証拠隠滅罪とは?成立要件や刑罰、弁護活動について

基礎知識
[投稿日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

証拠隠滅罪とは、刑事事件に関する証拠を隠したり、破壊したり、改ざんしたりする行為を罰する犯罪です。

この記事では、証拠隠滅罪の概要、具体例、成立要件、刑罰、逮捕の可能性、自分の証拠を隠滅した場合の特例や証拠隠滅罪を犯してしまった時になしうる弁護活動について元検事の弁護士(ヤメ検)が詳しく解説します。

第1 証拠隠滅罪とは

証拠隠滅罪の概要

証拠隠滅罪については、刑法第104条で、「他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者」を罰すると定められています。
このように、証拠隠滅罪は、刑事事件の捜査や裁判の公正さを守るために定められた重要な規定です。
この罪に該当する行為は、捜査機関が犯罪を立証するために必要な証拠を隠したり、破壊したり、改ざんしたりすることです。
条文に「他人の刑事事件に関する証拠」と定められていることからも明らかなように、証拠隠滅罪は、他者の刑事事件に関する証拠の隠滅等を行った場合に成立するもので、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅等を行った場合には成立しません
なお、自己の刑事事件に関する証拠を隠滅等した場合の注意点については、後述する「第5 自分の証拠を隠滅しても大丈夫?」で詳しく説明します。

証拠隠滅の具体例

以下は、証拠隠滅罪が成立する可能性のある具体的な行為の一例です。

  1. 防犯カメラの映像の削除
    事件の重要な証拠となる防犯カメラの映像を意図的に削除する行為。
  2. 凶器の処分
    犯行に使われた凶器を捨てたり、隠したりする行為。
  3. 文書やデジタルデータの改ざん
    不利な証拠となる契約書等の文書やメール等のデジタルデータを改ざんする行為。

第2 証拠隠滅罪の成立要件とは

証拠隠滅罪が成立するためには、以下の要件が満たされる必要があります。

  1. 他人の刑事事件に関する証拠であること
    隠滅等の対象は、他人の刑事事件に関連する証拠でなければなりません。
    証拠には、物的証拠(防犯カメラの映像、凶器や文書等)だけでなく人的証拠(被害者や目撃者等証人の証言等)が含まれます。
  2. 故意に証拠を隠滅等すること
    証拠を隠滅等する行為が、偶然ではなく故意で行われる必要があります。
    たとえば、何も知らずに証拠を廃棄した場合は、故意を欠くので罪に問われません。
  3. 第三者が行ったこと
    前述のとおり、証拠隠滅罪は、本人以外の第三者による隠滅行為を処罰対象としています。
    繰り返しになりますが、犯人自身が証拠を隠滅等した場合には、証拠隠滅罪は成立しません。詳しくは、後述する「第5 自分の証拠を隠滅しても大丈夫?」で説明します。

    第3 証拠隠滅罪の刑罰

    証拠隠滅罪の刑罰は、以下のとおりです。

    ・懲役刑:3年以下の懲役
    ・罰金刑:30万円以下の罰金

    刑罰の重さは、証拠隠滅等の行為の悪質性、反復性や事件の重大性等に基づき、検察官が決定します。
    例えば、多数の証拠を隠滅等した場合、繰り返し何度も証拠を隠滅等した場合や重大犯罪を立証するための重要な証拠を隠滅等した場合には、行為が悪質であり、かつ、事件も重大であると判断され、比較的厳しい刑罰が科せられてしまう可能性があります。

    第4 証拠隠滅罪の逮捕の可能性

    前述のとおり、証拠隠滅罪は、最大で3年以下の懲役が科せられる可能性のある重大な犯罪といえます。
    このため、罪証隠滅罪を犯した場合、場合によっては逮捕されることも十分にあり得ます。
    特に、以下のような場合には逮捕されるリスクが高まります。

    逮捕を避ける方法についてはこちらをご覧ください

    釈放される方法についてはこちらをご覧ください

    1. 隠滅行為等の悪質性が大きい場合
      重要な証拠を意図的に廃棄したり改ざんしたりする行為は、隠滅行為等の悪質性が大きいと判断され、逮捕の可能性が高まります。
    2. 反復して隠滅行為等を行った場合
      証拠隠滅等の行為を何度も繰り返した場合にも逮捕の可能性が高まります。
    3. 事件の重要性が高い場合
      殺人や重大な詐欺事件など、重大犯罪に関連する証拠を隠滅した場合にも逮捕の可能性が高まります。
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    第5 自分の証拠を隠滅しても大丈夫?

    これまで述べてきたとおり、証拠隠滅罪は、「他人の刑事事件に関する証拠」を隠滅等した場合に成立する犯罪です。
    すなわち、第三者が証拠を隠滅等する場合に適用されるため、犯人自身が自分の証拠を隠滅等しても罪に問われません

    ただし、以下の点には注意が必要です。

    • 犯人が共犯者の証拠を隠滅等した場合:この場合は証拠隠滅罪に該当します。
    • 隠滅等の行為が捜査妨害とみなされる場合:別の罪に問われる可能性があります。

      犯人が証拠を隠滅等する行為は倫理的に問題があるだけでなく、前述のとおり別の犯罪が成立する可能性もあるため、慎重に行動すべきです。

      第6 証拠隠滅罪の弁護活動

      証拠隠滅罪に問われた場合、弁護士は以下のような弁護活動を行います。

      1 事実関係の確認

      まず、隠滅等の行為が本当に証拠隠滅罪に該当するのかを確認します。
      例えば、意図して隠滅行為を行ったわけではない場合や、隠滅等したものが重要性が低い証拠であった場合等には、罪に問われない可能性があります。

      2 動機や背景の主張

      たとえば、家族や友人を守るために行った場合等、隠滅行為の動機が特別な事情によるものであった場合、その背景を捜査機関や裁判所に主張し、少しでも罪が軽くなるように働きかけます。

      3 示談交渉

      隠滅行為によって被害が生じた場合、被害者との示談を成立させることで、処罰が軽減される可能性があります。

      4 再発防止策の提示

      再発を防ぐための具体的な行動計画を捜査機関や裁判所に示すことで、寛大な処分を求めます。

      不起訴にする方法についてはこちらをご覧ください

      第7 お気軽にご相談ください

      上原総合法律事務所は、元検事 8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

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