雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金は,コロナ禍で受給要件と審査が緩和され,結果として不正受給が多発しました。
2020年や2021年の段階では,労働局が迅速に助成金を支給するという助成金支給作業に忙殺されていて
・ 明らかに不自然な申請に対する調査
・ 従業員からの内部通報に基づく調査
が多かったように思われます。
2022年に入ってからは,助成金支給作業も収集がついてきたため,過去の申請が適切かそうでなかったかについて,広範な調査が行われています。
この調査に基づいて多数の不正受給案件が発覚し,労働局のホームページで不正受給情報が公表されたり,雇用調整助成金を不正受給して逮捕された人のニュースが報道されています。
さらに,会計検査院は,2022年8月4日付の文書で厚生労働大臣に不正受給等に係る事後確認について指摘しました。
会計検査院による主要な指摘は以下のとおりです。
1 雇用調整助成金等と休業支援金等との重複支給に関する事後確認が適切に行われていないこと
2 休業支援金等の二重支給に関する事後確認が行われていないこと
3 雇用調整助成金等に係る実地調査の対象事業主の範囲が適切に設定されていないこと
会計検査院の指摘を踏まえ, 2022年8月5日に厚生労働大臣が記者会見において「制度の信頼を揺るがす不正受給を見逃すことのないように,調査の充実とその結果に基づく厳正な対応に努めてまいりたい」 と述べています。
今後, 厚生労働大臣の指示を受けた厚生労働省や労働局が,不正受給の有無の調査をさらに増やして厳格な対処をすると見込まれます。
特に,厚生労働省は雇用調整助成金等と休業支援金等の支給データを持っているため,今後,雇用調整助成金を受給しているのに従業員が休業支援金を受給してしまっている(重複支給,と呼ばれています。)会社への調査が見込まれます。
また,会計検査院は「重複支給のあった会社や従業員について他にも不正受給をしていないかを調査するべき」としています。
労働局や会計検査院の調査は,電話で来ることもありますし,「資料提出のお願い」などといった手紙が届くこともあります。また,従業員や取引先に対する聞き取りが行われることもあります。
まず,基本的な姿勢として,上原総合法律事務所では,労働局や会計検査院の調査に対しては協力するなど,誠実に対応すべきであると考えています。
なぜ労働局や会計検査院の調査に協力した方が良いのでしょうか。
労働局は,雇用保険法に基づいて,雇用保険被保険者を雇用している事業主に対して,報告を求めたり,文書の提出を求めることができます。
会社としては,調査に協力すべき義務があります。
ただ,この義務を度外視しても,調査に協力することが会社にとって有益だと考えます。
もしも不正受給をしていた場合には,会社に対する問い合わせだけでなく様々な調査方法があるので,調査に協力しなくてもいずれ不正受給であったことが発覚すると考えられます。
また,問い合わせがあった段階で既に労働局等に不正受給であることが発覚しているかもしれません。
不正受給をしてしまった場合,会社に対する処分を決める上で,事案の悪質性の程度が考慮されます。この事案の悪質性の程度を判断するときに,問い合わせがあった後に労働局等に誠実に対応したかどうかも考慮されると考えられます。
労働局等からの問い合わせがあった場合には,なるべく早い段階から誠実に対応し,不正受給後の情状を良くすることが会社にとって有益です。
また,不正受給をしたつもりがなくても,調査に協力をしなければ申請が不正だったのではないかと疑われてしまう可能性が出てきます。不要な疑いを避けるために調査に協力することが会社にとって有益だと考えます。
また,調査に対応するときには,そもそも自社が不正受給をしたのかどうか,不正受給をしたのだとすればなぜ不正受給をしたのか,などを把握した上で対応する必要があります。
雇用調整助成金の不正受給をしてしまったらどうなるのかの全体像については,こちらの記事をご参照ください。
労働局等は
・申請が真実に合致するものだったのか
・真実に合致しない場合、なぜ行われたのか
などを明らかにしようとします。
この調査は,確定申告書・決算書・総勘定元帳・損益計算書・売上証票・雇用契約書・労働者名簿・休業協定書・タイムカード・シフト表・給与明細・賃金台帳等の客観的な資料に基づいて行われることもありますし,経営者や労働者からの聞き取りによって行われることもあります。
このような調査対応依頼や資料提出要請に対しては,誠実に正直に対応する必要があります。
ですが,聞かれたことに答えるだけでは,真実を全て理解してもらえるとは限りません。
雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金の制度は複雑で,会社の経営者といえども,正確に制度の詳細を理解している方は多くありません。
コロナ禍の混乱の中で助成金を申請した方の中には,どのように申請をすべきなのか正確に理解しないままに取り急ぎで助成金を申請した方も少なくありません。
また,制度を誤解したことにより誤った申請をしてしまった方もいます。
調査する側の視点に立つと,このような誤った(過失による)申請も,助成金を騙し取る目的でわざと行った(故意による)申請も,制度の趣旨や客観的な真実に合致しない申請という点で同じで,区別がつきづらい可能性があります。
わざと行ったことなのか誤って行ったことなのか(故意だったのか過失だったのか)によって,会社に対する処分が大きく異なります。
また,客観的な真実に合致しない申請であるため「わざと行った」と見えるような事案についても,制度を誤解した結果「客観的な真実には多少合致していないけれどもこれで良いのだ」と誤解していた場合もあります。このようなものの中には「誤って行った」のだと言える申請もあります。
不適切な申請がなされている多数の事案は,それぞれなぜ不適切な申請に至ったのかが異なります。
会社に有利な事情が存在する場合,労働局に伝わる形で適切に伝えていく必要があります。
上原総合法律事務所では
☑ 労働局から連絡が来た。どうすれば良いか
☑ 不正受給をしたのでどうすれば良いか
☑ 誤った申請をしたが、どうすれば良いか
などのお問い合わせを多数いただいています。
このようなお問い合わせに対し,まずはご相談をお受けし,どのような対応をすべきなのかをご案内しています。
労働局等からの連絡が来ていない事案については,会社から自発的に労働局に連絡をすべきかどうかについての判断からご案内します。
既に労働局からの問い合わせが来ている事案や,会社から自発的に連絡すべき事案については,まず上原総合法律事務所から労働局等に連絡するとともに,並行して事案の詳細を調査し,誠実かつ正直に回答するとともに,理解してもらうべき会社にとって有利な事情を適切に伝えていきます。
不正をしていない会社についてはその旨を理解してもらうよう働きかけます。
一見すると不正(故意)のように見えるけれども実際は過失であるという場合には,その旨を理解してもらえるように丁寧に説明します。
不正をしてしまった会社については,不正をしてしまったと言う真実を誠実に伝えて謝罪するとともに,なぜそのような不正をするに至ったかという事情を伝え,会社にとって有利な事情も理解してもらいます。
このような対応をすることで,不正をしていないことを理解してもらったり,一見すると故意のように見えるけれども過失であると理解してもらったり,さらには,不正ではあるけれどもやむにやまれず不正をしたと言う背景事情を十分に理解してもらって想定していたよりも軽い処分にしてもらった事案等が多数あります。
上原総合法律事務所では,コロナ禍における特例下での雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金の不正受給について,令和2年後半からご相談をいただくようになり,令和3年は100件を超える多数のお問い合わせをいただいています。
その中で多くの方がおっしゃるのは,ご相談前の「自分1人で悩んでいてとても辛い,夜も眠れない,食欲もない」などの辛さとともに,ご相談後の「相談して気が楽になった,眠れるようになった,食べられるようになった。助成金についてはとりあえず弁護士に任せておけば良いと考えることで,仕事にエネルギーを割けるようになった。」などというありがたいお言葉です。
令和2年前半に始まったコロナ禍は,本当に多くの方を苦しめています。その混乱の中でなんとか会社を生き残らせて雇用を守りたいと考えた経営者が誤った判断をしてしまう事は,大いにあり得ることだと考えます。
その誤った判断が,現在,経営者をさらに苦しめてしまっていますが,1人で悩む必要はありません。
上原総合法律事務所は,そのような苦しんでいる経営者の気持ちを少しでも楽にするとともに,助成金の問題の専門家である上原総合法律事務所がお引き受けすることで経営者の時間と能力を本業に集中させ,会社を少しでも回復させていただきたいと考えています。
上原総合法律事務所では,ご相談に迅速に対応できる体制を整え,丁寧にお答えいたします。
ご相談は上原総合法律事務所へのご来所のみならず,ズームまたはお電話によるリモートでのご相談も可能です。
全国からのご相談をお受けしています。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
上原総合法律事務所にご相談いただく際の流れはこちらの記事をご参照ください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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