
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
目次
第1 拘禁刑とは
拘禁刑は、2025年6月の刑法改正により導入される新しい刑罰制度です。
これまでの“懲役”と“禁錮”が一本化され、新たに拘禁刑として統一されます。
この刑罰は、犯罪者を一定期間拘禁し、必要に応じて労役や社会復帰のための教育プログラムを課すものです。
2025年の刑法改正による変更点これまでは、懲役は労役が義務付けられる刑罰、禁錮は労役が伴わない刑罰と分かれていました。
しかし、懲役と禁錮の区分は受刑者や社会にとって分かりにくいという声がありました。
拘禁刑はこの問題を解消し、労役の有無を個別の受刑者の状況に応じて柔軟に対応する制度に変わります。
懲役刑と禁錮刑の一本化の背景刑罰を一本化する背景には、受刑者の更生をより効果的に支援するための目的があります。
懲役と禁錮を一本化することで、刑務所内での教育や労役が受刑者の更生に与える影響を最大化し、再犯防止につなげる狙いがあります。
第2 拘禁刑が導入される理由
懲役と禁錮の違いと問題点従来の懲役刑は労役が義務付けられる一方で、禁錮刑は労役がないため、受刑者間での待遇に差が生じることが問題視されていました。
また、罪の重さや受刑者の状況に応じた柔軟な対応が難しいという課題もありました。
拘禁刑の導入は、刑罰の一貫性を高めるだけでなく、受刑者の社会復帰をよりスムーズにすることを目的としています。
労役の有無を個別に決定できるため、受刑者のニーズに応じた矯正プログラムが提供されます。
海外の刑罰制度との比較欧米諸国では、刑罰において労役の有無を柔軟に決定できる制度が一般的です。
このような先進的な制度に学び、日本でも拘禁刑の導入が決定されました。

第3 拘禁刑の具体的な内容
実際の受刑者の生活拘禁刑の受刑者は、刑務所内で一定期間拘禁され、必要に応じて労役や教育プログラムを受けます。
労役には工場作業や農作業が含まれ、教育プログラムでは職業訓練や社会復帰のための講義が提供されます。
労役の有無と教育・矯正プログラム拘禁刑では、受刑者の健康状態や犯罪の内容に応じて労役が免除される場合があります。
一方で、全ての受刑者が教育プログラムに参加することが義務付けられます。
受刑者に求められる遵守事項受刑者は、刑務所内での規則を遵守し、矯正プログラムに真摯に取り組むことが求められます。
これを怠ると、仮釈放の可能性が低下する場合があります。
第4 拘禁刑が科される対象
拘禁刑に該当する犯罪例拘禁刑は、窃盗、傷害、詐欺などの刑事事件に適用されます。
また、再犯のリスクが高い場合にも適用されることがあります。
実刑と執行猶予の適用範囲拘禁刑は、裁判所が犯罪の内容や被告人の反省状況を考慮して実刑または執行猶予を決定します。
執行猶予が付与される場合、一定の条件下で拘禁刑が免除されます。
初犯者と再犯者での処遇の違い初犯者には執行猶予が付与されることが多い一方で、再犯者の場合は実刑が科される可能性が高くなります。
第5 拘禁刑の期間と刑期の決定方法
刑期の長さの基準刑期は犯罪の内容や被害の程度に応じて決定されます。
軽微な犯罪では数ヶ月、重大な犯罪では数年以上の刑期が科されることがあります。
犯罪の重さによる刑罰の違い重大な犯罪の場合、拘禁刑の期間が長期化する傾向があります。
また、被害者への賠償や反省の態度も刑期に影響を与えます。
刑期短縮や仮釈放の可能性受刑者が模範的な態度を示した場合、刑期の短縮や仮釈放が検討されることがあります。
ただし、これには一定の条件が伴います。
第6 拘禁刑と懲役・禁錮の違い
拘禁刑は、従来の懲役刑と禁錮刑の要素を統合したものです。
共通点としては、犯罪者を拘束する点がありますが、拘禁刑では労役が必須ではない点が異なります。
拘禁刑への移行による受刑者の影響受刑者にとって、拘禁刑の導入により労役が柔軟に適用されるようになるため、矯正プログラムをより効果的に受けることが可能になります。
第7 拘禁刑と社会復帰への影響
仮釈放後、受刑者は更生プログラムを受けることで社会復帰を目指します。
このプログラムには職業訓練やカウンセリングが含まれます。
社会復帰支援と再犯防止の取り組み拘禁刑では、受刑者が再び犯罪を犯さないようにするための支援が強化されています。
これには、就労支援や住居支援が含まれます。
拘禁刑がもたらす社会的な課題一方で、拘禁刑の導入により刑務所の収容人数が増加する可能性があるため、社会的な課題として議論されています。
第8 拘禁刑についてのよくある質問
なぜ懲役と禁錮を一本化するのか?
受刑者の更生をより効果的にするため、懲役と禁錮を一本化して拘禁刑としました。
拘禁刑はどのように執行される?
受刑者は拘禁され、矯正プログラムや労役に参加します。労役の有無は個別に判断されます。
仮釈放中の遵守事項は?
仮釈放中、受刑者は定められた行動規範を守る必要があります。
これを守らない場合、再収監される可能性があります。
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