ある日突然、警察や検察から連絡を受けて話を聞きたいと言われた。
そんな時、誰しもが不安を感じることと思います。
そこで、今回は、元検事の弁護士が事情聴取の概要、流れや呼ばれた際の対応・注意点等について解説します。
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警察や検察といった捜査機関は、刑事事件の真相を解明し刑罰権を適正に行使するために日々捜査を行っています。
こうした捜査の一環として、捜査機関が、ある人の話を聞く必要があると判断した時、その人に対して事情聴取(取調べ)に応じるよう求めます。
例えば、被害者・目撃者等の純粋な参考人として事情聴取に呼ばれた場合、法律上これに応じる義務はありません。
このため、事情聴取を拒否することは可能です。
ただし、捜査機関が事情聴取の要請をするということは、その人の供述が当該事案の真相を解明して刑事事件か否かを見極め、刑罰権を適正に行使するために必要だと判断したからだと推測されます。
したがって、捜査機関からの事情聴取の要請に応じないことにより、当該事件が刑事事件化されなかったり、刑事事件化されても起訴されず刑事裁判が行われなかったりする可能性があります。
仮にあなたが被害者で、当該事件の被疑者に対する刑事処罰を望むのであれば、事情聴取の要請に応じることが望ましいでしょう。
また、重要参考人として呼ばれた場合も法律上事情聴取に応じる義務はありません。
このため、要請を拒否することは可能です。
ただし、重要参考人の中には捜査機関から被疑者に当たるのではないかと疑われている人も含まれます。
このような重要参考人が、どうしても都合がつかない場合のような正当な理由なく要請を拒否した場合、将来的に捜査機関から逮捕・勾留されるリスクが事実上高まってしまうリスクがあります。
したがって、このようなリスクを回避するために、正当な理由がなく事情聴取の拒否を続けることは避けた方が無難だと考えます。
さらに、被疑者として取調べに呼ばれた場合は、逮捕・勾留されているか否かにより拒否することができるかどうかが異なります。
これは、刑事訴訟法198条1項ただし書において、「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と定められていることによります。
そのため、被疑者が逮捕・勾留されている事件(このような事件を「身柄事件」といいます。)であれば、被疑者は取調べを拒否することができません。
一方で、被疑者が逮捕・勾留されていない事件(このような事件を「在宅事件」といいます。)であれば、被疑者が取調べを拒否することができます。
しかし、在宅事件の被疑者が、正当な理由なく取調べの拒否を繰り返してしまうと、上記重要参考人の場合と同様、将来的に捜査機関から逮捕・勾留されるリスクが事実上高まってしまうリスクがあります。
したがって、このようなリスクを回避するために、正当な理由がなく事情聴取の拒否を続けることは避けた方が無難だと考えます。
誰しもが、捜査機関から事情聴取(取調べ)を受けることには気後れするものと思います。
上原総合法律事務所には元検事が多数在籍しておりますので、実際に事情聴取(取調べ)を行っていた経験を有する弁護士から具体的な対策等のアドバイスをすることができます。
お悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
事情聴取と取調べの違いは、捜査機関が話を聞く人の位置づけによって異なります。
捜査機関が、被害者・目撃者等、被疑者以外で刑事事件について何らかの情報を持っていると思われる人、すなわち参考人から話を聞くことを事情聴取といいます。
なお、参考人の中でも捜査にとって特に重要性の高い人のことを実務上重要参考人と呼ぶこともあります。
例えば、捜査機関が被疑者とまで断定できていないものの、被疑者である可能性が高いと思われる人等が重要参考人に当たります。
実際、殺人等の重大事件において、最初重要参考人として事情聴取をされていた人が、その供述内容やその後の捜査の展開によって後日被疑者として逮捕・勾留されるというケースもよくあります。
一方で、捜査機関が、被疑者から話を聞くことを取調べといいます。
⑴ 当日までの流れ等
まず、捜査機関から連絡を受け、特定の日時に事情聴取(取調べ)をしたい旨が告げられます。
指定された日時に対応できない場合は、その旨を捜査機関に伝えて日程調整をしても支障ありません。
ただし、あなたが重要参考人や被疑者である場合、正当な理由なく何度も事情聴取や取調べを拒むと将来的に逮捕・勾留されてしまうリスクを高めることは既に述べたとおりですので注意が必要です。
捜査機関からは、当日の持ち物として、本人確認をするための身分証及び印鑑を持参するよう求められることが多いです。
印鑑は、捜査機関が作成した調書への押印等に用いられます。
なお、捜査機関から特に指定されない限り印鑑は三文判で足りることが多いと思います。
これら身分証や印鑑以外にも、捜査の必要に応じて持参を求められる物もあります。
事情聴取(取調べ)に掛かる時間はまちまちです。
筆者の検事時代の経験に照らしても、1時間で終わることもあれば丸1日掛かることもあります。
このため、捜査機関と日程調整をする際、おおよその見込時間を確認しておくと良いでしょう。
⑵ 当日の流れ等
まず指定された時間に、指定された場所へ行きます。
受付で、何時に誰から呼び出されている旨を伝えたら、事情聴取(取調べ)の部屋に案内されるはずです。
入室後は、最初に本人確認のため身分証の呈示を求められます。
被疑者に対する取調べの場合、続けて言いたくないことは言わなくてよいという権利、すなわち黙秘権がある旨の説明がなされます。
その後、具体的な刑事事件について話を聞かれます。
捜査機関が、対象者からどのような話(目撃状況、被害状況その他)を聞き出したいのかによって、具体的に聞かれる内容は異なります。
また、被疑者に対する取調べでは、上記に加え、身上や経歴に関する話も聞かれます。
上記のとおり、事情聴取(取調べ)に要する時間はまちまちです。
一般に、担当する警察官・検察官がこまめに休憩を設けてくれると思いますが、そうでない場合自ら休憩を申し入れてもかまいません。
事情聴取(取調べ)の途中で気分が悪くなったりトイレに行きたくなったりした場合には、担当者に対し、その旨を申し入れると良いと思います。
事情聴取(取調べ)を受けていると、嘘をつきたいと思う場面が生じるかもしれません。
しかし、捜査機関は、事前に防犯カメラの映像、凶器、被害品等の客観的な証拠や事件関係者の供述を収集しているはずです。
実際に事情聴取(取調べ)を担当する警察官・検察官は、それら証拠の内容を精査し、頭に入れた上で話を聞いてきます。
このため、上記客観的な証拠や事件関係者の供述と矛盾する嘘をついてしまうと、容易に見破られるリスクがあります。
捜査機関は、特に被疑者である可能性が高いと思われる重要参考人や被疑者に対しては、罪を犯しているのではないかとの疑いを持って事情聴取(取調べ)をすることがほとんどだと思います。
このような場合に、捜査機関に対して嘘をついてしまうと、その点だけに限らず、自分が真実を話していることについても嘘ではないかと疑われ、不必要に厳しい追及を受ける可能性が高くなります。
このため、捜査機関に対しては嘘をつかず、正直に話をすることが望ましいと考えます。
一方で、自分が真実だと思って正直に話しをしても、担当の警察官・検察官から嘘ではないかと追及されることがあり得ます。
この場合は、自分が真実だと思う内容を捻じ曲げないようにすべきです。
そうでないと、自分が犯してもいない罪で刑事処分を受けるリスクが生じてしまいます。
しかし、事情聴取(取調べ)を担当する警察官・検察官は百戦錬磨なので、刑事事件の知見を持たない方が、事前準備もなんらすることもなく対応することは容易なことではありません。
このため、刑事事件の知見・経験が豊富な元検事の弁護士に事前に相談し、対応することが有益です。
最近では、事情聴取(取調べ)を携帯電話等で録音しても良いかとのご質問を受けることがあります。
このような録音を禁じる規定は法律上ないと思いますが、実務上、警察・検察ともにこのような録音を認めていません。
このため、事情聴取(取調べ)の際に録音していることが見つかれば、直ちに停止するよう求められる可能性が高いでしょう。
被害者が検察庁で事情聴取を受けた場合、希望すれば起訴・不起訴と言った刑事事件の処分結果や刑事裁判になった場合の裁判日程、裁判の結果等について、検察官等から通知を受けることができます。
目撃者等が検察庁で事情聴取を受けた場合でも、希望すれば上記刑事事件の処分結果等につき通知を受けられる場合があります。
一方で、被疑者については、取調べで作成された調書等を元に、検察庁において当該刑事事件の処分を判断することになります。
これにより、公の裁判所において刑事裁判を受けることになる、略式といって書面のみの審査で罰金刑を受けることになる、あるいは不起訴処分になるなど、自己に対する処分が決まります。
なお、被疑者が、検察に対し、自己に対する処分を確認することもできます。
①出頭拒否はできる限りしない
上記「2 事情聴取を拒否することはできる?」でも記載したとおり、被疑者になりうる重要参考人や被疑者が正当な理由なく何度も事情聴取(取調べ)を拒否すると、逮捕・勾留されてしまうリスクがあります。このため、出頭拒否はできる限りしない方が望ましいと考えます。
②黙秘権等
被疑者として取調べを受ける場合、上記のとおり黙秘権があります。このため、言いたくないことを無理に話す必要はありません。
③調書の作成
事情聴取(取調べ)を行った警察官・検察官が、対象者の話をまとめた書面を(供述)調書と言います。
調書は、検察官が被疑者の刑事処分を決める際の証拠になる重要な書類です。
このため、取調べにおいては、警察官・検察官から聞かれた質問の内容をよく理解して回答する必要があります。
質問の内容がよく分からない場合、そのまま回答するのではなく、質問の趣旨を確認しましょう。
調書が作成されたら、内容をよく確認し、自分が話した内容がきちんと記載されているか否か確認しましょう。
仮に自分の話した内容と違うと思う記載があれば、警察官・検察官に訂正を求めることも可能です。
仮に訂正に応じてもらえない場合等には、署名・押印を拒否することもできますので、内容に納得がいかない調書を作成しないようにした方が良いと考えます。
なお、調書作成時の注意点についてはこちらの記事をご覧ください。
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年8月31日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
所属弁護士全員が刑事事件について熟知しており、独自のノウハウにより、「罪を犯してしまったが示談等して事件をなるべく穏便に解決させて再出発したい」「罪を犯していないので冤罪を受けないようにしたい」といった方々の弁護をしています。
性犯罪も多数取り扱っており、たくさんの事件を不起訴や執行猶予に導いています。
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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