士登録を受けられなかったり、又は取り消されたりする事柄のことを言います。
さまざまな事柄が規定され、そのなかに刑事事件に関するものが存在します。
そこで、元検事である弁護士が、刑事事件に関わる宅建業法の欠格事由について詳しく解説いたします。
この欠格事由は、宅建試験でも問われる箇所でもありますので、今年受験される方の参考にもなればと思います。

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1 宅建業免許の欠格事由(要件)とは。

宅建業法では、宅建業免許(第3条)と宅建士登録(第18条)について、欠格事由が規定されています。
これらの規定には、破産して復権を得ない者や暴力団員など、さまざまなことが規定されています。
このうち、刑事事件と関係するのは、以下の2つの規定です。
➀禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり・・・・5年を経過しない者
②宅建業法又は一定の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり・・・5年を経過しない者
どちらも「刑に処せられ」と定められていることから、逮捕、勾留、裁判を受けることになっただけでは、欠格事由に該当することはありません。
それでは、2つの規定を1つずつ説明いたします。

⑴ 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり・・5年を経過しない者

刑法では刑罰の種類として、「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収」が規定されています。
宅建業法では「禁錮以上の刑」と規定されていますので、死刑、懲役・禁錮(執行猶予を含む)の刑に処せれられた場合、「禁錮以上の刑」に該当することになります。
次に「その刑の執行が終わり」とは、懲役又は禁錮で実刑判決を受けて刑期を満了したことを意味します。
また、この規定では「●●の罪を犯した」と罪の種類は定められていません。
そのことから、詐欺罪であろうと、窃盗罪であろうと、なんらかの罪を犯して禁錮以上の刑に処せられると該当することになります。

たとえば、詐欺罪で懲役1年の実刑に処せられ場合では、刑務所を出所してから5年間は宅建業免許や宅建士登録はできないことになります。

では、執行猶予判決の場合はどうなるのでしょう。
執行猶予付判決を受けた場合も「禁錮以上の刑に処せられ」に当たるため、執行猶予付判決を受けると、宅建業免許等を受けられなかったり、取り消されたりします。
ここで、勘違いしがちなのが「刑の執行が終わり=執行猶予期間が経過」と考え、執行猶予期間経過後から5年間、宅建業免許等を受けられないと考えてしまうことです。
執行猶予の場合、期間が経過すれば、刑の言い渡しの効果は将来に向かって消滅します(刑法第27条)。
そのため、期間が経過すれば、そもそも「禁錮以上の刑に処せられ」に該当しないこととなります。
したがって、執行猶予期間経過後はすぐに宅建業免許等を受けることができます。

⑵ 宅建業法又は一定の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わり・・5年を経過しない者

宅建業法では、「一定の罪」として、傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備就業罪、脅迫罪、背任罪等が定められています。
なお、過失により傷害をした過失傷害罪がありますが、こちらは含まれません。
次に「罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わり」とは、罰金を払い終わった日又は罰金を払えない場合は労役場に留置されるため、労役場を出た日を指します。

たとえば、傷害罪で罰金の刑に処せられた場合では、罰金を払い終わった日から5年間は、宅建業免許や宅建士登録はできないことになります。

そして、これらの2つの規定に該当する個人が宅建業免許等を受けられないのはもちろんのこと、法人の役員(非常勤も含む)又は政令で定める使用人に該当する者がいる場合、法人は宅建業の免許を受けることができませんので注意が必要です。

2 宅建業者、宅建士が気をつけるべき刑事事件

欠格事由の観点から、気をつけるべき刑事事件は傷害罪と暴行罪ではないかと考えます。
暴力的犯罪は、日常生活を営む中の些細な言動で発生しやすいものです。
事実、毎年数万件の事件が発生しています。
特に、不動産業界の方はお酒を飲む機会が多く、お酒を飲んだ後、会社の方やお客様と別れた後に気が緩み、通行人やタクシー運転手とトラブルになり、暴行・傷害事件を起こしてしまう、という事件は頻繁にあります。
そして、暴力的犯罪には当然のことながら、被害者が存在します。
被害者のいる刑事事件は、被害者と示談ができれば不起訴処分になる可能性が高い一方、できなければ起訴される可能性が高くなりものです。
宅建業法では、傷害罪や暴行罪で罰金刑に処せられるだけで、宅建業免許や宅建士登録が取り消されます。
そのため、これらの刑事事件を起こされた際は、速やかに弁護士にご相談ください。示談成立に向けて、全力で交渉をいたします。

3 元検事率いる弁護士チームにできること

上原総合法律事務所では、宅建士その他の有資格者、公務員、上場企業の従業員など、どうしても事件を解決したいという方の多数のご相談を受け、解決しています。迅速にご相談をお受けしますので、お気軽にご相談ください。

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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