刑事事件の陳述書とは?書き方や提出方法について元検事の弁護士が解説

基礎知識
[投稿日]2025.12.05
[更新日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

刑事事件に関与する中で、「陳述書」という言葉を耳にすることがあります。

本記事では、「陳述書とは何か」という基本から、書き方や提出方法注意点まで、刑事事件における陳述書について詳しく解説します。

第1 陳述書の基本理解

1 陳述書とは何か

陳述書とは、ある出来事について知っている事実や考えを、書面の形で第三者、特に裁判所などに伝える文書です。

刑事事件では、被疑者や被告人本人、またはそれらの人物をよく知る家族や知人、被害者、目撃者などが、裁判官に対して自らの経験や意見、心情を伝える目的で作成します。

2 陳述書作成の目的と供述録取書との違い

陳述書を作成する目的は、さまざまですが、重要なのは陳述者の知っている事実や考えを直接(他の人を挟まずに)裁判所などに届けることです。

被疑者や被告人や参考人などの事件関係者は警察や検察から取り調べを受けます。
その際には、警察や検察が「供述録取書」というものを作成します。
これは、あくまで警察や検察などの第三者が、取調対象者が話した内容をまとめて記載するものであり、第三者の意図が混入してしまう可能性があります。

ただでさえ、捜査機関からの取調べを受けるときは緊張していて正確に話すことができなかったり、時間制限がある中で、作成されるので、供述録取書では自分の体験や見たものを正確に表しきることができない場合があります。

これに対して、陳述書は、時間をかけて落ち着いて自分の体験や考えを、自分の言葉で表現することができ、そこに大きな意味があるのです。

第2 刑事事件における陳述書の提出タイミング

陳述書は事件の進行段階に応じて、さまざまなタイミングで作成されます

作成する主体や提出する先も状況に応じて様々です。以下は主な例です。

1 捜査機関に対して提出する場合

被疑者段階(まだ起訴されていない段階)において、取調べを受けている被疑者の立場で事件とのかかわりや、自分の知っていることを記載して捜査機関に提出する場合があります。

特に、犯人ではないのに犯人だと疑われている場合には、落ち着いた状況で自分の味方である弁護士と一緒に作成して、自分が犯人ではないこと、その理由と根拠などを盛り込んで作成することになるでしょう。

被疑者の親などが、再犯防止を約束する内容で陳述書を捜査機関に提出することもあります。
被疑者が犯行したことについては争いがない場合などに、親が被疑者の再犯防止のために、被疑者を監督することを約束する内容の陳述書を捜査機関に提出することで、起訴されることを防ぐ効果があります。

2 裁判所に対して提出する場合

逮捕されてから起訴されるまでの間や起訴されたあと、被疑者・被告人は勾留(身体の拘束を受けた状態におかれること)されることがあります。

勾留するかしないかの判断をするのは裁判所です。
そこで、裁判所に対して、勾留をしないように求める意見書等を提出することがあります。
そのときに添付資料として被疑者・被告人が事実を認め反省していることや再犯防止環境が整っていることを内容とした陳述書を提出することがあります。

起訴された後、裁判の場で証拠として陳述書を提出するという場合もあります。
裁判においては、原則として、証人や関係者が直接法廷で証言をしなくてはならないという原則がありますが、これらの人物がどうしても法廷に出てくることができない事情がある場合、事前に陳述書を提出して証言の代わりとする場合があります。

元検事弁護士に無料相談(刑事事件の相談予約窓口)元検事弁護士に無料相談(刑事事件の相談予約窓口)

\今すぐ電話する/

03-6276-5513

03-6276-5513

[受付時間] 9:00~21:00

[電話受付時間]9:00~21:00

※無料相談は警察が介入した事件の加害者側ご本人、逮捕勾留されている方のご家族・婚約者・内縁関係の方が対象となります。
その他のご相談は原則有料相談となりますので、ご了承ください。
※刑事事件の無料相談は一部対象を限定しておりますので、予めご了承ください。詳細は弁護士費用ページをご覧ください。

第3 刑事事件における陳述書の重要性

刑事事件においては、捜査機関側が圧倒的に多くの証拠を有していますし、供述録取書という形で多数の関係者の話を証拠化しています。
供述録取書は、捜査機関による先入観や有罪方向に傾く意味をもたせた記載がされることが往々にしてあります。

これに対して、陳述書は、被疑者・被告人の立場で作成することによって、捜査機関の先入観を取り払った内容を作成することが可能です。

裁判官が判断を下す際には、証拠のみに基づいて様々な判断を下しますが、その証拠が捜査機関によって作られたもののみであるか、被疑者・被告人の立場で作られた陳述書があるかは保釈の許否(釈放されるかどうか)や量刑判断(最終的にどれくらいの罪になるか)に直接影響することがあります。

また、陳述書を作成する際に、書面にすることで、感情的になりがちな訴えを整理し、冷静かつ論理的に伝えることができます。読み手にしっかりと内容が伝わるかどうかは、処分の重さや再犯防止の見込みを評価するうえでも非常に重要です。

第4 陳述書の作成方法

1 陳述書の書き方のポイント

事実と意見(事実に対する評価)を区別して記載する

暴行事件の目撃者であった場合、「AがBの顔を強く殴っていた」と記載しても、本当に「強く」殴っていたかは見た人の評価に過ぎないので説得力がありません。

まず、「AがBを殴った。殴ったとき、バコッという音がして、遠くにいた人が振り返っていた。Bは殴られた勢いで倒れてしまった。」という風に事実のみを記載し、その後「だから私はAがBのことをかなり強く殴ったのだと思った。」と意見を記載すると、説得力が増します。

具体性を持たせた記載をする

被疑者の親が監督者として、被疑者が反省していることを内容とする陳述書を記載する場合には、「本当に反省している。」と記載するよりも、「犯行を心底悔やんでいて、頭を丸めて仏門に入った。」「毎朝5時に起きて、自分の犯行に関する反省文を書いている。」といった具体的なエピソードを書くことで、反省の状況がよりリアルに伝わります。

2 陳述書記載のよくある失敗など

感情だけが先行し、具体的な事実が乏しかったり、事実に誇張や虚偽が混じっている場合や裁判と無関係な情報に終始していると、かえって信用性を損なう原因となる

たとえば、被告人の親が「被告人は反省していると思います。私は信じています。」 とだけ記載して、具体的な再犯防止策を語らなければ、何を根拠に反省していると言えるのかが分からず、そのような曖昧な状況で反省していると信じている者が監督したとしても再犯防止できないのではないかと感じさせてしまう可能性があります。

客観的な事実と齟齬することを記載してしまう

証拠上明らかな客観的事実(防犯カメラ映像に映っていることなど)と食い違う事実を陳述書に記載すると、虚偽を述べていると判断される可能性があります。

たとえば、万引きを疑われているが犯行を否認している被疑者が、陳述書で「私はその日、万引き被害にあった店には行っていません。」「店には行ったけど、パン売り場に入っていません。」と記載しているにも関わらず、店の防犯カメラ映像には、被疑者がパン売り場で、あんパンを手に取った瞬間が撮影されている場合には、陳述書の内容全体の信用性が失われ、引いては真犯人であると判断されてしまうかもしれません(もちろん、防犯カメラに写った人が違う人であるとか具体的な理由が存在する場合もあります。)。

第5 お気軽にご相談ください

刑事事件における陳述書は、裁判の流れや結果に少なからぬ影響を与える重要な書面です。

証人や家族、支援者の思いを正しく伝えるためにも、目的を明確にし、客観性・具体性・簡潔さを意識して作成することが求められます。

不安な場合は、弁護士に相談しながら作成することも検討すると良いでしょう。

上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

元検事弁護士に無料相談(刑事事件の相談予約窓口)元検事弁護士に無料相談(刑事事件の相談予約窓口)

\今すぐ電話する/

03-6276-5513

03-6276-5513

[受付時間] 9:00~21:00

[電話受付時間]9:00~21:00

各事務所へのアクセス

※無料相談は警察が介入した事件の加害者側ご本人、逮捕勾留されている方のご家族・婚約者・内縁関係の方が対象となります。
その他のご相談は原則有料相談となりますので、ご了承ください。
※刑事事件の無料相談は一部対象を限定しておりますので、予めご了承ください。詳細は弁護士費用ページをご覧ください。