いろいろと話題に事欠かない日本ハムファイターズのBIGBOSSこと新庄剛志監督ですが、そのBIGBOSSという名称について、株式会社北海道日本ハムファイターズによる商標登録ができないかもしれないという報道がありました。
なぜ、そのようなことが起こり得るのでしょうか。
本記事では、商標権について簡単にご説明したいと思います。
まず初めに、そもそも商標とは何かについて説明します。
「商標」とは、ごく簡単に言うと商品やサービスに付される目印のことです。
商標があることによって、特定の商品又はサービスについて、誰が出しているものであるかを表示し(出所表示機能)、同一の商標であれば一定の品質・質であることが保証され(品質保証機能)、企業は商標を使って商品等の宣伝を行うことができます(広告宣伝機能)。
以上で述べたような商標の機能は、複数の人が同じ商標を使うことができる状態であれば意味がありません。
せっかくとても品質の高い商品を作って独自の商品名(商標)をつけ、ブランド化しても、関係のない第三者が同じ名前の商品を作って勝手に売ることができることになってしまうからです。
そこで、商標法は、商標を登録した者に「商標権」を認め、権利者に登録商標の独占的な使用権を認めました。
登録できる商標は、「ロゴ商標」、「商品名等の文字商標」から、「動き商標」、「音商標等」様々なものがあります。
たとえば、株式会社伊藤園の有名な「お~いお茶」ですが、音商標として、「「おーいお茶」という人の音声が聞こえる構成となっており、全体で4秒の長さである。」ものが登録されています。
また、商標を登録する際には、商品や役務の区分を定める必要があります。
前述の「おーいお茶」については(様々な分類で登録されていますが基本的には)第30類(コーヒー、茶、穀物の加工品などの加工した植物性の食品、調味料など)で登録されています。
商標を登録し、商標権を有する権利者は、自身の登録した商標の区分と商標が同一又は類似する商標を使用している者に対して、その使用の差し止めを求めたり、損害賠償を請求することができます。
商標権は、特許庁長官に対して商標登録出願をして、審査を経て登録されなければ商標権としての権利を主張できません。
そして、基本的には商標の登録は早い者勝ちです。
たとえば、Aという人とBという人がそれぞれ別の場所で、全く同じ日に、喫茶店「BIGBOSS」を開店したとします。
Aは店名について商標登録出願をし、後に商標の登録を受けましたが、Bは商標登録出願をしませんでした。
この場合、Bが後から店名を商標登録しようとしても、Aが先に商標登録してしまっている以上、商標登録を受けることはできません。
それだけでなく、BはAから店名を変えるように請求されたり、損害賠償請求をされる可能性さえあるのです。
今回、「BIGBOSS」という商標が、日ハムよりも先に別の方によって商標登録出願されていたため、日ハムが商標登録できないかもしれないという報道がなされたようです。
仮に、日ハム以外の方が、「BIGBOSS」という商標について、第25類(被服、履物等)で商標の登録を受けた場合、日ハムを含む商標権者以外の者は「BIGBOSS」と記載されたユニフォームの販売ができなくなる(販売した場合差し止めや損害賠償請求される可能性がある)というわけです。
もっとも、「BIGBOSS」の商標を日ハムよりも先に出願した方については、「商標登録を受けることができない商標(商標法4条)」として拒絶理由通知を受けているようなので、最終的には日ハムが商標登録を受けることができる可能性が高いものと思われます。
あまりなじみのない商標権という権利ですが、商標権を侵害すれば損害賠償請求を受ける可能性もありますし、刑事罰(10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科)を受ける可能性もあります。
なんらかの商品を作ったり、新しくお店を開店するときなどにも、つけようとしている商品名や店名がすでに登録されている商標である場合、あとから変更を余儀なくされる場合もあります。
このような事態を避けるためには、商品名や店名をつける際には事前の商標チェックを行い、自らが商標登録出願をするということも重要です。
商標チェックや商標登録出願は、商標に慣れていない方には難しい場合も多いので、なるべく専門家に相談するようにしましょう。
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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