上原総合法律事務所では、顧問先企業等から、個人情報に関するご相談をいただきます。企業が個人情報などを漏えいさせてしまうと、評判が著しく損なわれますし(レピュテーションリスク)、損害賠償のリスクを負うことになります。情報漏洩対策は企業にとって必須です。
本記事では、企業の情報漏洩による損害賠償のリスクについて、賠償額の目安や予防策などを解説します。
Contents
企業が取り扱う個人情報などは、さまざまな原因による漏えいのリスクに晒されています。
たとえば以下のような原因で、情報漏洩を生じさせてしまうケースがよく見られます。
など |
企業としては、情報漏洩のリスクを正しく認識した上で、その効果的な予防策を講じることが大切です。
「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、以下のいずれかに該当するものをいいます(個人情報保護法2条1項)。
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企業が取り扱う個人情報には、顧客や取引先に関するもののほか、従業員に関するものも含まれます。いずれの個人情報についても、個人情報保護法に従って適切に管理しなければなりません。
個人情報の漏洩を生じさせた場合には、個人情報保護法違反による行政処分等の対象になるほか、場合によっては本人に漏えい等が生じたことを伝えなければいけませんし、漏洩個人情報を漏えいされた被害者本人から損害賠償を請求されるおそれがあるので注意が必要です。
個人情報の漏えいが生じ、被害者(本人)が事業者に対して損害賠償を請求する場合、賠償額は主に以下の要素を考慮した上で決定されます。
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過去に発生した個人情報漏洩事件においては、1件当たり3,000円から5,000円程度の損害賠償が認められる傾向にあります。具体的な事情によっては、それを上回る損害賠償が認められた事案も存在します。
個人情報は一挙に大量の件数が漏えいすることも多く、その場合はきわめて多額の損害賠償責任を負うことになり得るので要注意です。
過去事例 | 認容された損害賠償額 |
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ベネッセコーポレーション事件(東京地方裁判所平成30年12月27日判決) | 1件当たり3,000円(弁護士費用300円) |
Yahoo!BB事件(大阪高等裁判所平成19年6月21日判決) | 1件当たり5,000円(弁護士費用1,000円) |
京都府宇治市住民基本台帳データ漏洩事件(大阪高判平成13(2001)年12月25日) | 1件当たり1万円(弁護士費用5,000円) |
TBC顧客アンケート漏洩事件(東京地方裁判所平成19年2月8日判決) | 1件当たり3万5,000円(原告のうち1人は二次被害が証明できず2万2,000円) |
個人情報漏洩に関する損害賠償請求権は、以下の期間が経過すると時効により消滅します。
損害賠償請求権の法的根拠 | 時効期間 |
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不法行為 | 以下のうちいずれか早く経過する期間(民法724条)
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債務不履行 (例)契約上の秘密保持義務違反など | 以下のうちいずれか早く経過する期間(民法166条1項)
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時効完成までには、不法行為の場合で最低3年、債務不履行の場合で最低5年の経過が必要です。個人情報漏洩が発生してから上記の期間が経過するまでは、損害賠償のリスクを負い続けることになります。
企業が個人情報の漏えいを防ぐためには、以下の対策を講じることが求められます。
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メールの誤送信などの人為的ミスや、社内システムへのハッキングなどのサイバー攻撃を防ぐためには、情報システム上のセキュリティを強化することが求められます。
たとえば以下のような対策により、システム上の原因に起因する個人情報の漏洩リスクを防止しましょう。
など |
個人情報の取り扱いを統括する責任者(個人情報保護責任者)を設置すれば、社内全体で個人情報保護を強化できます。
個人情報保護責任者が行うべき主な業務は、以下のとおりです。
など |
小規模な会社では個人情報保護責任者が他部署を兼任するケースが多いですが、さらなる個人情報保護強化のためには、専任の責任者を設置することも検討すべきでしょう。
社内における個人情報の取り扱いルールを明確化するため、マニュアルやガイドラインを整備しておくことが望ましいです。
マニュアルやガイドラインにおいては、個人情報保護法の規定に沿って、以下の事項などを定めましょう。
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個人情報保護に関する社内マニュアルやガイドラインの内容を周知するため、定期的に従業員に対する教育・研修を行いましょう。
たとえば講師を呼んで研修を実施する方法や、eラーニングを活用する方法などが考えられます。
個人情報保護を徹底するためには、漏えい等を防止するための対策が重要です。また、万が一個人情報の漏えい等が生じた場合には、迅速に事態の収拾を図る必要があります。
上原総合法律事務所では、企業の実情に応じた効果的な個人情報の漏洩対策をご提案するとともに、実際に漏えいが発生してしまった場合の対応についても全面的にサポートいたします。
個人情報の漏洩防止対策や、実際に発生した個人情報の漏えいに関する対応については、お気軽にご相談ください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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