
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
刑事事件で家族や友人が逮捕・勾留された場合、面会を希望しても「接見禁止がついているためできません」と言われることがあります。
突然の身柄拘束に動揺している中で、更に面会もできないという状況に多くの方が困惑し、不安を感じます。
この記事では、「接見禁止」とは何か、どういった場合に接見禁止が付されるのか、そして、どうすれば接見禁止を解除して面会をすることができるのかなどについて、元検事の弁護士が法律的な観点から分かりやすく解説します。
目次
第1 接見禁止とは何か
接見禁止とは、被疑者・被告人が勾留されている間に、特定の者との接見(面会)や書類・物品の授受を禁止する措置のことをいいます。
刑事訴訟法81条は
「裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。」
と規定しており、これが接見禁止の根拠条文です。
この規定は被告人についてのものですが、刑事訴訟法207条1項により被疑者の勾留の場合にも適用されます。
なお、「第三十九条第一項に規定する者」とは弁護人又は弁訴人となろうとする者のことです。
通常であれば、勾留中であっても、家族や友人などが警察署等に行って面会し、物品を差し入れることは可能ですが、接見禁止が付されると弁護士以外の者との接触が禁止されます。
また、面会だけでなく、手紙の授受も禁止されることとなり、弁護士を介する以外では、社会内にいる人と勾留中の被疑者等との間でコミュニケーションをとることは全くできなくなってしまいます。
接見禁止の目的は、証拠隠滅や共犯者との口裏合わせの防止など、刑事手続きの適正を確保することにあります。
弁護士は接見禁止が付されていても接見ができますが、当然ながら罪証隠滅や接見禁止の趣旨に反する伝言等はできませんし、接見禁止が付されていれば、やはり社会内にいる方と被疑者等のコミュニケーションは大きく阻害されることとなります。
他方で衣類やお金の差し入れなどは可能ですので、その限度では接見禁止が付されていてもご家族等によるサポートが可能です。
なお、逮捕中は弁護士以外は接見・面会をすることはできませんが、これは接見禁止の効果によるものではありません。
※逮捕後の流れについてはこちら(逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
第2 接見禁止の理由
接見禁止の根拠となる刑事訴訟法81条で、接見禁止となるのは
「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」
とされています。
具体的には、以下のような事情があると判断された場合に接見禁止が命じられることがあります。
・共犯者との口裏合わせを防止する必要があるとき
・証人や被害者に対し、被害申告の取下げなどの働きかけが懸念されるとき
・証拠の隠滅や改ざんの恐れがあるとき
・被疑者が暴力団等、反社会的勢力と関係しているとき
これらの事情がある場合、検察官が勾留請求と合わせて接見禁止も請求することが多く、裁判所も罪証隠滅等の疑うに足りる相当な理由があると認めれば、接見禁止となります。
弁護士以外の接見(面会)の場合、いずれにせよ時間は短時間に限られますし、警察官が立ち会うことにもなりますので、そこで罪証隠滅に繋がるようなやりとりがなされることはないように思われるかもしれません。
しかし、特に組織犯罪や暴力団関係者の場合は隠語でやりとりがされたり、そうでなくとも特定の人物が面会に行くこと自体が意味を持つことすらあります。
また、家族等の面会であっても、被疑者の部屋の片付けや持ち物の処分を依頼することで、家族自身もそうとは知らず証拠が隠滅されてしまうといった可能性も否定できません。
こういった事情もあり、少しでも罪証隠滅等のおそれがあれば接見禁止は付されがちというのが実情です。
なお、条分上は「逃亡」のおそれも接見禁止の理由となりえますが、特殊な事案を除き接見等を認めることと逃亡のおそれの間に関連は見出しがたく、罪証隠滅のおそれを理由に接見禁止となる場合がほぼ全てであろうと考えられます。
第3 接見禁止の期間
接見禁止の期間は、基本的には勾留期間と連動します。
被疑者の勾留期間は原則10日間で、延長が認められれば更に最大10日間延長することが可能です(刑訴法第208条)。
つまり、最大20日間の勾留期間中、接見禁止も続くことがあります。
その上、起訴後に勾留が継続される場合に引き続き接見禁止が命じられることもあります。
このように、接見禁止の期間は一律ではなく、事件の性質や被疑者・被告人の状況に応じて決められます。
ただ、一部の特殊な事件を除き、実務上は起訴後の被告人としての勾留にも接見禁止が付されるのはまれであり、一般的には被疑者勾留の10日ないし20日間の間接見禁止が付されるという例が多いでしょう。
第4 接見禁止の解除方法
1 準抗告・抗告
接見禁止に対しては、準抗告・抗告という手続によって不服を申し立てることが可能です。
準抗告とは、裁判所の決定に対し再度の判断を求める手続です。
弁護士が罪証隠滅等のおそれがなく、接見禁止の要件がないなどとして準抗告を行い、裁判所が再度審査した上で接見禁止を不当と判断すれば、解除されることがあります。
2 接見禁止の解除申立て
接見禁止の解除を求める申立てをすることも可能です。
とはいえ、検察官も裁判官も必要だという判断で接見禁止の請求・決定をしているのですから、大きな事情変更等なければ単に解除を申し立てても判断が変わる可能性は低いと言わざるを得ません。
そこで実務的には、接見禁止の一部解除の申立てという手段がしばしば用いられます。
例えば特殊詐欺でご子息が勾留されているといった場合、組織犯罪ですから接見禁止の全面的な解除となる可能性は極めて低いでしょう。
ただ、両親に限っての面会であったり、さらに限定すれば両親との手紙の授受であったりと、解除の範囲を限定して申し立てればその限度で認められる可能性は高まります。
接見禁止の一部解除の申立てがあると、裁判所は検察に意見を求め、その意見も踏まえて一部解除等の判断をします。
検察としても問題がなければ「しかるべく」といった意見を返し、スムーズに一部解除となる場合もあり、検察としてもこのような意見となりそうな申立てをすべく検討することも重要です。
3 勾留理由開示請求
勾留理由開示請求は、勾留された本人または弁護人が、裁判所に対して、なぜ勾留されたのかについての説明を求める手続です。
勾留理由の開示がなされるのは公開の法廷であり、家族等も傍聴が可能なため、その場で被疑者の姿を目にすることができますし、事実上目を合わせ、一声かけるくらいはできるかもしれません。
ただ、これはあくまで傍聴の場であって、面会ではなく会話等はできないため、姿だけでも見たい、あるいは顔を見せて安心させてあげたいといった目的でのものと理解いただくべきかと思います。
第5 接見禁止中の権利と制限
1 接見禁止中の弁護士との接見
接見禁止が付されていても、弁護士との接見は制限されません。
刑事訴訟法は弁護人との接見交通権を保障しており、被疑者・被告人は弁護士と自由に面会することができます。
この接見を通じて、弁護士は、接見禁止中であっても取調べ等について被疑者にアドバイスしたり、弁護方針を検討したりすることができます。
2 接見禁止中の差し入れ
接見禁止があっても、書籍や衣類等の生活に必要な物品の差入れは原則として可能です。
ただし、書簡やメッセージを含む物品または特定の人物からの差入れが制限される場合もあります。
差入れが許される範囲は、拘置所や勾留先の規則、事件の状況等によって異なります。
3 接見禁止の制限内容
接見禁止の内容は事件ごとに異なり、例えば「家族以外との接見禁止」や「特定の人物との接見禁止」等、部分的な制限が設けられることもあります。
接見禁止の範囲や内容は、裁判所の判断に基づいて個別に決定されます。
ただ、多くの場合は一般的、網羅的に接見禁止が付される例が多く、その場合は接見禁止の一部解除を求めるなどの対応が必要になります。
第6 お気軽にご相談ください
接見禁止の解除を目指すためには、刑事事件に精通した弁護士の選任が不可欠です。
接見禁止が続くと、被疑者・被告人本人だけでなくその家族や友人らも大きな不安を抱えることになります。
接見禁止は最大20日間の勾留期間中だけでなく、起訴後まで続く可能性も否定できません。
こうした不安を解消すべく、接見禁止を早期に解除するためにも、専門的知識と経験を有する弁護士に相談することが重要です。
上原総合法律事務所は、元検事 8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
検事として実際に、裁判所へ接見禁止を請求したり、弁護士から接見禁止の解除を申し立てられた場合には反対意見を出したりした経験を有する弁護士が多く在籍しているので、これらの経験も踏まえた弁護活動が可能です。
接見禁止の解除だけでなく、刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
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