控訴と上告の違いとは?元検事(ヤメ検)の弁護士が語る刑事事件における上訴手続きのポイントと成功の秘訣

基礎知識
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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

刑事事件において、第一審の判決に納得がいかない、または控訴審の結果に異議を申し立てたいとお考えの方へ。
控訴や上告は、裁判所の判断を覆すために非常に重要な手続きです。
この記事では、控訴と上告の違いを詳しく解説し、それぞれの手続きでどのように弁護士がサポートできるかをご説明します。
元検事(ヤメ検)の視点を活かした弁護戦略で、より良い結果を目指しましょう。

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1 上訴とは? 控訴と上告を分かりやすく解説

上訴とは何か?

裁判において「上訴」とは、下級裁判所の判決に不服がある場合に、上級裁判所において再度判断を求める手続きです。
日本では三審制が採用されており、最大で3回まで裁判所に判断を求めることが可能です。

まず、簡単に上訴についてご説明します。

上訴の種類

刑事事件では以下の2つの上訴手続きがあります。

1.控訴

第一審(地方裁判所)の判決に不服がある場合に行う手続き。
控訴されると、事件が地方裁判所から高等裁判所に移行します。
控訴審においては第一審でなされた判決の当否について審理されます。
主に量刑(刑罰の重さが適切か)や第一審裁判所の事実認定(証拠からどのような事実が認定されたか)を争うことになります。
なお、高等裁判所は日本全国で8つのみ(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)存在します。

2.上告

控訴審の判決に不服がある場合に行う手続き。
上告されると、事件が高等裁判所から最高裁判所に移行します。
憲法に反する判断や、過去の判例と異なった判断がされた場合など、法律の適用や解釈が中心の審理となります。
最高裁判所は、東京に1つのみ存在します。

民事裁判と刑事裁判における上訴の違い

日本の司法制度においては、刑事裁判以外にも民事裁判という手続きが存在します。

民事裁判と刑事裁判どちらも三審制が採用されている点は同じですが、その性質には大きな違いがあります。

民事裁判では、控訴審においても、一審と同じように新しい証拠を提出することができますし、事案全体について裁判官が判断することができます。

このような仕組みを「続審」といいます。第一審に引き続いて控訴審でも審理を続けるイメージです。

これに対して、刑事裁判は「事後審」と呼ばれています。

事後審とは、第一審で認定された事実に基づいて、第一審の判決内容が正しいか否かを事後的に判断する審理方法のことを言います。

事後審が採用されている日本の刑事訴訟法においては、原則的に控訴審において新しい証拠を提出することができません。

したがって、第一審における訴訟戦略が非常に重要になります。

上訴を行うメリット

誤判の訂正:証拠の再評価や一定の条件のもとで可能な新証拠の提出により、事実認定や量刑が見直される可能性があります。

法律の正確な適用:法律の適用が誤っている場合、それを是正できます。

上訴には慎重な準備と正確な法的知識が必要であり、弁護士の役割が極めて重要です。

2.控訴とは? 要件、手続き、判決を知る

控訴の目的と意義

控訴は、第一審の結果に不服がある場合に行う手続きで、「高等裁判所」で再審理が行われます。
第一審での誤った事実認定や量刑の不当性を主張し、判決を覆すことが目的です。

控訴が必要な場合とは?

事実認定に誤りがある場合:たとえば、目撃証言が誤って評価された場合や、証拠が十分に検討されていない場合

量刑が不当である:判決の刑罰が重すぎる、または軽すぎると感じる場合

法律適用の誤りがある:法律の解釈や適用に誤りがある場合

控訴の手続き

1.控訴申立書の提出
控訴をする場合は、判決言い渡し日の翌日から数えて14日以内に「控訴申立書」を提出します。
このとき注意しなくてはならないのは、控訴申立をするのは高等裁判所に対してではなく、第一審の判断を行った地方裁判所に対してする必要があるということです。
また、14日間の期限を過ぎると控訴はできなくなるので注意が必要です。

2.控訴趣意書の作成と提出
控訴申立てをした後は、「控訴趣意書」を作成し、提出する必要があります。
控訴趣意書には、第一審の判決が誤っている点を具体的に記載します。
前述のとおり、日本の刑事手続きにおける控訴審は「事後審」ですから、第一審の判決内容にどのような間違いがあるのかという点を法的に詳しく記載する必要があります。
また、第一審において提出することができなかった証拠については、一定の条件のもとで控訴審に提出することができます。
控訴趣意書の作成と共に、新しい証拠を提出する場合は当該証拠が第一審において提出できなかった理由などを記載した「事実調請求書」を作成し、提出します。
なお、これらの書面については高等裁判所から提出期限を定められますが、理由があればその期限を延長してもらうこともできるので、控訴趣意書の作成は十分に吟味して行うべきでしょう。

3.控訴審の審理
高等裁判所では、控訴趣意書に記載された内容を基に、第一審の判決に誤りがあるか否かを判断します。
控訴審では、弁護側が新たな証拠を提示したり、証人尋問を求めることも可能です。
しかし、ほとんどの場合、新しい証拠を取り調べる条件が満たされていないと判断され、実質的な審理がなされることはありません。
裁判所が、当事者に対して、主張の内容を「事前に提出された書面のとおりということでいいですね。」などと簡単に確認するのみで、短時間で終了します。

控訴の成功例

被告人・弁護人側で控訴する場合のもっとも多い類型が「量刑不当」を主張する場合です。
量刑不当とは、「第一審判決で示された量刑が重すぎる。」という意味です。第一審裁判所において、本来は量刑上考慮されるべきでない事実が考慮されて罪が重くなってしまっている場合や、第一審判決後に被害者と示談が成立した場合などは第一審判決の量刑が不当であるとして、改めて控訴審において判断がされることがあります。

ある窃盗事件で、第一審で懲役2年の実刑判決が下されたが、その判決後に被害者との間で示談が成立したとして、控訴審で執行猶予付きの判決に変更された事例があります。
このケースでは、控訴審において、示談が成立したという新証拠の提出と被告人の情状を詳細に説明することで、判決が大きく変わりました

実刑判決が出てしまっている場合、被告人はすでに収監されていることが多いですし、仮に収監されていないとしても、被告人が直接被害者と示談交渉をすることはほとんどありません。
そこで弁護人が控訴を申立て、控訴審が行われるまでの間に被害者と示談を進めることが有用です。

3.上告とは? 控訴審との違いと最高裁の役割

上告の目的

上告は、控訴審での判決に不服がある場合に、「最高裁判所」で法律の適用や解釈を争うための手続きです。
事実関係ではなく、法的な論点が審理の中心になります。

上告の種類

上告には、「上告提起」と「上告受理申立て」があります。

法的には違う概念ですが、ここでは簡単な違いの説明にとどめます。

まず、「上告提起」とは、控訴審の判断に憲法違反がある場合か重大な訴訟手続きの違反があった場合に限られます。

これに対して「上告受理申立て」は、判例(過去に最高裁判所が下した裁判)違反や法令解釈に関する重要事項に関する場合に行われます。

・上告提起

憲法違反、重大な訴訟手続き違反

・上告受理申立て

判例違反、法令解釈に関する重要事項

上告の手続き

1.上告状または上告受理申立書の提出

行おうとする手続きにしたがい、上告提起の場合は上告状を、上告受理申立ての場合は上告受理申立書を控訴審判決の正本が送達された日の翌日から14日以内に控訴審裁判所に対して提出する必要があります。

2.上告理由書または上告受理申立理由書の作成

上告状等の形式的な内容に不備がなければ、次は上告理由書または上告受理申立理由書を作成して提出します。控訴審での法律適用の誤りや手続き違反を具体的に主張します。
法的論点が中心となるため、専門的な知識が求められます。

3.最高裁判所での審理

最高裁で実際に審理が行われることはまれで、控訴審判決が破棄される(判断がひっくり返る)確率は、全体の1%未満と言われています。

4.控訴審・上告審での弁護活動 元検事弁護士(ヤメ検)の戦略

控訴審や上告審での弁護活動は、第一審以上に高度な法的知識と戦略が求められます。
元検事の視点を活かした弁護士の活動内容を具体的にご紹介します。

1.控訴審での弁護活動

新証拠の発掘と提出

控訴審において、第一審の判断を覆すような新しい証拠が存在する場合は、これを提出する必要があります。

しかし、前記のとおり刑事控訴審は原則として新たな証拠の提出ができません。

したがって、第一審で提出しなかった(またはできなかった)証拠を提出するためには、第一審において提出することができなかった具体的な理由等を事実調請求書に記載して提出することが必要になります。

典型的な例は、第一審判決後の被害者との示談です。

第一審判決の後に示談している以上、その証拠は第一審判決前には提出することができなかったものであるとして、控訴審において証拠調べを求めることができます。

他にも、第一審判決前にはその存在自体が明らかではなかった目撃者等についても新証拠となり得る場合があります。

これらの証拠を収集し、事実調請求書に説得的な内容を記載することで初めて控訴審での判断が第一審判決を覆す可能性があります。

控訴審の審理によって第一審の判断をくつがえすことは非常に難易度が高く、信頼できる弁護人を見つけることが重要です。

2.上告審での弁護活動

・適切な上告状等の作成

上告はほとんどの場合審理自体がされません

それは上告の理由自体が存在せず、法的に適切な上告状等を作成することが困難であることに由来します。

弁護人は、事件の内容を網羅的に把握し、原審の判断の誤りを形式的に適切な方法で示す必要があります。

法的論点の明確化

上告審においては、憲法違反や判例違反が審理の最も大きな争点となります。

そこで、具体的な証拠や事実関係に基づいて何がどのように憲法や判例に反しているのかということについて説得力のある文章を作成する必要があります。

5 【ご相談ください】刑事事件の上訴に強い上原総合法律事務所

上原総合法律事務所は、元検事8名を含む弁護士集団であり、迅速かつ適切な弁護活動で、多くの成功事例を築いています。

また当事務所は、検事としての経験を活かし、検察側の主張を的確に予測して対応することが可能であり、複雑な法的論点にも対応可能な、高度な専門知識を持っています。

刑事事件での上訴を検討している方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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