イラストは著作権によって保護されており、著作権者に無断で複製や公衆送信などを行うことは違法になり得ます。
上原総合法律事務所では、著作権を害されている著作権者からのご相談や、自分のしていることが著作権に反しないかといったご相談をいただきます。
ビジネスをする方は、著作権を適切に理解していないと、思わぬトラブルを招いてしまいかねません。
イラストを取り扱うことがある会社経営者・担当者は、著作権法について正しく理解しておく必要があります。
本記事ではイラストの著作権について、著作権法のポイントを解説します。
Contents
著作権とは、著作物について認められる権利です。
「著作物」とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法2条1項1号)。
たとえば記事や書籍、楽曲(メロディー・歌詞)、映画、イラストなどに著作権が認められます。
著作権者は、著作物について以下の権利を専有します。
①複製権(同法21条) ②上演権・演奏権(同法22条) ③上映権(同法22条の2) ④公衆送信権等(同法23条) ⑤口述権(同法24条) ⑥展示権(同法25条) ⑦頒布権(同法26条) ⑧譲渡権(同法26条の2) ⑨貸与権(同法26条の3) ⑩翻訳権・翻案権等(同法27条) ⑪二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法28条) |
著作物につき、これらの権利によって保護された行為を著作権者の許諾を得ずに行うと、著作権侵害となります。
著作権侵害には、直接侵害とみなし侵害の2種類があります。
イラストに関する著作権侵害の成否についても、直接侵害とみなし侵害の2つの観点から判断する必要があります。
イラストの著作権に対する直接侵害は、以下の要件をすべて満たす行為について成立します。
①著作物性(創作性) ②依拠性 ③同一性または類似性 ④利用行為 |
著作物の利用行為そのものではありませんが、著作権侵害の利用行為を助長する「間接侵害(みなし侵害)」として違法とされています(著作権法113条)。
イラストについては、たとえば以下の行為が間接侵害(みなし侵害)に当たります。
など |
著作権法上、間接侵害(みなし侵害)となるのは以下の行為です。
①国内で行われたとすれば著作権侵害に当たる行為によって海外で作成された物を、国内において頒布する目的で輸入する行為 ②著作権侵害行為により作成された物につき、著作権侵害であると知りながらする以下の行為
③リーチサイト・リーチアプリ(いわゆる海賊版サイトにユーザーを案内するサイト・アプリ)に対して、著作権侵害を構成するコンテンツのリンクを提供する行為 ④リーチサイト・リーチアプリを提供する行為 ⑤著作権侵害であると知りながら海賊版プログラムのライセンスを取得し、業務の一環として、コンピュータにインストールして使用する行為 ⑥コピーガードを不正に解除する行為 ⑦コピーガードを解除するパスワードを、公衆に対して譲渡または貸与する行為 ⑧著作物の権利管理情報を改ざんする行為 ⑨情を知って、権利管理情報が改ざんされた著作物またはそのコピーを頒布等する行為 ⑩国内盤の発売から4年以内に国外盤CDを輸入および国内で頒布し、または頒布目的で所持することにより、著作権者または著作隣接権者の利益を不当に害する行為 ⑪著作者の名誉・声望を害する方法で著作物を利用する行為 |
「フリー素材」とされているイラストについても、どのような使い方をしてもよいわけではありません。
利用規約等を確認した上で、認められている範囲内で利用しましょう。
フリー素材イラストの利用に関しては、特に以下の各点に注意が必要です。
具体的な利用ルールの詳細については、各イラストの利用規約等に記載されています。
これを確認することでビジネス上のトラブルを避けることができます。
多くの場合、数分で確認できますので、面倒でも、利用する前に必ずご確認ください。
なお、著作権フリーのサイトから入手した写真でも、実は第三者の著作物であった場合、ダウンロードして使用した第三者が損害賠償義務を負うとされた裁判例がありますので、この観点からも注意が必要です。
①クレジット表記の要否 ②改変の可否 ③商用利用の可否 ④商品化の可否 |
イラストの著作権を侵害した者は、以下の法的・社会的な制裁を受けることになります。
①損害賠償責任 ②刑事罰 ③社会的な制裁 |
著作権侵害は不法行為(民法709条)に当たり、侵害者は被害者に生じた損害を賠償しなければなりません。
侵害を受けたコンテンツの知名度が高い場合は、巨額の損害賠償責任が発生することもあり得ます。
なお著作権法114条では、著作権侵害による損害額の推定規定が設けられており、被害者の立証責任が緩和されています。
著作権侵害は犯罪であり、直接侵害については「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」(著作権法119条1項)、間接侵害(みなし侵害)については「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」(同条2項3号)が課され、または併科されます。
また、法人の役員・従業員等が、法人の業務に関して他人の著作権を侵害した場合は、法人にも「3億円以下の罰金」が科されます(同法124条1項1号)。
なお従来の著作権法では、著作権侵害は「親告罪」とされており、被害者などの告訴がなければ被疑者を起訴することができませんでした。
しかし、2018年12月30日に施行された改正著作権法により、著作権侵害が非親告罪に変更されたため、現在では被害者などの告訴がなくても被疑者を起訴できるようになっています。
著作権侵害を犯したことが報道されたり、SNSで拡散されたりすると、社会的評判が大きく傷つきます。
特にインターネットを通じて情報が瞬く間に広まる現代では、これらの社会的制裁によるダメージも無視できません。
他人のコンテンツを利用する際には、著作権侵害に当たらないよう十分ご注意ください。
自社の著作権を侵害された場合は、損害賠償請求や刑事告訴によって侵害者の責任を追及することを検討する必要があります。
この場合、どこまでコストをかけて何をするかという検討をしていくことになります。
不適切な行動をとって被害を拡大させることのないよう、著作権を侵害されたことの結果として生じた被害の程度や、今後の同種被害を防ぐために何が最適か、を慎重に決定する必要があります。
反対に他人の著作権を侵害してしまった場合は、誠実な対応を速やかにする必要があります。
一刻も早く謝罪・示談などを試みれば、重い法的責任を回避できる可能性があります。
上原総合法律事務所では、著作権法違反に関するご相談をお受けしています。
弁護士にご相談いただければ、著作権侵害に関する対応について、依頼者の立場に応じてアドバイスいたします。
イラストの著作権を侵害された、または他人の著作権を侵害してしまった方は、是非ご相談ください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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