上原総合法律事務所では、家宅捜索が来て、今後どうしたら良いかわからない、というお悩みの方からのご相談をいただきます。
この記事では、家宅捜索とは何か、家宅捜索が来た場合の対応方法等を説明します。
Contents
捜査とは、ある犯罪事実の存在が疑われる場合において、適正な刑罰権行使のために捜査機関により行われる活動です。
犯罪事実の存在を立証するための証拠には、大きく分けて供述証拠と非供述証拠とがあります。
供述証拠を獲得するための捜査方法としては、主に被疑者や参考人の取調べがあります。
この供述証拠については、人の知覚・記憶・表現の各過程に誤りが入りやすく(見間違い・聞き間違い/記憶違い/言い間違い)、一部報道にあるように、捜査官によって誘導がなされて供述が歪曲されるおそれもあるため、その信用性は慎重に判断されなければなりません。
他方で、非供述証拠を獲得するための捜査方法としては、主に捜索差押え・検証・鑑定等があります。
この非供述証拠、具体的には、ナイフの形状、違法薬物が保管されていた状況、遺体の傷の状況、事故を起こした車の損傷状況等については、客観的状況を明らかにするものであり、基本的に高度の信用性が認められるものです。
現在の刑事実務においては、客観的事実や動かし難い事実が何であるのかが極めて重要であり、先ほどの供述証拠の信用性判断に当たっても、その供述が客観的事実や動かし難い事実と整合しているかどうかが最も重要になります。
そのため、捜査機関としては、非供述証拠の獲得を最優先に考えるのが通常であり、その手段として捜索差押え等を行います。
前述のとおり、捜索差押えは、捜査機関にとって犯罪事実を立証するための極めて重要な捜査活動であることから、捜査の比較的初期の段階で行われる傾向があります。
典型例の一つとして、逮捕に先立って捜索差押えを行って、そこで得られた証拠物の分析・精査を行い、その結果を基に逮捕状を取得して対象者を逮捕してくるというパターンがあります(「ガサ先行」と呼ばれる捜査手法です)。
例えば、SNSを利用した誹謗中傷(名誉毀損)の事案などで、誹謗中傷の書込みのIPアドレスから発信者が特定されている事案等において、まずは発信者の自宅の捜索を行って、発信者のPC等の通信機器を押収・分析し、その発信者が当該書込みを行ったことの裏付けをとることなどが挙げられます。
他方で、既に対象者を逮捕できるだけの十分な証拠が整っている場合には、対象者を逮捕するのと同時に自宅や事務所等の捜索差押えを行うパターンもあります。
例えば、ひき逃げの事案などで、現場の防犯カメラからひき逃げをした車の車種やナンバー等から車両の所有者が特定されており、内偵捜査によって、所有者の自宅駐車場に損傷した車両が駐車されており、その車両を運転する者が所有者以外には存在しないことが判明している場合には、対象者を逮捕するとともに対象者の自宅において捜索差押えを行うことなどが挙げられます。
前述のとおり、非供述証拠は、捜査機関にとって極めて重要な証拠です。
そのため、捜査機関は、対象者によって非供述証拠が隠滅されてしまうのを防ぐために、対象者に対して捜索差押えが行われることが発覚しないよう、内密に準備を行います。
具体的には、捜査機関は、捜索差押えに先立って、事前に対象者の住居や事務所等を内偵し、対象者が出入りする時間帯等を把握するなどして、捜索差押えに入るタイミングを見計らいます(そのため、対象者が出勤する時間帯に捜索に入るという例も多いです)。
家宅捜索(捜索・差押え)は、裁判官から捜索差押許可状(いわゆる「ガサ状」)の発付を受けて実施される「強制処分」です。
ここでいう強制処分とは、「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為」(最高裁判所昭和51年3月16日決定)とされています。
すなわち、捜査機関は、対象者から捜索を拒否されたとしても、対象者の意思に反してでも自宅や事務所などに立ち入って証拠を探索することができます。
そのため、捜査機関が捜索を行っている際に、捜査官に対して「やめてください」と申し出たとしても、捜査機関としてはその申出に反してでも捜索を継続することができますし、実力で捜査官の捜索を止めようと抵抗したとしても、捜査官は捜索差押許可状の効力によってその抵抗を排除することができるのです。
捜査機関が捜索を行っている際に、捜査官に暴力を振るうなどした場合には、かえって公務執行妨害などで現行犯逮捕されてしまうリスクがあるので、そのような行為は厳に避けるようにしましょう。
家宅捜索(捜索・差押え)は、対象者の管理権が及ぶすべての部屋に対して行われるのが通常であり、風呂・トイレ・天井裏にも捜索が及ぶことが通常です。
また、家宅捜索は、部屋に備え付けられた家具の中に対しても行われますし、対象者のバッグの中に対しても行われるのが通常です。
現代における犯罪は、パソコンやスマートフォンを使用して行われることが通常ですから、パソコンやスマートフォンは証拠の宝庫であって、通常は差し押さえを受けることになるでしょう。
なお、捜査機関は、いきなり捜索に入るわけではなく、対象場所の内偵を行ってから捜索に入るのが通常ですので、自宅に車が駐車してあれば、車に対する捜索差押許可状の発付も受けてから捜索に入りますし、はなれの倉庫があれば、その倉庫に対する捜索差押許可状の発付も受けて捜索に入ることが通常です。
前述のとおり、逮捕と同時に家宅捜索が行われることもありますが、いわゆる「ガサ先行」といって、逮捕に先立って捜索を行って重要な証拠物の収集が行われる場合があります。
捜査機関は、裁判所に対して、対象者の行為が犯罪に該当するのだという一定の疎明資料を基に裁判所に捜索差押許可状の発付を申請し、裁判所において捜索差押えの許可をしているわけですから、家宅捜索が行われた時点で逮捕されるリスクもそれなりに大きいものになっていると考えられます。
捜査機関としては、捜索差押え→逮捕→勾留→起訴→有罪判決という流れを念頭に置いていると言えるでしょう。
前述のとおり、家宅捜索が行われた場合には、捜査機関として、
捜索差押え→逮捕→勾留→起訴→有罪判決
という流れを想定していることが考えられます。
そのため、家宅捜索が行われた場合には、弁護人を選任した上で、まずもって逮捕・勾留を避けるための弁護活動を行うことが有効な防御手段であるといえます。
逮捕は、被疑者が犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由(嫌疑の相当性)がある場合であって、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがあるときに行われるものですから、家宅捜索が行われたタイミングで、弁護人から捜査機関に対して、嫌疑の相当性がないことや、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを上申書などで主張しておく必要があるのです。
弁護活動をするといっても、捜査機関が把握している犯罪事実をできる限り詳細に特定する必要がありますので、弁護士に相談する際には、捜査機関から交付されている「押収品目録」を持っていくとよいでしょう。
この押収品目録には、どの部署が捜索に入ったのか、被疑者が誰であるのか、被疑者が何名なのか、どのような罪名なのか、どのような証拠を押収していったのかが記載されていますので、この「押収品目録」を見せながら相談することで、より効果的な主張がしやすくなるというメリットがあります。
押収された証拠物のうち、犯罪の立証にとって重要なものについては、原則として、犯罪の立証を行う舞台である刑事裁判が終了(確定)しない限りは返還を受けられないものと考えておいたほうがよいでしょう。
他方で、犯罪の立証のために必要でない証拠物や、犯罪の立証のために必要であるが捜査機関においてコピーを既に作成したもの(デジタルフォレンジック解析済みのスマートフォン等)については、刑事裁判の終了を待たずして返してもらえることもあります。
証拠品を早期に返してもらうためには、押収品の還付という手続をとる必要があり、場合によっては、犯罪の立証に必要でないことや還付の必要性を捜査機関に説明しなければならないこともありますので、その場合も弁護士に相談するというのがよいでしょう。
押収された証拠物から余罪が発覚するというケースは珍しくありません。
例えば、詐欺罪でスマートフォンが押収されてしまった場合に、そのスマートフォンの中に児童からSNSでわいせつ画像を送ってもらった際の記録が残っており、それが児童ポルノに該当するものであったというような事案もあります。
そのような場合には、捜査機関としては、余罪(例でいうと児童ポルノ禁止法違反)についても捜査を行うのが通常ですので、押収物から余罪が発覚しそうだという心当たりがある場合も、弁護士にそのリスクを説明したうえで、余罪を含めて逮捕・勾留されないようにするための対応策を早期に検討する必要性が高いでしょう。
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年9月26日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
所属弁護士全員が刑事事件について熟知しており、独自のノウハウにより、「罪を犯してしまったが示談等して事件をなるべく穏便に解決させて再出発したい」「罪を犯していないので冤罪を受けないようにしたい」といった方々の弁護をしています。
性犯罪も多数取り扱っており、たくさんの事件を不起訴や執行猶予に導いています。
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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