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減給の上限は? 計算や金額、懲戒処分時の注意点を元検事の弁護士が解説

上原総合法律事務所では、懲戒処分について、企業様からのご相談をいただきます。

懲戒処分としての減給には、労働基準法によって金額の上限が設けられています。
また、労働者の行為の態様や性質などを踏まえ適切に判断する必要があります。

本記事では懲戒処分としての減給について、上限の計算方法や目安額、注意点などを解説します。

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1. 減給とは

「減給」とは、労働者の賃金を減額する懲戒処分です。

減給より軽い懲戒処分としては、文書により厳重注意を与える「戒告」や「譴責」などがあります。一方、減給より重い懲戒処分としては「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」などがあります。

減給は、懲戒処分の中では中程度の重さで、軽微とはいえない業務上のミスなどに対して行われることが多いです。

2. 懲戒処分としての減給の上限

懲戒処分として行われる減給の金額は、以下の2つの上限を超えてはいけません(労働基準法91条)。

  1. ①平均賃金の1日分の半額(減給1回当たりの上限額)
  2. ②1賃金支払期における賃金の総額の10分の1(複数回の減給を行う場合は、その合計の上限額)

また、1つの懲戒事由に対して行うことができる減給処分は1回のみです。同じ懲戒事由に基づいて、複数回の減給を行うことはできません。

2-1. 減給処分の上限額の計算例

たとえば以下の設例を考えます。

  • ・月給制
  • ・2023年7月から9月の平均賃金は1日当たり1万円
  • ・2023年10月の賃金総額は30万円
  • ・2023年10月に計3回の減給処分を行う

上記の設例では、平均賃金の1日分は1万円なので、減給1回当たりの上限額は5,000円(=1万円×1/2)です。
また、1賃金支払期(=1か月)における賃金の総額は30万円なので、2023年10月の賃金に対する減給総額の上限額は3万円(=30万円×1/10)です。

したがって、減給を3回行う上記の設例では、1回当たり5,000円、総額最大1万5,000円を2023年10月の賃金から差し引くことができます。

仮に上記の設例において、休職・無断欠勤・遅刻などの理由により、2023年10月の賃金総額が10万円に減少していたとします。
この場合、2023年10月の賃金に対する減給総額の上限額は1万円(=10万円×1/10)となるため、5,000円の減給を3回にわたって行うことはできません。

2-2. 収入別|減給処分の上限額(目安)

月給制の労働者に対する減給処分の上限額の目安を、収入額に応じて紹介します。あくまでも目安であり、実際の上限額は賃金の支給実績によって決まる点にご留意ください。

月額賃金 減給の上限額
20万円 1回当たり3,333円 1か月当たり2万円
30万円 1回当たり5,000円 1か月当たり3万円
40万円 1回当たり6,666円 1か月当たり4万円
50万円 1回当たり8,333円 1か月当たり5万円
60万円 1回当たり1万円 1か月当たり6万円
70万円 1回当たり1万1,333円 1か月当たり7万円
80万円 1回当たり1万2,666円 1か月当たり8万円

3. 減給の上限が適用されない場合の例

労働基準法に基づく減給の上限は、懲戒処分として行われる減給についてのみ適用されます。それ以外の場合には、減給の上限は適用されません。

たとえば以下の場合には、いずれも減給の上限は適用対象外となります。

  • ・従業員との合意に基づく減給
  • ・出勤停止処分に基づく減給
  • ・降格処分に基づく減給
  • ・欠勤を理由とする減給
  • ・人事考査に基づく賞与の減額
  • など

※なお、降格や人事を理由とした減額等であっても配慮が必要となり、無制限な減額が認められるものではありませんのでご留意ください。

4. 取締役の報酬を減額することはできるのか?

労働者とは異なり、取締役に対しては懲戒処分を行うことができません。

取締役の報酬は、会社と取締役が締結する委任契約によって決まります。契約の変更には当事者の合意が必要なため、取締役の同意を得ない限り、任期中に取締役の報酬を減額することはできません。

ただし、取締役に任務懈怠があった場合には、会社は取締役に対して、任務懈怠によって被った損害の賠償を請求できます(会社法423条1項)。この場合、損害賠償と報酬を相殺することは可能です。

5. 減給処分を行う際の注意点

労働者に対して減給処分を行う際には、以下の各点に十分ご注意ください。

  1. ①就業規則の規定を確認する|懲戒事由・懲戒処分の種類
  2. ②懲戒権の濫用に当たらないように注意する
  3. ③減給の上限額を正確に計算する

5-1. 就業規則の規定を確認する|懲戒事由・懲戒処分の種類

減給処分を適法に行うためには、以下の要件をいずれも満たす必要があります。

  1. ①懲戒事由及び懲戒の種類としての減給が就業規則に定められていること
  2. ②労働者が懲戒事由に該当する行為をしたこと
  3. ③減給処分とすることに相当性(平等性・公平性を含む)があること
  4. ④処分をするための適正な手続を経ていること

労働者に対して減給処分を行う際には、就業規則の規定と労働者の行為を照らし合わせて、上記の要件を満たしていることを確認しましょう。

5-2. 懲戒権の濫用に当たらないように注意する

労働者の行為の性質・態様などに照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒処分は、懲戒権の濫用として無効になります(労働契約法15条)。

減給処分についても、労働者の行為の性質・態様に比べて重すぎる場合は、懲戒権の濫用として無効になり得るので注意が必要です。
たとえば業務上の軽微なミスや、過失による遅刻などについて減給を行うと、懲戒権の濫用に当たると判断されるリスクが高くなります。

労働者の軽微な就業規則違反に対しては、減給ではなく、戒告や譴責などのより軽い懲戒処分を検討すべきです。
軽微な就業規則違反が繰り返される場合には、さらに労働者に対して改善指導を行い、改善が見られなければ減給以上の懲戒処分を段階的に行うなどの対応が考えられます。

5-3. 減給の上限額を正確に計算する

労働基準法上の上限額を超える減給処分は、直ちに違法となります。計算方法を正確に把握した上で、減給の上限額を正しく計算しましょう。

上限額の計算方法が分からない場合や、計算結果について不安がある場合には、専門家にご確認ください。

6. お気軽にご相談ください

問題行動をする労働者は、経営者や管理職にとって大きな負担となります。
問題従業員が会社の足枷とならないよう適切な対応を取る必要があり、場合によっては懲戒処分もやむを得ません。

上記のように、減給処分を含め、労働者に対して懲戒処分を行うに当たっては、就業規則上の根拠が必要ですし、相当性や適正手続など、考慮すべきことがたくさんあります。
貴重な経営資源を奪われることのないよう、問題従業員への対応は専門家に任せることも有益です。

上原総合法律事務所は、企業における不祥事を専門的に取り扱っており、問題従業員に対する処遇について精通していますし、グループ士業として社会保険労務士もおり、ワンストップでの対応が可能です。

減給を含む懲戒処分に関する就業規則の整備や、懲戒処分の妥当性の判断について知りたい方やお困りの方は、お気軽に上原総合法律事務所にご相談ください。

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