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わいせつ動画をインターネット上で外国のサイトを通して販売した事案の報道について元検察官の弁護士集団が解説します

1 報道の概要

2021年11月、産業技術総合研究所の男性研究員がわいせつな行為を撮影した動画を海外サイトを通じ販売したとして、わいせつ電磁的記録等送信頒布の疑いで逮捕された、という報道がありました。この男性が東大卒のエリート研究員であること、わいせつ動画で1億円以上を売り上げていたことなどから、大きく報道されました。

報道によると、逮捕された男性は、自分で撮影・編集等したオリジナルの動画を「FC2コンテンツマーケット」というサイトを使用して販売していたとのことです。

この報道を見て、一般の方が、

「どういう場合に罪になるのか」

「海外のサイトなら良いのかと思っていた」などの感想を持ったり、

逮捕されていた人と同じことをしていた人が、

「自分は逮捕されてしまうのか、どうすべきなのか」といった疑問を持つかと思います。

そこで、以下、解説していきます。

2 どういう場合にわいせつ電磁的記録等送信頒布罪になるのか

わいせつ電磁的記録等送信頒布罪は刑法第175条第1項後段に規定されています。

刑法第175条第1項後段は

  「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者」を

  二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する

としています(懲役と罰金が両方課されることもあります)。

  刑法第175条第1項
  わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、
  又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、
  又は懲役及び罰金を併科する。
  電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする

ここにいう「頒布」の意味については、最高裁判所が「不特定又は多数の者の記録媒体上電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることをいう」と判断しています(平成26年11月25日最高裁判所第3小法廷決定)。

この「不特定又は多数の者の記録媒体上」というのは、例えば、「不特定又は多数の者のパソコン上」です。

そして、「電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめること」というのは、例えば「わいせつな画像や動画をダウンロードさせること」です。

つまり、わいせつな画像や動画をインターネット等で不特定又は多数の人に販売してダウンロードさせた場合、売り手に「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」が成立します

3 外国にあるサーバーにデータをアップロードした場合でも犯罪になるのか

「データをアップロードしたサーバーが外国にあればわいせつ電磁的記録等送信頒布罪にならないのか」という疑問は、刑法第1条に関係があります。
結論としては、サーバーが外国にあってもわいせつ電磁的記録等送信頒布罪になり得ます。

刑法第1条は「この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。」と規定しています(このように犯人の国籍を問わず日本国内で犯されたに刑法を適用するという考えを「属地主義」と言います)。

ここにいう「日本国内において」とは、行為や結果などの犯罪の一部が日本国内において行われた場合も含まれます。
わいせつ電磁的記録等送信頒布罪についていえば、「わいせつな画像や動画をダウンロードした」という「犯罪の結果」が日本国内で生じているため、外国にあるサーバーにデータをアップロードした場合でも、刑法第1条により日本法の処罰の対象になります。

なお、「サーバーが外国にあれば犯罪にならないのではないか」という考えは、刑法第175条第1項が改正される前の議論に基づいています。

平成23年に刑法が改正されるまで、刑法第175条第1項には「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。」という規定がありませんでした。
そのため、わいせつ画像をネットのサーバーにアップロードすることは、わいせつなデータを記録したサーバーという「わいせつ物」を「公然と陳列した」として「わいせつ物公然陳列罪」で規制されていました。

この理屈からすると、日本国外において、日本国外にあるサーバーにわいせつ画像をアップロードしても、犯罪が全て日本国外で行われているため、規制の対象となりませんでした。
また、この種事案は多量にあるため、捜査機関は数ある事件の中から「確実に有罪にできる」という案件を狙って立件することが多く、「確実に日本国内からアップロードした」と言えるような証拠がない限り、日本国内から日本国外にあるサーバーにわいせつ画像をアップしていたとしても、実質的に立件が困難でした。
ですが、現在は、前記のように「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した」場合にはわいせつ電磁的記録等送信頒布罪で処罰されるため、サーバーが国外にあるから処罰されない、という議論は通用しません

4 わいせつな行為を撮影した動画を海外サイトを通じ販売していた場合、逮捕されてしまうのか

2021年11月の事案だけでなく、昨今、インターネット上のわいせつ画像についての取締りが強化されています。

インターネット上のわいせつ画像については、わいせつ性だけでなく、児童ポルノやいわゆるAV出演強要など、さまざまな視点から社会問題化しており、今後規制が強化することはあっても緩むとは考え難いです。
そして、実際に逮捕報道がなされているように、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪は、捜査の対象となれば逮捕される可能性が高いです。
さらに、インターネット上にある客観的な証拠を収集できている場合、捜査機関が捜査を急ぐ理由は少なく、時効が成立するまで、いつ逮捕されてもおかしくない犯罪です。

5 わいせつな行為を撮影した動画を海外サイトを通じ販売していた場合、逮捕されないためにどうすれば良いのか

この手のインターネット犯罪に関するご相談においては、よく、「証拠となるパソコンなどを破壊したほうが良いのか。」などの質問がされます。

ですが、証拠を破壊することはお勧めできません。

そもそも上原総合法律事務所の弁護士が証拠隠滅を勧めることはありませんが、ここで説明したいのはそういう問題ではありません。

逮捕を避けたいと思ってわいせつ電磁的記録等送信頒布罪において証拠を破壊すると、逆に不利に働く可能性があります。
というのは、インターネット上で行われた犯罪においては、捜査機関は、サーバーや通信会社から情報を入手し、被疑者に知られずに水面下で証拠を収集することができます。
そのため、捜査機関が水面下に入手した情報で十分に逮捕することができるのであれば、パソコンなどの証拠を破壊したとしても、逮捕を避けられることにはなりません。
逆に、捜査機関があらかじめ収集した証拠で逮捕された後に「パソコンなどを壊して証拠隠滅をしていた」と発覚することで、釈放されにくくなったり、情状が悪化したりする可能性があります。

では、どうすれば良いのでしょうか。

弁護士上原幹男は、わいせつ画像をインターネット上で販売してわいせつ電磁的記録等送信頒布罪を犯した可能性がある場合、上申書を記載した上で、手元に存在する証拠を持って、警察に自首することが有益であると考えます。

自首とは何か、についてはこちらをご覧ください

自首することで、まず、身柄拘束の可能性が下がります。

しっかりと存在する証拠を揃え、上申書を記載して自首することで、反省していることを示すとともに、証拠隠滅したり逃亡したりしないことを捜査機関に理解してもらいます。
証拠隠滅したり逃亡したりする恐れがある場合に身柄拘束されるので、証拠隠滅したり逃亡したりしないと理解してもらえれば、身柄拘束されなくなります。
また、逮捕や勾留といった身柄拘束は捜査機関が裁判所から令状を得てなされますが、自首することで、捜査機関が身柄拘束する必要があると考えても、裁判所が身柄拘束の必要がないと考えてくれる可能性があります。

裁判所が身柄拘束の必要がないと考えて令状を発布しなければ、身柄拘束は避けられます。
また、自首することで、情状が良くなります。

反省して自首していれば、裁判所は、そのことを量刑(刑の重さを決めること)において考慮してくれます。
そのため、自首することは、自首しないよりも有利な判決が下されることが期待できます。

さらに、自首する場合、あらかじめなぜ犯行に及んだのかなどの詳細をわかりやすく記載した上申書を準備できるため、そのような有利な情状も捜査機関に理解してもらうこともできます。

6 お悩みの方はご相談ください

上原総合法律事務所は、犯罪を犯してしまった場合、やってしまった過去は変えられないため、犯行後には、「いかに誠実に対応するか」が大切であると考えています。

上原総合法律事務所は、元検察官の弁護士集団が、元検察官としての視点を活かして、「犯行後に誠実に行動することで、より早く事件から立ち直る」ことのサポートに力を入れています。

犯罪を犯してしまったけれども後悔していて立ち直りたい方、自分のしたことが犯罪かもしれないと思ってお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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