弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
インターネットやスマートフォンが生活に欠かせない現在
「不正アクセスで逮捕」というニュースを目にする機会が増えています。
- 他人のアカウントにログインしただけ
- 知人に教えてもらったIDとパスワードを使っただけ
- 軽い気持ちで試したつもりだった
こうした行為が、不正アクセス禁止法違反として刑事事件となることもありますし、逮捕にまで至るリスクも否定できません。
本記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士の立場から、不正アクセスとは何か、どのような行為が不正アクセス禁法違反等の犯罪になるのか、実際に逮捕されるケースと逮捕の流れ、起訴・不起訴を分けるポイント、逮捕された場合・家族が逮捕された場合の対応について、実務目線で分かりやすく解説します。
目次
第1 不正アクセスとは?その定義と概要
不正アクセス(法令上は「不正アクセス行為」といいます。)とは、不正アクセス禁止法第2条に定義されており、簡単に言えば、正当な権限がないにもかかわらず、他人のコンピュータやネットワーク、アカウント等に侵入する行為を指します。
日本では、この行為を取り締まるために
**不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)**が定められています。
この法律の特徴は
「被害が実際に発生したかどうか」ではなく
“アクセスした行為そのもの”を犯罪として処罰する点にあります。
そのため、データを消したり、お金を盗んだりしていなくても、無断でログインに成功した時点で犯罪が成立する可能性がある点に注意が必要です。
第2 不正アクセス禁止法違反に該当する行為
1 他人のID・パスワードの使用について
不正アクセス禁止法違反の中で最も典型的なパターンが、他人のIDやパスワードを使ってログインする行為でしょう。
たとえば、
- 元交際相手のSNSに勝手にログインした
- 友人のメールやクラウドサービスに入った
- 家族のパスワードを無断で使った
などの行為は、原則として「不正アクセス行為」として不正アクセス禁止法違反に該当し
不正アクセス禁止法第3条、第11条で
3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する
とされています。
「パスワードを知っていたから問題ない」
「以前は使ってよいと言われていた」
といった事情があっても、現在の利用について明確な許可がなければ違法と判断される可能性があります。
2 その他の不正アクセス禁止法違反に当る行為
不正アクセス禁止法は、「不正アクセス行為」そのもののほか
- 不正アクセスに使う目的でパスワード等を入手したり保管すること
- 正当な理由がないのに他人のパスワード等を提供すること
- アカウントの管理者になりすますなどしてパスワードの入力を求めるなどすること
なども犯罪として定めており
1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
となる可能性があります。
3 軽い気持ちの行為でも犯罪となる理由
不正アクセス禁止法違反事件で時折見られるのが、
「悪意はなかった」「ちょっと見ただけ」などという弁解です。
しかし、不正アクセス禁止法は、故意にアクセスしたかどうかを重視しており
「結果的にどうなったか」や「どのような動機だったか」で犯罪になるか否かが変わるわけではありません。
そのため
- 好奇心でログインした
- 浮気を疑って確認した
- 冗談半分で試した
といった理由であっても、犯罪として成立し得ます。
4 不正アクセス行為の具体例
実務上問題となりやすい不正アクセス行為には、次のようなものがあります。
- 他人のSNS・メール・オンラインゲームへのログイン
- ID・パスワードを推測してログインする行為
- フィッシング等で入手した認証情報の使用
- セキュリティを回避してシステムに侵入する行為
いずれも、「侵入しただけ」で犯罪となる可能性がある点が重要です。
第3 不正アクセスで逮捕される可能性と逮捕された場合の流れ
1 逮捕されるケースとその要因
不正アクセス禁止法違反事件すべてにおいて被疑者が逮捕されるわけではありません。
しかし、次のような事情がある場合、逮捕の可能性が高まります。
証拠隠滅のおそれがある
- ログを消去したり、機器を破壊したりする可能性がある場合
- 不正アクセスをされた被害者に接触するなどの可能性がある場合
逃亡のおそれがある
生活が安定してていない、または責任逃れをして出頭に応じない場合など。
悪質性が高い・被害が大きい
- 何十回、何百回と繰り返しアクセスしている。
- ログインしただけでなく、データの改ざんや情報の持ち出しを行っている。
- 金銭的な被害など、実害も発生している。
被害者の処罰感情が強い
特に元交際相手や知人とのトラブル(ストーカー的側面やプライバシー侵害)が絡む場合、被害者が厳罰を望む傾向があり、知人間の犯行でもあるがゆえに証拠隠滅等のおそれも認められがちで、逮捕に繋がりやすくなります。
※逮捕の詳細や回避するための対策等についてはこちら( 逮捕(たいほ)の種類や逮捕されたらどうすべきかを,元検事の弁護士がわかりやすく解説)の記事もご参照ください。
2 不正アクセス禁止法違反で逮捕された場合の流れ
逮捕されると、警察署に身柄を拘束され、取調べが行われます。
具体的には、以下のような流れで捜査が進行します。
※逮捕以後の刑事事件の流れはこちら( 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説)の記事もご参照ください。
逮捕~検察への送致(最大72時間)
警察署で取調べを受け、48時間以内に検察庁へ送られ、そこから24時間以内に勾留請求されるか否かが判断されます。この間、家族であっても面会はできません。
勾留(最大20日間)
- 検察官が「身柄拘束を続ける必要がある」と判断して勾留請求し、裁判官がこれを認めると、原則10日間(延長含め最大20日間)の「勾留(こうりゅう)」となります。
- 勾留されると、長期間会社や学校に行けなくなり、解雇や退学のリスクが現実味を帯びてきます。
※勾留の回避等、釈放される方法等についてはこちら( 釈放、保釈について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所 )の記事もご参照ください。
起訴・不起訴の判断
- 最終的に検察官が起訴するか、不起訴にするかを決めます。
- 勾留されている場合、勾留期間の満期までに処分が決まるのが一般的です。
- 勾留されている状態で起訴された場合、被告人としての勾留が続くことになり、保釈等で身柄の釈放を目指すことになります。
- 勾留満期当日に「略式起訴」となり、罰金を支払って終了となる場合もあります。
※不起訴に関する記事はこちら(不起訴となりたい|上原総合法律事務所)からアクセスしてください。
※略式手続についてはこちら(略式起訴・略式手続でも前科?元検事の弁護士が手続の流れ、罰金額の相場等を解説|上原総合法律事務所)の記事をご参照ください。
3 逮捕後における弁護士の役割
逮捕・勾留後、検察及び警察はさらに捜査を進め、通常、勾留期間が終わるまでには、検察官が起訴するか不起訴とするかを判断します。
この判断に大きな影響を与えるのが、弁護士の初期対応です。
弁護士は、
- 取調べへの助言
- 身柄解放に向けた活動
- 被害者との示談交渉
などを通じて、不利な展開を防ぐ役割を担います。
身柄を拘束されている中で連日取調べを受けるという状況は想像以上に過酷なものです。
時には接見禁止が付されて家族等とは面会できないという場合もありますし、面会できたとしても警察官の立会もある中での時間制限付きのものです。
他方、弁護士であれば、警察官の立会や時間制限(検察庁における接見など例外はあります。)もなく、また夜間等でも接見することができます。
刑事事件に精通した弁護士と綿密に打合せをすることで、取調べでの立ち回りも適切なものとできますし、弁護士を介して早期に示談等できれば、不起訴や釈放につながります。
※逮捕後の弁護活動や接見等についてはこちら(弁護士を呼べ!逮捕後の刑事事件対応について|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※不起訴(起訴猶予)についてはこちら(起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所 )の記事もご参照ください。
また、仮に起訴される場合でも、公判請求されて被告人としての勾留が続き公開の法廷で裁判を受けることとなるか、略式手続で罰金を支払って終わりとなるかには大きな差があり、事案によっては略式罰金を目指した弁護活動もありうるでしょう。
※略式手続についてはこちら(略式起訴・略式手続でも前科?元検事の弁護士が手続の流れ、罰金額の相場等を解説|上原総合法律事務所 )の記事をご参照ください。
第4 不正アクセス禁止法違反事件の起訴・不起訴の判断ポイント
1 起訴される可能性が高くなるケース
起訴されやすいのは
- 不正アクセスの回数が多い
- 多額の金銭的被害が出ている
- 実害が多数名・広範囲に及んでいる
- データ改ざんや流出など二次被害がある
といったケースです。
悪質性が高いと判断されると、略式手続で罰金ではなく、正式裁判となる可能性も高まります。
※略式手続についてはこちら( 略式起訴・略式手続でも前科?元検事の弁護士が手続の流れ、罰金額の相場等を解説|上原総合法律事務所 )の記事をご参照ください。
2 初犯でも起訴される?不起訴を勝ち取って前科を回避するには
一方で、適切な弁護活動を行えば、不起訴処分(前科がつかない解決)を獲得できる可能性は十分にあります。
検察官が処分を決める際、以下の点がプラス材料として考慮されます。
被害者との示談が成立している
これが最も重要です。示談が成立し、被害届を取り下げてもらえれば、不起訴の可能性は飛躍的に高まります。
初犯であり、反省している
再発防止策が講じられている
二度と不正アクセス行為等を繰り返さないための環境作りや監督者の存在など。
これらを、弁護士を通じて捜査機関に効果的に主張することが不可欠です。
※不起訴(起訴猶予)についてはこちら( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
第5 不正アクセス禁止法違反に関連する罪とその影響
不正アクセス行為は、単独で終わらないこともあります。
取得した情報を使って別の犯罪や違法行為に発展するケースも少なくありません。
たとえば
- 個人情報の不正取得
- 私電磁的記録不正作出・共用
- 電子計算機使用詐欺
- 偽計業務妨害
- 名誉毀損やプライバシー侵害
など、複数の犯罪や違法な行為に発展する可能性があります。
また、不正アクセス禁止法違反等で有罪となれば、前科がつくこととなり、
就職・転職、資格取得、社会的信用に大きな影響を及ぼします。
第6 弁護士に依頼するメリット:なぜ「早期対応」が重要か
不正アクセス禁止法違反事件は、対応のスピードが結果を左右します。
逮捕・勾留の回避
逮捕前であれば、被害者との迅速な示談や自首等により、逮捕を回避し、在宅事件(逮捕されずに捜査が進むこと)にできる可能性があります。逮捕された場合でも、勾留阻止の意見書を提出したり準抗告を行うなどして、早期釈放を目指します。
※自首についてはこちら(自首について元検事の弁護士が解説 |上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※勾留の回避等、釈放される方法等についてはこちら(釈放、保釈について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所 )の記事もご参照ください。
被害者との示談交渉
加害者本人が被害者に連絡を取ることは、証拠隠滅や脅迫と捉えられる恐れがあり危険です。また、感情的な対立から拒絶されるケースがほとんどです。第三者である弁護士が介入することで、冷静かつスムーズな交渉が可能になります。
※示談交渉についてはこちら( 刑事事件で示談する方法を元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
取調べへの適切なアドバイス
- 「やっていないことまで認めてしまう」のが冤罪や量刑が重くなる原因です。元検事の弁護士であれば、捜査官の意図を見抜き、不利な供述調書を作らせないための助言が可能です。
※取調べ対策についてはこちら( 元検事の弁護士が取調べにどのように対応すべきか解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
不正アクセス禁止法違反事件において最も重要なのは、できるだけ早い段階で弁護士が関与することです。
不正アクセス禁止法は、行為そのものを処罰対象とする法律であるため、「大したことはしていない」「被害は出ていない」という認識のまま対応を誤ると、事態が深刻化するおそれがあります。
不正アクセス事件は、「軽い気持ちでやってしまった」ケースが多い一方で、前科がつく可能性があり、将来への影響は決して小さくありません。
だからこそ、事態が深刻化する前に、あるいは逮捕直後の段階で、専門的な知見を持つ弁護士に相談することが、最も現実的で有効な対応といえます。
第6 不正アクセスでの逮捕が不安な方へ
不正アクセスは、「好奇心」や「出来心」でやってしまった場合でも、逮捕や前科につながり、その後の就職や生活に多大な影響を及ぼす犯罪です。 特に、IDやパスワードを使った行為は、想像以上に厳しく取り締まられています。
- 不正アクセスに該当するか分からない
- 逮捕される可能性があるか不安
- 家族が不正アクセスで捕まった
こうした状況では、できるだけ早く弁護士に相談することが最善の選択です。
早期対応が、その後の人生を大きく左右します。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
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