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違法アップロードと著作権について元検事の弁護士が解説

第1 はじめに

みなさんは,「漫画村」をご存知でしょうか。
「漫画村」は、違法にコピーされた、いわゆる海賊版の漫画などの書籍をインターネット上に公開し、だれでも見ることができるようにしたサイトです。
この「漫画村」の運営者は、刑事告訴され、2021年6月2日、著作権法違反と組織犯罪処罰法違反の罪に問われ、懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6200万円の判決が言い渡されました。
今回の記事では、「漫画村」の運営者がどのような罪に問われたのか、意外に身近な著作権法違反である「違法アップロード」についてまとめたいと思います。

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第2 違法アップロードとはなにか

 1 漫画村の判決内容

「漫画村」の運営者が問われた、著作権法違反について、福岡地裁は「著作権者の許諾を得ずにだれでも閲覧できる状態にしたもので、違法行為に当たる」としています。
この判決から、違法アップロードとは、①著作権者の許可を得ていないこと②誰でも閲覧できる状態にしたことの要件を満たすものであることがわかります。
これは、具体的には、誰のどのような権利を侵害しており、違法となるのでしょうか。
以下で詳しく見ていきます。
 

2 何を侵害しているか

人が創作した著作物については、著作権者に様々な権利が発生します。(著作権の概要については、こちらをご参照ください。
そうした著作物に関する権利の中には、「公衆送信権」「送信可能化権」というものがあります。
「公衆送信権」とは、読んで字のごとく、著作物を公衆送信することですが、具体例をあげるとすると、テレビ放送をイメージするとわかりやすいと思います。
「送信可能化権」というのは、自動公衆送信の場合に、送信可能化する権利を指します。
送信可能化権については、わかりにくい部分もあるので、例を挙げて説明します。

たとえば、Aさんが撮影した写真(著作物)を、自分のブログ上にアップロードし、ブログ内のダウンロードボタンを押した人のみが閲覧できるようにした場合、これは、Aさんが自身の著作物を「送信可能化」したと言えます。
また、仮にAさんが撮影した写真(著作物)を、Bさんが勝手にBさんのブログ上にアップロードし、ブログ内のダウンロードボタンを押した人のみがAさんが撮影した写真を見ることができるという場合、Aさんの「送信可能化権」を侵害していることになります。この場合、誰一人としてBさんのブログを閲覧しなかったとしても、送信可能化権の侵害に当たります。
「ダウンロードボタンを押せばだれでも閲覧できた。」=「公衆送信を可能にした。」こと自体が著作権の侵害にあたるというわけです。

これらの権利について、侵害した場合(つまり,著作者の許諾を得ずに勝手に公衆送信等した場合)、侵害をした人は、刑事上・民事上の責任を負うことになります。
「漫画村」の運営者も、漫画という著作物を、許可なくインターネット上にアップロードしたことから、処罰を受けたということです。

第3 違法アップロードの具体例

1 人の著作物を勝手にアップロードしたらダメ

人の著作物を勝手に無断で許可なくアップロードしたら著作権の侵害に当たります。
その侵害の態様や著作物の種類は様々ですが、基本的には、人の作成したものを著作権者の許可なくインターネット上にアップロードすることは全て著作権法違反であり、刑事上・民事上の責任を問われる可能性があります。

2 ゲームプレイ動画

違法アップロードであるにもかかわらず,あまり認知されていない類型として,いわゆる「ゲームプレイ動画」があります。
ゲームプレイ動画とは,ゲームをプレイし,そのプレイ状況を撮影してyoutubeなどにアップロードする動画の総称です。
ゲーム実況動画等もこの一部です。
そもそも,ゲームのプレイ映像は,著作権法上「映画の著作物」として保護されています。
著作物である以上,当然に,著作権者の許可を得ず,だれでも閲覧できる状態にすれば著作権法違反になります。
では,なぜ,ゲームプレイ動画がたくさんアップロードされているのでしょうか。

これは,いくつかの理由があります。

まず,一つ目は著作者が包括的な許可を出している場合が考えられます。
たとえば,任天堂は,「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」というのを公表していて,このガイドラインに沿った形であれば,インターネット上にゲームプレイ動画を公開することを許容しています。

次に考えられるのが,著作権者が,著作権を侵害されていることに気が付いていない又は気が付いていても放置している場合です。
この場合,著作権者の許可が存在しない以上,著作権者が侵害行為を認識したり,侵害が看過できなくなった場合等には,いつでも責任追及することができます。

第4 違法アップロードに対する責任

 1 刑事責任

著作権の侵害については、著作権法上「10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはその併科」と定められています。
「漫画村」の運営者は、「懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6200万円」という判決を下されました。
「漫画村」は相当悪質性が高く、手にした利益も大きかったこと、組織犯罪処罰法という法律違反も犯していたこともあり、このような判決が下されましたが、一般的な著作権法違反の場合,ここまで重い刑罰が下されることはまれであると思われます。

 2 民事責任

著作権を侵害した者は、著作権者から、権利侵害をやめるよう差止請求をされることに加え、損害賠償請求をされます。
著作権法上、原則として侵害者が著作権侵害行為により得た利益を損害額とみなす旨の規定が存在します。

つまり、一生懸命動画つくってアップロードしても、それが違法アップロードである限りは、その動画により得た収益は全て失われる可能性があるのです。
仮に、違法アップロードをしている人が、現時点で著作権者から著作権侵害行為を放置されていたとしても、著作権者からの許可を得ていない以上、著作権者から責任追及された瞬間に、それまでためた利益を全て吐き出すことになります。

第5 違法アップロードしてしまったら

仮に違法アップロードをしてしまったら、できるだけ早く、著作権者からの許可を得ることが必要です。
著作権者からの許可を得られないのであれば、いつ損害賠償請求されたり、刑事罰に問われるかわからない以上、すぐに違法アップロードはやめることをおすすめします。

第6 終わりに

IT化がすすむ昨今、自分では気が付かないうちに、違法アップロードをしてしまったり、いつのまにか自分の著作物が違法アップロードされてしまうなどのトラブルも多発しています。
弊所では、違法アップロードをしてしまった人、されている人に対するサポートを行っています。もし、お困りのことがあれば、ぜひ一度弊所にご相談ください。

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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。

 

弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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