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日本でも電動キックボードが普及するようになってきて,電動キックボードに乗っている時の交通事故についてニュースになることも出てきました。
電動キックボードで事故を起こしてしまった人は,自分がこれからどうなるのかとても気になると思います。
また,これから電動キックボードに乗ろうと考えている人やすでに電動キックボードに乗っている人は,事故を起こしたらどうなるのか気になると思います。
この記事では
◆電動キックボードは法律上どのような扱いになるのか
◆電動キックボードに乗っている時に事故を起こすとどうなるのか
◆電動キックボードに乗っている時に事故を起こしてしまったらどうすればいいのか
◆今後の法規制の動き
などを解説します。
電動キックボードは,現在,日本の法律において原動機付自転車として扱われます(※)。
そのため,電動キックボードに乗るためには原動機付自転車に乗ることができる運転免許を持っていなければいけません。
また, 原動機付自転車という扱いであるため,「ヘルメットをかぶる」,「車道を走る」などの運転上の規制を受けますし,電動キックボード本体について, 法律の定めた規格に合致するブレーキ・ ライト・バックミラーなどを備えていなければいけないという規制を受けます。
現在日本国内で走行している電動キックボードの中にはこのような規制を守っていないものもありますが,これらは違法であるということになります。
違法でも見逃されているというのではなく,発見されれば検挙されることになります。
※ キックボードに取り付けられたモーターの定格出力が0.60キロワット以下の場合,原動機付自転車に該当します。
この記事で「電動キックボード」と記載するときには,特に記載のない限り,原動機付自転車に該当する電動キックボードのことを言います。
定格出力0.60キロワットを超える場合,その数値に応じたそれぞれの車両区分に該当します。
また,LUUPというキックボードについては, 産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」に認定され,電動キックボードの適切なルールを整備するために関係省庁が行っている実証実験に参加しており,LUUPの電動キックボードが実証エリアを走行する場合においては,2022年8月現在は「小型特殊自動車」のルールが適用されています。
2で述べたように,電動キックボードは原動機付自転車に該当します。
原動機付自転車は運転免許を持っていなければ運転できません。
そのため,原動機付自転車を運転することのできる運転免許を持っていないのに電動キックボードに乗ると,無免許運転をしたということになります。
<無免許運転の法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です>
無免許運転で捕まった場合,初犯であれば,しっかりとした弁護活動を尽くせば罰金にできる可能性があります。
結論から言いますと,電動キックボードに乗っている時に運転上必要な注意を怠って事故を起こして人を怪我させてしまったり死なせてしまうと,自動車運転過失致死傷罪になります。
自動車運転過失致死傷罪は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転死傷処罰法」と言います。)」という法律に規定されています。
自動車運転死傷処罰法においては,原動機付自転車は自動車と同じように扱われています。
そして,2で述べたように,電動キックボードは原動機付自転車に該当します。
そのため, 電動キックボードに乗っている時に運転上必要な注意を怠って事故を起こして人を怪我させてしまったり死なせてしまうと,自動車運転過失致死傷罪になります。
<自動車運転過失致死傷罪の法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です>
罪の重さは,事故被害者のケガの程度や電動キックボードに乗っていた人の過失の程度によって変わります。
ケガが重かったり被害者が亡くなってしまうと罪が重くなり,事案によっては初犯でも懲役若しくは禁錮になることがありますので,とても注意が必要です。
過失が重かったり,被害者のケガが重かったり死なせてしまったりしていると,逮捕されることもあり得ます。
電動キックボードに乗っている人が軽い気持ちで赤信号無視や一歩通行逆走をしてしまう可能性があります。
ですが,2で述べたように,電動キックボードは原動機付自転車に該当しますので,赤信号無視や一方通行逆走は交通違反になります。
そして,電動キックボードに乗った状態での赤信号無視や一方通行逆走の状態で事故を起こせば重大な犯罪になる可能性があります。
ここで言う重大な犯罪とは危険運転致死傷罪のことです。
危険運転致死傷罪の法定刑は「人を負傷させた者は十五年以下の懲役」「人を死亡させた者は一年以上の有期懲役」というとても重いものです。
罰金刑はなく,起訴されて有罪判決となれば懲役刑になってしまいます。
危険運転致死傷罪を規定している自動車運転死傷処罰法では,赤信号無視や一方通行逆走の状態において,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転して人を負傷させた場合,危険運転致死傷罪が成立するとされています(※)。
ここに言う「重大な交通の危険を生じさせる速度」というのは,状況によっては時速20 km 程度でも「重大な交通の危険を生じさせる速度」に該当すると考えられています。
そのため,赤信号無視や一方通行逆走の状態で電動キックボードに乗って交通事故を起こしてしまうと,危険運転致死傷罪と言うとても重い罪が成立する可能性があるのです。
危険運転致死傷罪を犯してしまうと逮捕される可能性が相当程度あります。
※厳密には自動車運転死傷処罰法に以下のように規定されています。
第二条 次に掲げる行為を行い,よって,人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し,人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
(中略)
七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって,これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
赤信号無視や一方通行逆走の状態で電動キックボードに乗って交通事故を起こした人が原動機付自転車を運転する免許を持っていなかった場合,刑罰がさらに重くなります。
この場合,無免許運転のために危険運転致傷罪の法定刑が加重され, 六月以上の有期懲役となります。
六月以上の有期懲役というのは,6月以上20年以下の懲役という意味で,とても重い刑罰です。
この場合も,逮捕される可能性が相当程度あります。
電動キックボードに乗っているときに事故を起こしてしまったら,どうすればいいのでしょうか。
まずは,怪我人がいるのかどうかを確認し,怪我を負っている可能性がある人を見つけたら救護をし,必要に応じ救急車を呼ぶなどの対処をする必要性があります(この義務を救護義務と言います。)。
また,事故後すぐに110番通報し,警察に事故の報告をする必要があります(この義務を報告義務と言います。)。
救護義務や報告義務を果たさずにその場を離れてしまうと,いわゆる「ひき逃げ」「当て逃げ」などになってしまいます 。
救護義務や報告義務といった至急の義務を果たした後は,事故の被害者に対して改めて謝罪と被害弁償をする必要があります。
この時に保険会社任せにしていたり,被害者側から「こちらから連絡するから連絡しないで欲しい」と言われたので長期間にわたって何も連絡せずにいると,「誠意ある対応をされていない」と感じた被害者側の感情が悪化してしまうことがありますので注意が必要です。
特に,保険会社は時に被害弁償額を少なくしたいと考えて被害者側にあまり良くない条件の提示をしたりすることもあります。
そうすると, 初めは加害者側に悪い感情を持っていなかった被害者も, 保険会社の対応が悪いことで加害者自身の対応も誠意がないように感じられてしまうことがあります。
ですので,事故の加害者はあくまで自分主導で被害者に対して誠意を示すよう心がけるべきです。
自分自身でどうやっていいのかわからないようであれば,加害者側や刑事事件を専門的に取り扱っている弁護士に相談することも有益です(※)。
※交通事件を取り扱っている弁護士の中には被害者側を専門的に取り扱ってる弁護士もいますので,どちら側を専門的に取り扱っているのかを確認することが有益です。
2022年4月に道路交通法改正がなされ,改正後の要件を満たした電動キックボード(以下では改正後の要件を満たした電動キックボードを改正後キックボードと呼びます。)を「特定小型原動機付自転車」とすることになりました。
なお,これらの改正法がいつ施行されるのかは決まっておらず,現在は5までで述べてきたような原動機付自転車としての規制が適用されますので注意が必要です。
改正後キックボードに乗るには免許は要らず, 16歳以上であれば誰でも乗ることができます。
また,ヘルメットは義務ではなくなります。
上原総合法律事務所では,電動キックボードに乗って違反をしてしまった方からのご相談を頂いています。
電動キックボードは社会に普及してまだ日が浅く,捜査機関の運用が固まりきっていない部分があります。
このような領域においては,過去の類似事例の集積等を参考にして捜査機関の対応を予測するとともに,処分が最小限になるような活動をしていく必要があります。
上原総合法律事務所は,元検察官の弁護士を中心とする刑事事件にとても詳しい弁護士集団です。
電動キックボードをめぐるトラブルでお困りの方はお気軽にご相談下さい。
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