弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
「取適法」という新しい名称の法律が、2026(令和8)年1月1日から施行されました。これは、従来、下請業者の利益を保護してきた「下請法」を改正した法律です。取適法では、適用される下請業者や下請取引の範囲が拡大され、発注元に禁止される新たな行為が加わるなど、下請業者の保護が強化され、その分、発注元の法的義務は増加しています。下請企業としては自社の利益を守る観点から、発注企業としては法違反を予防する観点から、新法を十分に理解しておく必要があります。
目次
1. 取適法(とりてきほう)とは?
1-1. 取適法は略称の略称
「取適法」とは、法律の略称です。
正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」と言いますが、これではあまりに長い名称です。
そこで、この法律の内容が、中小の受託事業者(いわゆる下請業者)が、その経済的な立場の弱さゆえに、取引上の不利益を被るような事態を防止する点に着目し、「中小受託取引適正化法」という略称が考案されました。それを、さらに短縮した、いわば「略称の、さらに略称」が「取適法」なのです。
1-2. 取適法は「下請法」を改正したもの
発注業者が、その経済的に優位な立場を利用し、下請業者に不利な契約条件を押し付けたり、契約内容を守らなかったりして、経済的に弱い立場にある中小の下請業者の利益を不当に害するなどの事例は跡を絶ちません。このような事態を防止するための法律が、通称「下請法」でした(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)。
取適法は、下請業者の保護を拡大・強化することなどを目的として、下請法を改正したものです。法律の名称は、まったく異なりますが、その内容は、従前の下請法に変更を加えたものとなっています。
2. 下請法から取適法への変更点の概要(ポイント)
具体的な変更(改正)の内容は、後に詳細を説明しますので、ここでは、変更点の概要だけを見ておきましょう。
2-1. 法律名と用語の変更
法律の名前が変わっていることは、既に説明したとおりです。また、これに伴い、従前の下請法の条文で用いられていた用語も変更されています。次のとおりです。
- 下請代金→製造委託等代金
- 親事業者(発注事業者)→委託事業者
- 下請事業者→受託事業者(後述の一定要件を満たした場合は、「中小受託事業者」)
2-2. 適用対象の拡大
従業員基準の追加
取適法が適用される事業者の基準に、資本金額だけでなく、従業員数も加えました(法2条8項5号、6号、9項5号、6号)。これにより、より小規模な事業主も保護の対象となります。
特定運送委託の追加
取適法が適用される委託取引の種類に、「特定運送委託」が加わり、これまでの4種類の委託取引が、5種類に増えました(法2条5項)。
2-3. 禁止行為の追加
下請法では、委託事業者がしてはならない禁止行為として、11種類の禁止行為が定められていました。
その中には、「割引困難な手形での代金支払いの禁止」が含まれていましたが(下請法4条2項2号)、改正法では、そもそも手形による支払いを全面禁止としたので(法5条1項2号)、この禁止行為は削除されました。
他方、新たな禁止行為として、「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」を追加したので(法5条2項4号)、禁止行為の数が11種類である点は変わりません。
2-4. その他の改正点
以上以外にも、次の諸点が改正されていますが、やはり詳細は、後に各該当部分で説明します。
- 違反の通報先に、事業所管省庁を追加(法5条1項7号)
- 製造委託取引の対象物品に金型以外の木型、樹脂型などを追加(法2条1項)
- 取引内容の電磁データによる明示に、受託事業者の承諾を不要とした(法4条1項)
- 不当に減額した代金の減額部分を遅延損害金の対象とした(法6条2項)
- 禁止行為の解消後にも、再発防止措置などの勧告を可能とした(法10条2項)
3. 取適法の適用対象となる取引
3-1. 取適法の適用対象となる3つの要件
ある事業者の取引が、取適法の適用対象となるか否かは、次の3つの基準で判断されます。
- 取引の内容(法2条1項〜7項で定める一定の取引類型であることが必要)
- 委託事業者の資本金の額または従業員数(法2条8項)
- 受託事業者の資本金の額または従業員数(法2条9項)
3-2. 取適法の適用対象となる5つの取引類型
取適法の適用対象となる「取引の内容」は、(1)製造委託、(2)修理委託、(3)情報成果物作成委託、(4)役務提供委託、(5)特定運送委託の5類型に分けられます。最後の(5)特定運送委託は今回の改正で加えられた類型です。
製造委託(取適法2条1項)
物品(不動産は除く)の販売や製造をおこなう委託事業者が、規格やデザインなどを指定して、受託事業者に物品の製造・加工を委託する取引です。
なお、今回の改正法では、従前、製造委託の対象物品に含まれていた「金型」以外にも、木型・樹脂製型などの物品成形用の型・治具などが追加されました。
例:大手食品スーパーが、下請の食品加工業者にプライベートブランド商品の製造を委託
修理委託(同法2条2項)
物品の修理をおこなう委託事業者が、修理の一部または全部を受託修理業者に委託する取引です。委託事業者が自社で使用する物品の修理の一部を受託修理業者に委託する取引も含みます。
例:自動車販売業者が、顧客から請け負った車の修理を、下請の修理工場に委託
情報成果物作成委託(同法2条3項)
情報成果物(ソフトウェア、映像、デザインなど)の提供や作成をする委託事業者が、受託事業者に作成作業の一部または全部を委託する取引です。
例:ソフトウェアメーカーが、アプリケーションの開発を下請のソフトウェアメーカーに委託する取引
役務提供委託(同法2条4項)
他の事業者から各種サービス(運送やビルメンテナンスなど)の役務の提供を請け負った事業者が、委託事業者となって、受託事業者に、役務の一部または全部を委託する取引です。建設工事の場合を除きます。
例:荷物の運送を請け負った運送事業者が、委託事業者となって、さらに下請の運送事業者に運送を委託する取引
特定運送委託(同法2条5項)
今回の改正で適用対象に追加された取引です。
①販売業者、②製造請負業者、③修理業者、④情報成果物の作成請負業者が、その取引相手(販売先、製造の発注者、修理の依頼者、情報成果物の作成発注者)や、取引相手が指定した者に対して、その物品等を送り届けるための運送の全部または一部を、他の受託事業者に委託する取引です。
例:家具の販売業者が、家具を購入者の居宅へ送る運送を、運送業者に委託する取引
3-3. 取適法の適用対象となる事業者
ある取引が、上記の、①製造委託、②修理委託、③情報成果物作成委託、④役務提供委託、⑤特定運送委託という5つの取引類型に該当し、かつ、委託事業者と受託事業者の資本金額や従業員数が、以下の条件にあたる場合には、取適法の適用を受ける取引となります(法2条8項、同9項、取適法施行令1条※)。なお、これら条件を満たし、取適法の適用を受ける取引を行う受託事業者のことを「中小受託事業者」と呼びます(法2条9項)。
※取適法施行令:正式名称は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令」
この①~⑤の取引については、次の(A)(B)(C)のいずれか該当する場合に、取適法が適用される取引となります。
(A)委託事業者の資本金が3億円を超え、受託事業者の資本金が3億円以下(または個人の場合)の取引(法2条8項1号、9項1号)
(B)委託事業者の資本金が1千万円を超え、3億円以下で、受託事業者の資本金が1千万円以下(または個人の場合)の取引(法2条8項2号、9項2号)
(C)委託事業者の常時使用する従業員が300人を超え、受託事業者の常時使用する従業員が300人以下(または個人の場合)の取引(法2条8項5号、9項5号)。この従業員数の要件は、今回の改正で追加されたものです。
この⑥⑦の取引については、次の(D)(E)(F)のいずれかに該当する場合に、下請法が適用される下請取引となります。
(D)委託事業者の資本金が5千万円を超え、受託事業者の資本金が5千万円以下(または個人の場合)の取引(法2条8項3号、9項3号)
(E)委託事業者の資本金が1千万円を超え、5千万円以下で、受託事業者の資本金が1千万円以下(または個人の場合)の取引(法2条8項4号、9項4号)
(F)委託事業者の常時使用する従業員が100人を超え、受託事業者の常時使用する従業員が100人以下(または個人の場合)の取引(法2条8項6号、9項6号)。この従業員数の要件も、今回の改正で追加されたものです。
※1:「プログラムの作成を除く情報成果物作成委託」の例
放送番組の制作、広告の制作、商品のデザイン、取扱説明書の作成、設計図面の作成など
※2:「運送・倉庫保管・情報処理を除く役務提供委託」の例
ビルメンテナンス、機械保守、コールセンター代行など
4. 取適法における発注者(委託事業者)の4つの義務
取適法が適用される取引に対しては、委託事業者は次の4つの義務を課されています。
4-1. 支払期日を定める義務
支払遅延防止のため、委託事業者は検査実施の有無を問わず、委託代金の支払期日を、物品を受領した日(サービス提供を受けた日)から60日以内、かつ、できる限り短い期間内に定める義務を負います(法3条1項)。
次に、①まったく支払期日を定めていないときは、物品・サービスを受領した日が支払期日となり、②60日を超えた支払期日を定めていたときは、物品・サービスを受領した日から60日目が支払期日となります(法3条2項)。
4-2. 発注内容等を明示する義務
口約束、口頭の発注でのトラブルを防止するため、委託事業者は、発注の際に、発注内容を明確にするための事項(給付の内容、代金額、支払期日、支払方法等)を記載した書面または電子メール等の電磁データで明示する義務があります(法4条1項本文)。明示するべき事項や明示方法の詳細は、公正取引委員会の規則で定められています(※)。
※公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」
下請法では、電磁データの利用は受託事業者の承諾が必要でしたが、改正法では、承諾は不要としました。ただし、中小受託事業者から書面での交付を要求されたときは、これに応じる義務があります(法4条2項)。
もっとも、中小受託事業者が自ら電磁データの提供を希望した場合などのように、書面の交付がなくとも中小受託事業者の保護に支障を生じないとして公正取引委員会規則で定めている場合は、書面の交付は不要です(法4条2項但書、前記公正取引委員会規則4条)。
明示義務違反には罰金刑
委託事業者が明示義務に違反し、明示するべき事項を書面または電磁データで明示しない行為、中小受託事業者から要求された書面を交付しない行為については、その行為者(委託事業者の代表者、代理人、使用人、その他の従業者)は50万円以下の罰金刑に処せられます(法14条1項1号、2号)。委託事業者が法人の場合は、両罰規定により、法人にも同じ罰金刑が課されます(法16条)。
4-3. 遅延利息の支払義務
支払期日までに支払わない場合
委託事業者が、委託代金を支払期日までに支払わなかったときは、物品を受領した日(サービス提供を受けた日)から60日を経過した日から支払をするまで、公正取引委員会の定める利率(年14.6%※)の遅延損害金(遅延利息)を支払う義務を負います(法6条1項)。たとえ当事者が、これよりも低い利率の遅延損害金を約定していたとしても、その約束は無効です。
※公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第6条第1項及び第2項の率を定める規則」
不当に代金を減額した場合
今回の改正法では、中小受託事業者の責に帰すべき理由がないのに、委託事業者が代金を減額した場合には、委託事業者は、その減額した金額に対する遅延損害金も支払う義務を負うことになりました。利率は支払期日までに支払わなかった場合と同じ利率で、代金を減額した日または物品を受領した日(サービス提供を受けた日)から起算します(法6条2項)。
4-4. 書類等の作成・保存義務
取適法が適用される取引が終了したときは、委託事業者は、取引の内容など、公正取引委員会の規則(※)で定める事項を記録した書類または電磁データを保存する義務を負います(法7条)。保存する期間も、公正取引委員会により、2年間と定められています(同規則3条)。
※公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第7条の書類等の作成及び保存に関する規則」
書類等の作成・保存義務違反には罰金刑
書類等の作成保管義務に違反して書類・電磁データの作成・保存を怠ったり、虚偽の書類・電磁データを作成したりした場合は、違反行為をおこなった者(委託事業者の代表者、代理人、使用人、その他の従業者)は50万円以下の罰金刑に処せられます(法14条1項3号)。委託事業者が法人の場合は、両罰規定により、法人にも同じ罰金刑が課されます(同16条)。
5. 委託事業者に禁止される11の禁止行為
取適法は、委託事業者に対して、11種類の行為を禁止しています(法5条)。これら禁止行為は、受託業者が了解していた場合や、委託事業者が禁止行為と知らない場合でも、違法行為となります。
5-1. 受領拒否(法5条1項1号)
委託事業者は、中小受託事業者に責任がないのに、納品する物品等の受領を拒むことは禁止されます。発注の取り消しや、納期の延期も受領拒否となります。
例:プライベートブランド食品の製造を委託したスーパーが、発注当初の納期を一方的に短縮したため、受託した食品製造メーカーの納品が期日を過ぎてしまったところ、受取りを拒否された
5-2. 委託代金の支払遅延(法5条1項2号)
受託業者への代金を、物品等の受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないことは禁止されます。検査・検収の時間が必要な場合も、この期間を過ぎてはなりません。
今回の改正法では、次の支払い方法も、支払遅延と同様に禁止されることになりました。
- 支払いに手形を交付すること
- 現金・手形以外の支払手段(例:電子記録債権、ファクタリング等の一括決済方式)であっても、支払期日までに委託代金額の全額に相当する現金化が困難な支払い手段
下請法では、手形による支払いは、割引困難な手形による支払いだけが禁止されていましたが、今回の改正では、手形による支払いは全面的に禁止となりました。
5-3. 委託代金の減額(法5条1項3号)
中小受託事業者に責任がないのに、発注時の代金額を、発注後に減額することは禁止されています。代金額は減額しなくとも、たとえば協賛金名目で代金から控除するなど、方法の如何を問わず禁止されています。
例:自動車メーカーと、その下請の部品製造メーカーが、今後の発注につき、部品製造単価の引き下げを合意したところ、合意前の発注分にも、引き下げ後の単価を適用して減額した代金を支払った
5-4. 返品(法5条1項4号)
納入された物品等について、中小受託事業者に責任がないのに返品することは禁止されています。
例:広告会社が、化粧品宣伝ポスターの作成をデザイン事務所に委託し、ポスターが納品された後に、化粧品メーカーから取引をキャンセルされたことを理由に返品した
5-5. 買いたたき(法5条1項5号)
「買いたたき」とは、発注する商品・役務等に通常支払われる対価(同種または類似品などの市価)に比べて著しく低い額を不当に定めることで、禁止されています。
不当に定めた価格かどうかの判断にあたっては、下請事業者との十分な協議の有無などが考慮されます。
例:発注メーカーが指定した原材料の価格が高騰したため、中小受託事業者が単価引き上げを要請したのに、一切の協議に応じることなく、単価を据え置いた
5-6. 購入・利用強制(法5条1項6号)
委託事業者が中小受託事業者に対し、不必要な物品購入や役務利用を強制することは禁止されています。ただし、発注する物品の品質を均質にしたり、改善したりするために、委託事業者の指定する原材料や道具などを用いる必要がある場合などは正当な理由があるとして、禁止行為に該当しません。
例:映画会社が、映画作品の制作委託先である映像プロダクションに、新作映画のチケットを一定枚数割り当てとして購入させた
5-7. 報復措置(法5条1項7号)
中小受託事業者が、委託事業者の禁止行為を、①公正取引委員会、②中小企業庁、③当該取引にかかる事業を所管する省庁に知らせたことを理由として、取引数量の削減や、取引停止などの不利益な取扱いをすることは禁止されます。
今回の改正では、報復措置が禁じられる違反行為の通報先として、③当該取引にかかる事業を所管する省庁が追加されました。
5-8. 有償支給原材料等の対価の早期決済(法5条2項1号)
委託事業者が、中小受託事業者に原材料等を有償で支給している場合に、中小受託事業者に責任がないのに、委託代金の支払いよりも先に、原材料等の購入代金を支払わせることは禁止されます。
例:委託事業者が半年先までの原材料を一括して中小受託事業者に売りつけ、最初の1ヶ月分の委託代金から、半年分の原材料費を控除して支払った
5-9. 不当な経済上の利益の提供要請(法5条2項2号)
委託事業者が中小受託事業者に対して、委託事業者のために金銭・役務その他の経済上の利益を提供させて、中小受託事業者の利益を不当に害することは禁止されます。
例1:中小受託事業者に協賛金の支払を強要
例2:委託事業者の店舗販売員として、中小受託事業者の従業員を派遣するよう要求
例3:委託事業者である運送会社が、その下請である受託運送業者の従業員に、委託内容とは無関係な荷物の積み卸しをさせた
5-10. 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(法5条2項3号)
中小受託事業者に責任がないのに、次の行為で、中小受託事業者の利益を不当に害することは禁止されています。
- 発注済みの発注内容の変更
- 物品の受領や役務の提供を受けた後に、やり直しや追加作業を行わせること
ただし、内容変更や追加作業の費用を、委託事業者が負担するときは、中小受託事業者の利益を不当に害しないため、禁止行為に該当しません。
5-11. 協議に応じない一方的な代金決定(法5条2項4号)
今回の改正で追加された禁止行為です。原材料費用の変動などの事情が生じ、中小受託事業者から価格協議を求められたのに、委託事業者が協議に応じなかったり、協議には応じながらも、必要な説明や情報の提供を怠ったりして、一方的に委託代金を決定することは禁止されます。
6. 取適法に違反すると罰則はある?
取適法に違反した場合に、どのような不利益を受けるかについて説明しましょう。
6-1. 報告の徴収、立入検査
取適法違反の疑いがある場合には、委託事業者は、①公正取引委員会、②中小企業庁、③当該委託取引にかかる事業を所管する省庁から、取引についての報告を求められたり、立入検査を受けたり、帳簿類などの検査を受けたりする可能性があります(法12条)。
6-2. 勧告
公正取引委員会による勧告
禁止行為に対しては、公正取引委員会から委託事業者に対し、中小受託事業者の不利益を解消する措置を講じることや、再発防止措置を講じるなど、必要な措置をとるべきことを求める「勧告」が行われます(法10条1項)。
また今回の改正では、すでに禁止行為が行われなくなっている場合でも、禁止行為がなくなった事実を周知させるなどの、特に必要と認める措置を講ずるよう勧告できると定められました(法10条2項)。
勧告は公表される
勧告は行政指導であり、強制力はありません。また禁止行為違反には刑事罰もありません。しかし、勧告を受けた事実は、原則として公表され、委託事業者の社会的信用は失墜し、重大な不利益を受けます(※1)。
※1:公正取引委員会サイト「報道発表資料 取適法(違反事件関係)」
独占禁止法違反で処分される危険
勧告に従わないと、禁止行為が、独占禁止法が規制する優越的地位の濫用に該当する場合には、委託事業者は独占禁止法違反として、公正取引委員会の排除措置命令や課徴金納付命令といった強制的な処分を受けてしまう危険があります。しかし、勧告にしたがった場合には、不公正な取引に関する処罰を定めた条文について「当該勧告に係る行為については、適用しない。」と定められています。(法11条)。
6-3. 指導
取適法違反はあるものの、勧告にまで至らない事案では、①公正取引委員会、②中小企業庁、③当該委託取引にかかる事業を所管する省庁による指導が行われる場合があります(法8条)。
6-4. 罰金刑
次の取適法違反には、50万円以下の罰金刑があり、両罰規定により委託事業者である法人にも罰金が科せられます(法14条〜16条)
- 発注内容等の書面または電磁データによる明示義務の違反(法14条1号、2号)
- 取引内容を記載・記録した書類または電磁データの作成・保存義務の違反(法14条3号)
- 公正取引委員会などの報告徴収に対する報告拒否、虚偽報告(法15条)
- 公正取引委員会などの立入検査の拒否・妨害・忌避(法15条)
6-5. 中小受託事業者からの民事賠償請求
公正取引委員会などにより、委託事業者の禁止行為が認定された場合、中小受託事業者から、不法行為(民法709条)を理由に損害賠償を請求される危険もあります。
7. 取適法の対策はどうすればいい?
これまで説明したとおり、取適法は、下請法を改正して、その適用範囲を拡大したり、禁止行為を追加したりした内容に過ぎません。委託事業者が、優位な立場を利用して、下請けに不利益を押し付けることを禁ずるという基本は変わりません。
したがって、これまで下請法の適用対象として、下請法を遵守してきた委託業者、委託取引であれば、格別、新法に神経質になることはないでしょう。もちろん、これまで説明した改正点をチェックし、新法施行に伴って、施行される新政令や新規則にも目を通すことは必須です。
他方、従業員数基準の導入、特定運送委託取引の追加といった改正にともなって、新たに取適法の適用対象となる事業者、委託取引があることには注意が必要です。これまで規制がかからなかった取引相手、取引内容に法規制が及ぶのですから、万一にも違反とならないよう、これまでの取引内容や契約書の内容を精査し、問題点をあぶり出すべきです。研修などで、従業員に改正内容を周知徹底することも必要でしょう。
8. 取適法に対応できているかご不安な場合は弁護士にご相談ください
新しい取適法の施行は、2026(令和8)年1月1日です。おそらく、この記事をお読みになられている時点では、既に法律は施行されており、一刻も早い対応が求められます。法律の専門家である弁護士であれば、新法の内容も十分に理解しています。是非、ご相談されることをお勧めします。



LINEで


