
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
のぞきは犯罪です。成立要件や刑事事件となった場合の対応について、元検事の弁護士が詳しく解説します
目次
1 のぞきに成立する犯罪
⑴ 軽犯罪法により処罰される罪
軽犯罪法1条23号では、以下のように定めています。
正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
「ひそかにのぞき見(る)」とは、見られないことの利益を有する者に知られないようにして、物陰や隙間等からこっそり見ることをいいます。
そのようなのぞきをしてはいけないとされているのは、「住居、浴場、更衣場、便所」に加え、「人が通常衣服をつけないでいるような場所」であり、例えばホテル・旅館の客室やキャンプ場のテントなども該当します。
そして、飽くまでもそのような“場所”をのぞいてはならないと定められていますから、そのような場所をのぞいた結果、もし中にいた人が衣服を着ていたとしても、また、そもそも中に誰もいなかったとしても、軽犯罪法違反が成立します。
同罪を犯した場合には、「拘留又は科料」に処されます。
「拘留」は、刑事施設に留置される刑罰であり、その期間は1日以上30日未満とされています(刑法16条)。
また、「科料」は、一定の金額を剥奪される刑罰であり、その金額は1000円以上1万円未満とされています(刑法17条。なお、原則1万円以上の金額を剥奪される刑罰が「罰金」です。)
⑵ 都道府県の条例で罰則を定めている場合
例えば、神奈川県では、迷惑行為防止条例において、以下のとおり定めています。
第3条
3 何人も、人を著しく羞恥させ、若しくは人に不安を覚えさせるような方法で住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服等の全部若しくは一部を着けないでいるような場所にいる人の姿態を見、又は、正当な理由がないのに、衣服等の全部若しくは一部を着けないで当該場所にいる人の姿態を見、若しくはその映像を記録する目的で、写真機等を設置し、若しくは人に向けてはならない。
第15条
1 第3条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
⑶ のぞきをするに当たって、人の住居や建造物に侵入した場合
住居や建造物そのものに侵入せずとも、それらの周囲の敷地であって塀で囲われている部分(「囲繞地(いにょうち)」と呼ばれます。)に侵入した場合にも、同じく住居侵入罪・建造物侵入罪により処罰されます。
住居侵入罪・建造物侵入罪は、刑法130条により定められています。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物・・・(中略)・・・に侵入し・・・(中略)・・・た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

2 のぞきで逮捕される可能性
のぞきは、目撃者等に現行犯で逮捕される可能性が高い犯罪であり、また、現場の防犯カメラ映像等から後日逮捕される可能性もあります。
3 のぞきに対する弁護活動
のぞきで刑事事件になってしまった場合でも、起訴前に被害者(のぞいた住居の居住者やのぞいたときに中にいた方など)と示談ができ、被害者が宥恕して(許して)処罰を求めないなどの意向となれば、検察官がこれを尊重して不起訴処分とする可能性が十分にあります。
したがって、弁護人としては、不起訴を目指し、被害者との示談成立に向けて交渉することが重要な活動となります。
4 お気軽にご相談ください
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和7年4月8日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。