余罪捜査はどこまで?余罪ありの初犯はどうなるのかについて元検事の弁護士が解説

基礎知識
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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

「初めて警察に呼ばれて取調べを受けたけれど、過去にやってしまったことまで調べられるのでは?」

「初犯だから軽く済むと思っていたが、余罪があったら実刑になるのでは?」

こうした不安は、初めて刑事事件に関わる方の多くが抱えるものです。

実際、刑事事件では 余罪の有無 が処分の内容に影響することがあります

本記事では、元検事である弁護士が、余罪とは何かどのように捜査されるのか、そして「初犯+余罪あり」の場合に処分がどう変わるのかを、わかりやすく解説します。

第1 余罪とは

  • 万引きや盗撮で逮捕されたが、これまでも繰り返し同じ行為をしていた
  • 薬物事件で逮捕されたが、売人から何度も違法薬物を買って使用していた
  • 詐欺事件で逮捕されたが、同様の手口で複数の被害者がいる

つまり、余罪とは 現在まさに捜査の対象となっている事件とは別の、過去にやってしまった犯罪 です

余罪は、まだ立件や逮捕、起訴はされていない事実ではあるものの、警察や検察にとっては、被疑者の犯罪傾向や再犯可能性を判断する重要な材料になります。

第2 余罪が発覚するメカニズム

1 警察・検察の捜査活動

  • 携帯電話やパソコンの押収・精査
  • いわゆる家宅捜索等による余罪の被害品の発見
  • 防犯カメラ映像の解析
  • 同様の手口による未解決事件との照合

これらの過程で、立件中の事件以外の犯罪が明らかになることがあります。

例えば盗撮や児童ポルノの所持等では、スマホやパソコン等の解析で同種余罪が発覚したり、万引きで検挙されたことで、その店の過去の被害の防犯カメラの記録と照合されて余罪が発覚するといった場合もあります。

また、共犯者がいるような場合、共犯者間の連絡がスマホの解析等で発覚したり、初犯の場合ですと指紋やDNAから余罪が発覚するなどのパターンもありえます。

2 自白による発覚

取り調べの中で、「実は他にもやった」と供述するケースがあります。

  • 反省から自発的に自白
  • 弁護士との相談を経て、処分を軽くするために全面自供

いずれ発覚するであろう余罪や、直接的に尋ねられてはいないものの捜査機関が既に把握しているであろう余罪については、自分から自白しておくことで有利な情状となりえます。

また、当該余罪が立件されなくても、余罪を含めて自白等していることが有利な情状となることもあります。

ただし、自白が必ずしも有利に働くとは限らず、余罪の件数が多いと「常習性」と判断され、かえって処分が重くなる可能性も否定できません

どのような事情をどの範囲で、どのタイミングで話すべきかについては事案に応じて複雑な判断が必要であり、刑事事件についてはもちろん、捜査にも詳しい弁護士のアドバイスを受けることが重要です

3 被害者からの被害届出

  • 他の被害者が後から「自分もやられた」等と申し出る

立件されている犯罪が報道されるなどすることで、それまで被害申告していなかった被害者が被害届を出すなどして余罪が発覚するといったパターンもあります。

第3 初犯で余罪がある場合の影響

「初犯だから軽く済むだろう」と考えていたのに、余罪があることが発覚すると、その期待は大きく裏切られる可能性があります。

余罪が立件されて複数の罪について起訴され、それを前提とした判決となることもありますし、そうでなくとも、余罪があると、「犯行が一度きりではなく、常習的であった」と評価されて情状が悪いと評価され、検察官による起訴・不起訴の処分や量刑(判決の重さ)に不利に影響する可能性があります

特に、複数の犯罪行為が起訴された場合、例えば、1件の詐欺では執行猶予がつく場合でも、数件の余罪が明らかになり、その全てが起訴された場合には、実刑判決となるケースもあり得るでしょう。

 

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第4 余罪がある場合の法的手続き

1 余罪の取り扱いと起訴の流れ

余罪が確認された場合であっても、そのすべてが起訴されるわけではありません

検察は、事件の重大性や証拠の有無、刑事政策的観点(審理の効率性や、余罪の起訴が量刑に与える影響の有無)などを考慮し、起訴するか否かを判断します。

一般的には、立証が容易で量刑に影響を与える余罪が起訴対象となります。

起訴しても量刑が変わらない比較的軽微な事案であったり、証拠が自白のみであるなど証拠不十分な余罪は、不起訴とされることが多いです。

また、当初から証拠が乏しいなどの事情が分かっていれば、余罪として把握されていても、立件すらされないといった場合もありますし、不起訴を前提として簡易な立件や検察への送致(「終結送致」などとも言われます)がされるといった場合もあります。

なお、捜査段階では見つかっていなかった余罪が、起訴された事件の裁判中に発覚した場合であっても、追起訴(余罪が追加で起訴されること)されることがあります

2 余罪がある場合の手続の流れ

余罪が発覚した場合、その後の刑事手続にはいくつかのパターンがあります。

捜査機関の判断や証拠の有無によって結果は大きく変わります

代表的な流れは以下の4つです。

  1. 本罪のみ起訴される
    余罪があっても証拠が不十分な場合や、立件の必要性が低いと判断された場合には、本罪だけが起訴されることもあります。
    この場合も、余罪の存在自体は情状として量刑判断に影響を与えることがあります。
  2. 本罪と余罪が同時に起訴される
    たとえば窃盗で逮捕された後、同じ手口で過去にも複数回の窃盗をしていたことが証拠で裏付けられた場合に、本罪と余罪がまとめて起訴されることがあります。
    この場合、本罪のみで起訴された場合に比べて刑が重くなる可能性が高いです。
  3. 余罪が追起訴される
    本罪で起訴された後に、追加で余罪が見つかった場合には「追起訴」が行われます。
    すでに進行中の裁判に余罪が加わることが通常ですが、別の裁判として進むケースもあります。
    いずれにしても、本罪のみで起訴された場合に比べて刑が重くなる可能性が高いです。
  4. 本罪も余罪も不起訴になる
    被害者との示談が成立した場合や、証拠が弱い場合などには、本罪も余罪も不起訴となる可能性があります。
    特に初犯で反省の態度が強く示されている場合や、弁護士の働きかけで被害回復が図られた場合に、不起訴処分となるケースがあります。

3 弁護士の役割と重要性

余罪がある場合には、経験豊富な刑事弁護士に相談することが極めて重要です。

弁護士は、専門家として余罪のうち起訴される可能性のあるものとそうでないものを見極め、捜査機関との対応や、裁判での弁護方針を策定します。

また、被害者との示談交渉を通じて、不起訴処分を目指したり、量刑を軽減するための情状証拠を整えるなど、弁護士の対応が判決結果を大きく左右します

第5 余罪に関するよくある質問

Q1:余罪の自白は有利に働くのか?

一概に有利とは言えません。
余罪も含めた自白は「反省の証」として評価される場合もありますが、余罪の件数が多いと、かえって常習性を示す証拠とされ、重い刑罰が科される可能性もあります。

ただし、余罪があったとしても、起訴された事案について、被害者との示談が成立している場合には、不起訴となったり執行猶予が付くケースがありますし、起訴されていない余罪まで示談ができている場合には、その余罪分の示談を有利な事情と見る余地もあります。

また、検察官の論告や判決では余罪があることから「常習性あり」と認定するものの、実際の量刑(判決の重さ)にはその点があまり影響していないと考えられるケースも珍しくなく、このあたりの見極めは経験が物をいう部分です。

そのため、刑事事件の経験豊富な弁護士とよく相談することが重要です

Q2:余罪が時効になっていたらどうなる?

刑事事件には時効があります。
例えば、窃盗罪であれば時効は7年です。
余罪がすでに時効を迎えていた場合、原則としてその件について起訴されることはありません

裁判で、時効になっている余罪が明らかになった場合ですが、少なくとも、有罪判決をし得ない行為ですし、適切な弁護活動が行われている限り、裁判でそれを認定する証拠はないはずなので、検察官の起訴・不起訴の処分や裁判所の量刑において、時効になった余罪が悪情状として評価されることはないと考えられます。

もっとも、時効の完成時期には注意が必要です。
共犯者がいる場合や、国外に逃亡していた期間などがあれば、時効の進行が停止することもあります。
時効が成立しているかどうかの判断には法的知識が求められるため、弁護士による確認が必要です

Q3:余罪が時効になっていたらどうなる?

立件・起訴されなければ前科にはなりません

ただし、判決文「これまで同種犯行を繰り返している」などと書かれた場合には、その後も、その判決文によって、余罪があった(らしい)ことが確認できる状態になります。

第6 初犯と余罪の関連性

1 初犯の犯罪と余罪の関係

たとえば、初めて逮捕されたのが万引きだったとしても、後に同様の窃盗行為を繰り返していたことが判明すれば、それは「初犯で余罪あり」とされます

万引きであれば、お店が前からマークしていて、防犯カメラでも確実な証拠を持っており、ようやく現認して逮捕した末に過去の被害も届け出る、という経緯で余罪が発覚することがよくあります。

また、詐欺であれば、被害状況が類似する被害届がいくつも出されており、「同一グループによる犯行ではないか」という見立てで捜査が行われ、逮捕された被疑者のスマートフォン履歴等から、これらの被害届と日時や犯行態様が一致することなどによって、余罪が見つかることがあります。

2 犯罪の種類による余罪の違い

余罪が生じやすい犯罪には、以下のようなものがあります。

  • 窃盗・万引き:手口・場所の共通性が高く、複数回にわたる犯行が行われやすい
  • 詐欺:手口の共通性が高く、継続的に行われることも多いため、被害者が多い
  • 薬物犯罪:再犯・余罪の傾向が強く、長期にわたって使用していた事例が多い

一方で、突発的な暴行や傷害などは、余罪が存在しないこともあります。

したがって、犯罪の種類によっても、余罪の発覚リスクや法的評価は異なります

第7 お気軽にご相談ください

初犯だから軽く済む」と思っていたのに、余罪が見つかって重くなる事例は数多くあります

対応次第で

  • 不起訴となるか
  • 執行猶予が付くか
  • 実刑になるか

大きく変わり得ます

余罪がある場合には、できるだけ早く弁護士に相談し、適切なアドバイスと戦略を受けることが重要です

弁護士の関与によって、不起訴の可能性を高めたり、示談を通じて処分を軽減したりと、今後の人生を大きく左右する結果につながります

上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団であり、刑事事件に関する豊富な経験を持っています。

刑事事件でお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応し、最良の結果を目指します。

 

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