背任罪とは?成立要件や発覚した際の対応方法について

横領、背任
[投稿日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

第1 背任とは

背任とは、他人の財産を管理する立場にある者が、その任務に反して自己や第三者の利益を図り又は他人に損害を加える目的で不正な行為を行い、結果として財産的損害を与える行為を指します。

日本の刑法は、このような行為を処罰するため、247条で背任罪を定めています。

この記事では、背任罪が成立するための要件や罰則、発覚した場合になすべき具体的な対応方法等について元検事の弁護士が解説します。

第2 背任罪(特別背任罪)の構成要件・罰則

1 構成要件

背任罪(特別背任罪)が成立するためには、以下の構成要件を満たす必要があります。

① 他人から事務処理を委託されたこと

背任罪が成立するためには、加害者が、他人の財産管理や経営上の重要な決定等の事務処理を委託されていることが必要です。例えば、団体や病院等の役員、財務担当者、弁護士等が該当します。

なお、会社経営者や取締役による背任行為は、会社法に定める特別背任罪(会社法960条)によってより重く処罰されます。

② 任務に背く行為をしたこと

「任務に背く行為」とは、加害者が、財産の適切な管理を怠ったり、不正な取引や契約を行ったりすることを指します。

例えば、企業の資金を私的に流用したり不正な契約を締結したりすることが含まれます。

③ 図利加害目的があること

「図利加害目的」とは、加害者に自己または第三者の利益を得る目的や事務処理の委託者である本人に損害を与える意図があることを意味します。

単なる業務ミスではなく、故意に不正を行った場合に背任罪が適用されます。

④ 本人に財産上の損害を与えたこと

事務処理の委託者である本人が財産的損害を被った場合に背任罪が成立します。

金銭的損害だけでなく不利益な契約を結ばされた場合等も含まれることがあります。

2 罰則

刑法247条によれば、背任罪の罰則は「5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」と規定されています。

また、団体の役員等が背任行為を行った場合は、より厳罰が科される可能性があります。

加えて、背任罪に加えて、詐欺罪や横領罪等など他の犯罪が適用される場合、さらに重い刑罰が科されることもあります。

会社の経営者や公務員が背任行為を行った場合、特別背任罪が成立します。
下記第4、3で説明するとおり、同罪は、10年以下の懲役刑若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらを併科する旨定めています。

このため、同罪を犯すと、前科等がなくても実刑判決が出るケースもあります。

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第3 背任罪・特別背任罪の具体例

ここでは背任罪が成立する典型的な事例を紹介します。

会社の資金を私的に流用した場合

企業・団体の経営者・取締役・理事が、企業・団体の資金を無断で個人的な事業に投資するなどし、その結果、企業・団体が大きな損失を被ったケース。

不正な融資を実行した場合

金融機関の幹部が、信用力の低い企業に対して不適切な融資を行い、金融機関に損害を与えたケース。

企業秘密を漏洩し利益の供与を受けた場合

競合他社に自社の企業秘密を提供し、その見返りに個人的な利益を受け取ったケース。

不正な契約を締結した場合

企業・団体の役員や公務員が、特定の企業に対して、架空の発注を行い、その見返りに金銭等をキックバックとして受け取ったケース。

会社の資産を不当に売却した場合

経営者が、個人的な利益を得る目的で、企業の資産を適正価格よりもはるかに低い金額で売却し企業に損害を与えたケース。

第4 詐欺罪・横領罪との違いとは

背任罪は、詐欺罪・横領罪とは異なる犯罪です。

ただ、一般の方にとっては背任罪が前記各犯罪とどのように異なっているのか分かりづらいと思います。

そこで、ここでは背任罪と前記各犯罪との違いについて詳述します。

詐欺罪との違い

詐欺罪(刑法246条)は、他人を騙して財産を取得する犯罪であり、被害者が騙されている点が特徴です。一方、背任罪は、正当な管理権限を持つ者が不正行為を行う犯罪であり被害者を騙すものではありません。

なお、詐欺罪についての詳しい解説は下記の記事をご覧ください。

横領罪との違い

横領罪(刑法252条)は、預かった財産を自分のものとする行為を指します。これに対し、背任罪は「任務に違反して」財産的損害を与える行為であるため、必ずしも財産を自分のものとする行為を指すわけではありません。

なお、横領罪についての詳しい解説は下記の記事をご覧ください。

第5 背任行為が発覚した場合の対応方法

自らに背任罪(特別背任罪)の嫌疑をかけられた場合、実刑判決を避けるために早期に適切な対応をとることが必要です。

一方、自社の役員等に背任行為をした疑いが生じた場合、適切な措置を講じて損害の拡大を防止し損害を回復するために迅速に対応することが必要となります。

ここでは前記の各場合に具体的にとるべき対応方法について詳述します。

自らに背任罪(特別背任罪)の嫌疑をかけられた場合

⑴ 早急に弁護士に相談する

自らに背任罪の嫌疑をかけられた場合、まずは弁護士に相談することが最優先です。適切なアドバイスを受けることで不当な処罰を回避することができます。

⑵ 警察や検察の対応に備える

警察の捜査が進んでいる場合は、取調べに備えて弁護士と協力しながら適切な対応を取ることが重要です。

前記のとおり、背任罪は、企業や公的機関において特に重大な問題とされる犯罪であり厳罰が科せられることもあります。このため、捜査の初期から適切な対応をすることが求められます。

なお、具体的な取調べ対策については下記の記事をご覧ください。

⑶ 返金や示談交渉を進める

被害者がいる場合、早期に返金や示談交渉を行うことで、刑事処分の軽減を図ることが可能です。

自社の役員等に背任行為をした疑いが生じた場合

⑴  証拠を整理し適切な対応を検討する

自社の役員等による背任行為が疑われる場合、まず取引記録や契約書等の客観的な証拠を整理し、事実関係を確認することが重要です。

⑵ 会社や関係者と協議する

背任行為が組織内部で発生した場合には、法務部門や関係者と協議し、適切な対応を決定します。早期に相手方と示談交渉を始めることで、損害の拡大を防ぐとともに損害を回復できる可能性が高まります。

第6 お気軽にご相談ください

上原総合法律事務所は,元検事8名(令和6年10月31日現在)を中心とする弁護士集団で,迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

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