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内部通報窓口とは? コンプライアンス強化のポイントを元検事の弁護士が解説

コンプライアンスの重要性が高まる中で、社内における違法行為を未然に防ぐためには、内部通報窓口の設置を検討することをおすすめします。社内窓口に加えて、弁護士に社外窓口を設置すると、内部通報制度の実効性を高めることができます。
上原総合法律事務所では、企業様から、「内部通報制度の実情をよく理解できていないから説明して欲しい」というご相談や、「内部通報制度自体は理解しているし重要さもわかっているのだけれども活用しきれていない」というご相談をいただきます。

そこで、本記事では内部通報窓口について、概要・メリット・設置時のポイントなどを解説します。

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1. 内部通報窓口とは?

「内部通報窓口」とは、企業内部における違法行為を役員・従業員などが発見した際、その旨を会社に対して連絡するための窓口です。「ヘルプライン」などと呼ばれることもあります。

内部通報窓口は、社内における違法行為の早期発見に繋がるため、コンプライアンス強化の観点から有用と考えられます。

2. 特に保護される「公益通報」|通常の内部通報窓口との違いは?

内部通報のうち、一定の要件を満たすものは「公益通報」に当たり、公益通報者保護法によって厚く保護されています。

2-1. 公益通報に該当する内部通報

公益通報に該当するのは、以下の①~③のいずれかに該当する内部通報です。

公益通報に該当する内部通報
※通報対象事実:以下の行為に関する事実(公益通報者保護法2条3項)
・犯罪行為
・過料の対象である行為
・上記の2つに繋がるおそれのある行為①会社が定めた社内窓口・社外窓口に対する通報のうち、以下のいずれかに該当するもの
・通報対象事実が生じていること
・通報対象事実がまさに生じようとしていると思われること

②通報対象事実について、処分・勧告等の権限を有する行政機関、またはその行政機関が定めた外部窓口に対する通報のうち、以下のいずれかに該当すると信ずるに足りる相当の理由があるもの
・通報対象事実が生じていること
・通報対象事実がまさに生じようとしていると思われること

③通報することが、通報対象事実の発生・被害拡大防止に必要と認められる者(報道機関など)に対する通報のうち、以下のいずれかに該当すると信ずるに足りる相当の理由があるもの
・通報対象事実が生じていること
・通報対象事実がまさに生じようとしていると思われること

※③については、さらに以下の(a)~(e)のいずれかを満たす必要あり
(a)①または②の公益通報をすれば、解雇その他の不利益な取り扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
(b)①の公益通報をすれば、証拠の隠滅・偽造・変造のおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
(c)①の公益通報をすれば、正当な理由なく公益通報者の特定に繋がる情報を漏らされると信ずるに足りる相当の理由がある場合
(d)書面で①の公益通報をした日から20日を経過しても、調査を行う旨の通知がないか、または正当な理由なく調査が行われない場合
(e)個人の生命・身体に対する危害、または個人の財産に対する回復不可能な損害、もしくは多数の個人における多額の損害が発生し、または発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

2-2. 公益通報に与えられる保護の内容

公益通報を行った者(=公益通報者)に対して、通報された事業者が以下の行為をすることは禁止されています。

  • ①公益通報を理由とする解雇(公益通報者保護法3条)
  • ②公益通報を理由とする労働者派遣契約の解除(同法4条)
  • ③①②のほか、公益通報を理由とする不利益な取り扱い(同法5条)
  • ④公益通報を理由とする、公益通報者に対する損害賠償請求(同法7条)

公益通報をした役員を株主総会で解任することはできますが、その場合は、解任によって役員に生じた損害を会社が賠償しなければなりません(同法6条)。

2-3. 公益通報窓口の整備義務|常時使用労働者300人超の事業者に適用

常時使用する労働者の数が300人を超える事業者は、以下の業務に従事する者(=公益通報対応業務従事者)を定めなければなりません(公益通報者保護法11条1項)。

  • ・公益通報を受ける
  • ・公益通報に係る通報対象事実の調査をする
  • ・通報対象事実の是正に必要な措置をとる

これに対して、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、公益通報対応業務従事者の設置が努力義務とされています(同条3項)。

3. 企業における内部通報窓口の実態

消費者庁は平成28年度(2016年度)に、民間事業者を対象として、内部通報制度の実態調査を行いました。
参考:
平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査 報告書|消費者庁

同調査(平成28年度調査)の結果を基に、企業における内部通報窓口の実態を紹介します。

3-1. 内部通報窓口の設置率

平成28年度調査によれば、内部通報制度が実際に導入されているのは、調査対象事業者のうち46.3%でした。平成24年度(2012年度)にも同様の調査が行われていますが、その際の導入率からほとんど変化していません。

なお、内部通報制度を導入していると回答した事業者の中では、社内窓口と社外窓口を両方設置していると回答した事業者が59.9%と多数を占めています。

出典:
平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査 報告書 p28, 71|消費者庁

3-2. 内部通報窓口への主な通報内容

平成28年度調査によれば、内部通報窓口に寄せられる通報の中では、以下の内容が多数を占めています。

職場環境を害する行為(パワハラ、セクハラなど) 55.0%
不正とまではいえない悩みなどの相談(人間関係など) 28.3%
会社のルールに違反する行為(就業規則違反など) 27.5%
労働基準法など労務上の法令違反(残業代の未払いなど) 11.8%

出典:
平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査 報告書 p47|消費者庁

3-3. 内部通報窓口は社内の不正発見に効果的

平成28年度調査において、内部通報制度を導入していると回答した企業においては、社内の不正発見の端緒として、「従業員等からの内部通報」が多いと回答した企業が58.8%と多数を占めました。

従業員数1001人~3000人の事業者では71.6%、3000人超の事業者では78.2%となっており、規模の大きな事業者ほど内部通報窓口が有効に機能していることが窺えます。

出典:
平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査 報告書 p58|消費者庁

4. 内部通報窓口を設置するメリット

内部通報窓口を設置することには、主に以下のメリットがあると考えられます。

①社内の不正発見の端緒となる
消費者庁の平成28年度調査の結果にも表れているとおり、内部通報窓口は、社内における不正発見の端緒として有効に機能する可能性が高いです。

②コンプライアンスに関する認識の向上
内部通報窓口の設置は、役員・従業員全体に対して、コンプライアンスの重要性を周知・啓発することにも繋がります。

③働きやすさの向上
内部通報窓口の設置をきっかけとして、クリーンな社内環境が醸成されることにより、従業員の働きやすさの向上も期待できます。

④社外に対する信頼性向上
内部通報窓口を設置したことを対外的に発信すれば、コンプライアンスに重点を置くクリーンな企業として高い信頼を得られる可能性があります。

これらいずれもメリットとして重要ですが、特に、①社内の不正発見の端緒となる、が重要です。

企業内不正が大事になった際に調査をしていくと、「実は現場の職員は以前から不正を知っていた」、ということが少なくありません。このような場合、「経営陣などの上層部が不正を認識することさえできていれば対応できたのに」、と悔やまれます。トラブルは、早期発見することができれば、対処が容易になり得ますし、おおごとにならないうちに解決できる可能性が高まります。

内部通報窓口の設置は、トラブルの早期発見に役立ちます。

5. 内部通報窓口を設置する際の注意点

内部通報窓口を新たに設置する際には、以下の各点に十分ご留意ください。

  • ①社内窓口だけでなく、社外窓口も設置する
  • ②窓口担当者として適任者を選任する
  • ③通報者・通報内容の秘密を厳守する

5-1. 社内窓口だけでなく、社外窓口も設置する

内部通報窓口は、社内だけでなく社外にも設置することが望ましいです。

社内窓口は気軽に相談しやすいメリットがある一方で、経営陣などとの癒着が生じやすく、通報が揉み消されてしまうリスクがあります。

このような社内窓口のデメリットをカバーするためには、社外窓口を併設するのが効果的です。経営陣からの独立性が確保された弁護士などを社外窓口に選任すれば、一定の費用はかかるものの、内部通報制度を実効的に機能させることができます。

5-2. 窓口担当者として適任者を選任する

内部通報窓口を効果的に機能させるためには、窓口担当者の人選も重要です。

社内窓口については、総務部・人事部・法務部・コンプライアンス部などのバックオフィスが担当するケースが多いです。
社外窓口については、弁護士や法的素養を有する社外監査役などが適任と考えられます。

なお、顧問弁護士に社外窓口を依頼することは、経営陣との癒着が生じやすいため避けた方が無難です。コンプライアンスの徹底を図る観点から、社外窓口は顧問弁護士以外の弁護士に依頼することをおすすめします。

5-3. 通報者・通報内容の秘密を厳守する

内部通報窓口の機密保持が徹底されていない場合、社内での処遇の悪化などを恐れて、役員・従業員等は通報を躊躇してしまう可能性があります。

そのため内部通報窓口には、役員・従業員等が匿名で通報できることが望ましいです。実名通報を求める場合でも、通報者が誰であるか、および通報の内容については秘密が守られるようにしなければなりません。

公益通報者保護法でも、公益通報対応業務従事者には、公益通報者の特定に繋がる情報を漏らさない守秘義務が課されています(同法12条)。通報方法の工夫や担当者の教育などを通じて、内部通報窓口の機密保持を徹底しましょう。

6. 内部通報窓口の設置については弁護士法人上原総合法律事務所にご相談ください

内部通報制度を導入する際には、社内窓口と社外窓口を併設することで、コンプライアンス強化の実効性がいっそう高まります。一定のコストはかかりますが、安定した経営を目指す企業は、社外窓口の設置も併せて検討することをおすすめします。

内部通報の社外窓口には、独立性の確保された専門職である弁護士が適任です。上原総合法律事務所では、内部通報の通報内容や社内事情などに応じて適切に対応いたします。

内部通報窓口の設置をご検討中の企業様は、上原総合法律事務所にご相談ください。

弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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