
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
目次
はじめに
「ボヤを起こしてしまった」「放火の疑いをかけられている」——。
こうした場面で最初に多くの方が気にするのが、放火罪でどのような刑罰が科されるのかという点です。
放火罪は、人命や公共の安全を脅かす極めて重大な犯罪とされ、刑法の中でも最も重い部類の犯罪です。
場合によっては死刑や無期拘禁刑が科される可能性すらあります。
この記事では、元検事の弁護士が、放火罪の種類や刑罰の内容、逮捕後の刑事手続きの流れ、そして弁護士による弁護活動についてわかりやすく解説します。
第1 放火罪とは
放火罪とは、故意に火をつけて建物や物を燃やし、公共の安全や他人の財産を危険にさらす犯罪です。
刑法では放火に関する複数の条文が存在し、その対象によって刑の重さが変わります。
なお、故意に火をつけた場合は放火罪となりますが、過失による火災は失火罪(刑法第116条)として別に扱われます。
放火罪は大きく次の3類型に分けられます。
1 現住建造物等放火罪(刑法108条)
- 現に人が住んでいる建物や艦船に放火する場合
- 最も重い放火罪
- 法定刑:死刑、無期拘禁刑、5年以上の拘禁刑
2 非現住建造物等放火罪(刑法109条)
- 人が住んでいない建物や公共施設などに放火した場合
- 法定刑:2年以上の拘禁刑
3 建造物等以外放火罪(刑法110条)
- 自動車や森林など、建造物以外の物に放火した場合
- 法定刑:1年以上10年以下の拘禁刑
第2 放火罪の逮捕の可能性
放火は重大犯罪であり、捜査機関は非常に厳格に対応します。
放火事件が発生した場合、警察や消防は直ちに現場検証を行い、火災の原因を特定します。
放火の疑いがある場合、軽微な建造物等以外放火でない限り、逮捕される可能性は高いです。
まず、火災現場の状況や証拠に基づき、警察が放火の可能性を疑うと、目撃情報や防犯カメラの映像が精査されます。目撃証言があり、特定の人物が火災発生直前に現場にいた場合、その人物が事情聴取を受け、証言内容によっては逮捕につながることがあります。また、防犯カメラの映像等で放火の瞬間が記録されている場合、物証として強力な証拠となり、即座に逮捕が行われる可能性があります。
さらに、放火の疑いがかけられた人物が、不自然な発言をしていたり、過去に類似の犯罪歴がある場合、状況証拠が揃った時点で逮捕に踏み切ることが多いです。特に、可燃物を持っていたり、ライターやガソリンなどの燃焼物質を所持していた場合には、放火の意図が推認されるなどとして、犯人の嫌疑が高まります。
また、逮捕前、任意捜査の過程で矛盾する供述をした場合も、警察はその人物に対する疑いを強め、証拠を固めた上で逮捕する可能性が高くなります。仮に自白が得られた場合は、放火の事実が決定的となり得ますし、事案の重大性からすれば、起訴される可能性も極めて高くなります。
放火事件では、周囲への危険性が極めて高いため、警察は通常の犯罪よりも迅速かつ厳格に捜査を進めます。
被疑者として捜査の対象となった場合、適切な対応を取らなければ、逮捕の可能性が高まり、実刑の可能性も否定できないため、慎重な行動が求められます。
第3 放火罪の刑事手続きの流れ
放火事件で逮捕された場合、刑事手続きはおおむね次のように進みます。
- 逮捕・勾留(最大23日間)
- 起訴または不起訴の判断
- 公判請求(起訴された場合)
- 裁判での弁護活動
- 判決(有罪・無罪、量刑)
この流れの中で、不利な供述や証拠が固められると、厳しい刑罰につながりやすくなります。
第4 放火罪における弁護活動
放火罪は量刑が極めて重いため、弁護士による適切な防御活動が不可欠です。
1 無実を主張する場合
以下のような弁護活動が考えられます。
- 火災原因の科学的鑑定を精査
- アリバイ証拠の提出
- 証拠能力に問題がある場合の争い
2 量刑を軽減する場合
- 被害弁償や示談:被害者との間で誠実に解決を図る
- 自首の成立:捜査機関に自主的に出頭した事実を立証
- 精神疾患の考慮:心神耗弱や心神喪失の主張、治療の必要性を訴える
- 反省の姿勢の証明:家族や支援者による監督体制、再犯防止に関する事情の提出
など、被告人に有利な事情を可能な限り集め、実刑回避や執行猶予の獲得を目指すことになります。
第5 まとめ
- 放火罪は、刑法の中でも最も重い犯罪の一つであり、場合によっては死刑や無期拘禁刑が科される。
- 現住建造物等放火罪は特に重く、殺人罪と並ぶ重大犯罪である。
- 放火の疑いがかかれば、警察は迅速に逮捕・捜査を進める。
- 弁護士による無罪主張や減刑活動が不可欠であり、早期の相談が結果を大きく左右する。
ご相談ください
放火罪は、人命や財産に大きな被害を及ぼす犯罪であり、刑法でも最も重い刑罰が科される可能性があります。
逮捕された場合、速やかに弁護士へ相談し、適切な弁護活動を行うことが重要です。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団です。
刑事事件、とりわけ放火のような重大事件に対し、迅速かつ的確に対応できる体制を整えています。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。