雇用契約書は、労働基準法によって交付が義務付けられている労働条件通知書を兼ねる場合があります。
この場合、労働条件通知書の絶対的記載事項を雇用契約書に記載しなければなりません。
本記事では、労働法に詳しい弁護士が、雇用契約書(労働条件通知書)の絶対的記載事項その他の記載事項や、雇用契約書を作成する際のポイントなどを解説します。
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「雇用契約書」とは、使用者と労働者の間で締結する、労働条件などを定めた契約書です。
これに対して「労働条件通知書」は、使用者が労働者に対して交付する、労働条件を記載した文書です。
使用者は雇用契約を締結するに当たり、労働者に対して賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。
その中でも、重要な労働条件については、原則として書面を交付して明示することが義務付けられています(労働基準法施行規則5条)。このとき、使用者が労働者に対して交付する書面が「労働条件通知書」です。
労働基準法によって交付が義務付けられている労働条件通知書とは異なり、雇用契約書は作成が必須の書面ではありません。雇用契約書を作成しなくても、使用者と労働者が合意すれば雇用関係は成立します。
しかし、労使間の合意内容を明確化してトラブルを防止するためには、労働条件などを明記した雇用契約書を作成することが望ましいです。労働基準法所定の事項を記載すれば、雇用契約書が労働条件通知書を兼ねることもできます。
本記事では、労働契約通知書を兼ねる雇用契約書を作成する場合において、雇用契約書に記載すべき事項を解説します。
労働条件通知書の記載事項は、以下の3つに分類されます。雇用契約書が労働条件通知書を兼ねる場合は、このうち絶対的記載事項と相対的記載事項を漏れなく記載しなければなりません。
「絶対的記載事項」とは、必ず記載しなければならない事項です(労働基準法施行規則5条1項1号~4号、パートタイム・有期雇用労働法6条1項、パートタイム・有期雇用労働法施行規則2条1項)。
絶対的記載事項 |
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※パート・アルバイトなどの短時間労働者および契約社員などの有期雇用労働者については、以下の事項も含む
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「相対的記載事項」とは、該当する制度を設けている場合に必ず記載しなければならない事項です(労働基準法施行規則5条1項4号の2~11号)。会社が該当する制度を設けていない場合には、記載は必要ありません。
相対的記載事項 |
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「任意的記載事項」とは、記載してもしなくてもよい事項です。該当する制度等を設けている場合でも、労働条件通知書(およびそれを兼ねる雇用契約書)に記載せず、社内規程などにおいて定めることもできます。
絶対的記載事項または相対的記載事項に当たらない事項は、いずれも任意的記載事項に当たります。
雇用契約書に必ず記載すべき絶対的記載事項の内容は、以下のように分類できます。
労働契約の期間については、期間を定めない場合(=無期雇用契約)と期間を定める場合(=有期雇用契約)の2つに大別されます。どちらであるかを明示した上で、有期雇用契約の場合は契約期間を記載しましょう。
また、有期雇用契約について更新の定めをする場合は、更新の基準(勤務成績、出勤率など)を記載する必要があります。
実際の労働者の就業に関する事項を記載します。特に労働時間・休憩時間・休日・休暇(有給休暇など)については、労働基準法のルールを踏まえた上で定めましょう。
賃金については、基本給の金額に加えて、各種手当の金額や条件、残業代の割増率なども記載しましょう。
また、昇給を行う場合にはそのタイミングや基準などを記載する必要があります。
労働者の退職に関しては、退職手続きや解雇事由などを記載しましょう。特に解雇事由については、解雇に関するトラブルを防ぐため明確な記載に努めるべきです。
パートやアルバイトなどの短時間労働者については、通常の絶対的記載事項に加えて、上記の事項も記載する必要があります。
特に雇用管理の改善等に関する相談窓口については、あらかじめ担当部署と担当者を決めておきましょう。
雇用契約書の内容は、労働条件の実態に沿ったものとする必要があります。
特に、インターネット上でダウンロードしたひな形をそのまま利用すると、契約内容と実際に適用したい労働条件の間に矛盾が生じるおそれがあるので要注意です。
契約内容が実際に適用したい労働条件よりも会社にとって不利な場合、契約内容が優先されるリスクがあります。
例えば、実際に適用したい賃金よりも高い金額が契約書に記載されていれば、契約書記載の賃金を支払わなければいけなくなります。
手間がかかっても、契約締結前に内容をよく確認してください。
雇用契約書が労働条件通知書を兼ねる場合は、労働基準法で定められた絶対的記載事項を定めなければなりません。また、該当する制度がある場合には相対的記載事項も定める必要があります。
上原総合法律事務所では、雇用契約書・労働条件通知書作成に関するご相談をお受けしています。
顧問契約の一環としてご相談を受けることも可能です。
ご入用の方は、お気軽にご相談ください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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