オンラインカジノで罪に問われた場合の流れ 事件の発覚 オンラインカジノはパソコンやスマホで簡単にアクセスでき、利用し…[続きを読む]

弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
目次
微罪処分とは
微罪処分とは、刑事事件として立件はされたものの、事件を検察庁に送致もせず、警察限りで終わらせる扱いのことです。
通常、刑事事件は警察から検察に送致され、起訴されるか不起訴になるか検察官が判断します。
微罪処分はその例外であり、いわゆる不起訴処分ともまた性質の異なるものです。
微罪処分の要件
法律上は微罪処分の要件が具体的に定められているわけではありません。刑事訴訟法第246条は「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」と定めており、刑事事件は原則検察に送致するという「全件送致の原則」を定めています。
しかし、同条はその但書で「但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。」とも定めています。
また、犯罪捜査規範第198条は「捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。」と定めており、要旨
・検察官が指定した事件
・犯罪事実が極めて軽微
については微罪処分にできるのです。
なお、検察官による指定は個別の事件ごとではなく、類型的に予めなされており、個別具体的に軽微なものかなどの具体的な判断は警察によってなされているのが実情です。
微罪処分の流れ
微罪処分となる場合、それまでの流れに特別なものがあるわけではありません。
被害申告等により犯罪が関知され、刑事事件として立件されて捜査が開始されます。
その中で、被疑者や被害者、参考人の取調べ、現場の検証等が実施され、一定の捜査を遂げると検察に送致されるのが通常です。
ただ、一定の捜査を行った結果、送致の必要もないと判断されれば、微罪処分となって捜査もそこで終結します。
検察へ送致される場合は検察官による被疑者の取調べ等が行われるのが一般的ですし、検察官の指示で追加の捜査が行われることもあります。また、送致までの捜査についてもより高い水準が求められる場合が多いと考えられるところ、微罪処分となる場合の捜査は時間的、量的により簡易なものとなる可能性も大きいといえるでしょう。
また、微罪処分とすべきかの判断に当たっては、被害弁償、再犯のおそれや更生の可能性等も考慮されると考えられるところ、示談交渉や身元引受人の準備等は通常より早めに行う必要性が高いでしょう。
微罪処分の対象となる刑事事件
では、どのような場合に微罪処分がなされるのでしょうか。
犯罪捜査規範は、犯罪事実が極めて軽微であること、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、微罪処分とすることができると定めています(犯罪捜査規範198条)。
例えば、窃盗(万引き)・詐欺・横領・盗品等罪についていえば、
- 被害額が少ないもの(概ね2万円以下)
- 犯情が軽微なもの
- 被害が回復され、被害者が処罰を希望しないもの
- 素行不良者でない者の偶発的な犯行であって再犯のおそれがないもの
といった事情が必要になってきます。
実際に対象となるのは、軽微な万引きや、放置自転車の占有離脱物横領などが多いと考えられます。
また、暴行についていえば、
- 凶器を使用していないもの
- 犯情が軽微なもの
- 被害者が処罰を希望しないもの
- 素行不良者でない者の偶発的な犯行であって再犯のおそれがないもの
といった事情が考慮されます。
偶発的なトラブルでごく軽い喧嘩になったような場合が想定されます。
さらに、賭博罪についていえば、
- 賭けた財物が少ないもの
- 犯情が軽微なもの
- 共犯者の全てについて再犯のおそれがないもの
といった事情の有無が判断基準となってきます。
昨今検挙の多いオンラインカジノの利用も賭博罪に当たる場合がありますが、社会問題となっていることなどから、厳しい判断となる場合も想定されるところではあります。
微罪処分のメリット
微罪処分では書類送検すらなされない
警察は、犯罪の捜査をしたときは、原則として、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければなりません。これを「全件送致の原則」といいます(刑事訴訟法246条)。
警察が被疑者を逮捕して事件を検察官に送致する場合を「身柄送致」といいます。他方で、警察が被疑者を逮捕することなく、事件を検察官に送致する場合を「在宅送致」(いわゆる書類送検)といいます。
微罪処分は、全件送致の原則の例外であり、警察が犯罪の捜査をしたにもかかわらず、その事件を検察官に送致しなくてもよい場合、つまり、書類送検すらなされない場合のことをいいます。
微罪処分は前科にならない
警察が事件を検察官に送致し、検察官が事件を起訴し、有罪の判決(略式命令で罰金となった場合を含みます。)が出されてそれが確定すると、いわゆる「前科」がつくことになります。
ところで、わが国では、起訴・不起訴の判断権限は検察官に委ねられています(これを「起訴独占主義」といいます)。
そのため、微罪処分がなされる場合には、そもそも警察から検察官に事件が送致されないわけですから、検察官が起訴することもありませんし、裁判所が有罪判決を出すこともありません。
そのため、もし微罪処分がなされる場合には、もはや前科がつかないことにもなります。
なお、微罪処分の場合でも、捜査機関の保有する犯歴記録には残ってしまいますが(いわゆる前歴)、この犯歴記録は捜査機関以外が閲覧することはできません。
微罪処分の注意点
前歴は消えない
微罪処分となり、前科が付かなかった場合でも、完全に「なかったこと」になるわけではありません。
前歴としては記録が残り、再び犯罪をしてしまった場合(特に同種の再犯をしてしまった場合)には、処分や判決を検討される上で前歴も考慮されることがありますので、注意が必要です。
微罪処分となったことを証明できる書面等は入手できない
検察に送致された上で不起訴となった場合には、求めれば「不起訴処分告知書」といった書面の発行を受けることができます。
簡易な書面ではありますが、不起訴処分となったことが書面上明らかになっているものです。
他方で、微罪処分となった場合には特段書面等が発行されるわけではありません。
捜査機関には記録として残りますが、それを私人が確認する方法はまずありませんし、微罪処分となったことを明らかにできる書面等が手元には残らないということは留意してください。
民事上の責任等がなくなるわけではない
微罪処分となれば、刑事事件としてはそこで終了し、同じ事件で刑事責任を問われることはまずありません。
しかし、刑事上の責任と民事上、行政上の責任は別のものです。
被害者がいる場合(完全に示談が成立していれば別ですが)、損害賠償等の責任は残りますし、特定の犯罪行為を行ったこと等が行政処分や許可、資格等の喪失につながる場合もあります。
また、犯罪行為が発覚することで、勤務先や学校等から懲戒処分等を受ける可能性も否定はできません。
微罪処分で弁護士が果たす役割
微罪処分となるためには、検察に送致される前の段階で、警察官に送致の必要もない軽微な事案であると判断してもらう必要があります。
当然、なぜ、何をしてしまい、どのような結果となったかがまずは重要ですが、事後的な対応も重要になってくるところであり、刑事事件に精通した弁護人のサポートが必要です。
まず、犯罪事実自体(何をしてどのような被害が生じたか)や犯行に至る動機、経緯や常習性等の面では、事実関係を正しく主張し、警察に理解してもらうことが必要です。
暴行等では、被害者からの執拗な挑発等がある場合と被害者には何の落ち度もない場合では当然扱いが違いますし、万引き等では常習性や方法の巧妙さなども考慮されます。
「被害者」側の言いなりや警察官に誘導されるままに供述するなどして、実際とは異なる事実が前提とされれば不利な扱いに繋がりかねませんし、どのような事情が重要かポイントを理解した弁護人のサポートを得つつ、取調べ等に的確に対応していく必要があります。
また、被害者のいる犯罪では示談交渉が、万引き等の再犯率の高い犯罪では更生や再犯防止の態勢構築ができているかも重要になってきます。
誠実な対応をして示談が成立し、被害者も許してくれていれば微罪処分の可能性は高まりますし、ご家族等の適切な身元引受人が指導監督を誓約する、再犯防止のためにプログラムや治療を受けているなどの事情もまた大きな考慮要素です。
これらの弁護活動は、微罪処分を目指すためだけではなく、検察への送致は避けられなかった場合であっても、不起訴処分や略式手続を目指す、また起訴された場合に執行猶予を目指すという観点からも必要かつ有用なものです。
ただ、微罪処分を目指すという観点からは、送致前に事情を揃えて適切に警察に伝える必要があることから、特に迅速に対応することが重要になってきます。
微罪処分については上原総合法律事務所にご相談を
今回は微罪処分について解説しました。
微罪処分は、あくまで例外的な措置ですので、微罪処分の対象となる刑事事件の幅は決して広いものではありません。微罪処分がされない場合には、原則どおり、検察官に送致され、検察官が起訴・不起訴の判断をすることになります。
検察官送致がなされてしまった場合には、起訴がされることがないよう検察官に意見書を提出するなどの弁護活動をしていくことになりますが、微罪処分を目指して行った弁護活動等は、不起訴を目指す上でも必要なものであり、無駄にはなりません。
微罪処分を目指すという観点からは、特に迅速な対応が必要になってきます。書類送検など検察官送致がされるのか不安を感じていらっしゃる方、検察官から呼出しを受けてどのように対応すればわからず不安を感じていらっしゃる方は、まずはお気軽に上原総合法律事務所にご相談ください。